SCC (Social Cost of Carbon)

### 概要 炭素の社会的費用（Social Cost of Carbon, SCC）とは、人間活動によって二酸化炭素（CO2）が1トン追加的に大気中に排出された場合に、それが引き起こす将来の気候変動によって、社会全体が被ると予測される様々な損害（マイナスの外部性）の増分を、経済的な価値（貨幣価値）で評価し、現在価値に割り引いた合計額のことです。 ### 算定方法と考え方 SCCの算定は複雑であり、統合評価モデル（IAM）などを用いて推定します。 1. CO2排出シナリオを設定。 2. 気候モデルで気温上昇等を予測。 3. 損害関数で気候変動がもたらす経済的損害（農業、健康、災害など）を評価。 4. 割引率を用いて将来損害を現在価値に換算。 算出に用いるモデルや仮定、特に割引率の設定によって推定値は大きく異なります。 ### 利用目的 - **気候変動政策の費用便益分析:** 環境規制や温暖化対策プロジェクトのコストと、回避される将来損害（＝SCC × 削減量）という便益とを比較衡量し、政策の妥当性を評価します。 - **カーボンプライシングの根拠:** 炭素税や排出量取引制度における炭素価格設定の理論的根拠の一つとして参照されます。 ### 課題 - **不確実性:** 将来の気候変動予測や経済影響評価には大きな不確実性が伴います。 - **割引率の選択:** 将来世代の損害をどう評価するか（割引率設定）は倫理的な問題も含みます。 - **地域差・影響の偏り:** 気候変動の影響は地域や社会層によって異なりますが、SCCは多くの場合グローバルな平均値です。 SCCは、気候変動対策の経済的な必要性や効果を定量的に議論するための概念ですが、算定上の不確実性や限界も認識しておく必要があります。