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米国財務省外国資産管理室。経済制裁の実施と執行を担当する米国政府機関。
OFAC(Office of Foreign Assets Control、米国財務省外国資産管理局)は、米国の外交政策と安全保障目標に基づき、経済制裁と貿易制限を管理- 執行する米国財務省の機関です。コモディティ取引において、制裁対象国- 個人- 団体との取引を防止することは、コンプライアンスの最重要事項の一つであり、違反した場合は巨額の制裁金と刑事訴追のリスクがあります。
OFACは1950年の朝鮮戦争時に設立され、現在では30以上の制裁プログラムを運営しています。国際緊急経済権限法(IEEPA)、対敵通商法(TWEA)、各種制裁法に基づき、包括的制裁(国別)とリスト型制裁(個人- 団体別)を実施します。
米国の管轄権は広範で、以下の場合に適用されます:
包括的制裁国
イラン、北朝鮮、シリア、キューバ、ウクライナのクリミア地域などに対し、原則として全面的な取引禁止が課されています。ただし、人道的取引や特定のライセンスによる例外があります。
セクター別制裁
ロシアのエネルギー、金融、防衛セクターに対する制裁など、特定産業を対象とした制限があります。例えば、ロシアの深海- 北極海- シェール油開発への技術提供が禁止されています。
SDNリスト(Specially Designated Nationals List)
テロリスト、麻薬密売組織、人権侵害者など、約6,000の個人- 団体が指定されています。これらとの取引は全面的に禁止され、資産凍結の対象となります。
原油- 天然ガス取引
イラン、ベネズエラ、ロシア産の原油- ガス取引には厳格な制限があります。二次制裁により、非米国企業も制裁対象となる可能性があります。2022年のロシア産原油の価格上限(プライスキャップ)制度は、G7と協調した新たな制裁手法です。
農産物取引
食料- 医薬品は人道的観点から一般的に制裁対象外ですが、決済や輸送に制約があります。支払い経路、最終用途の確認が必要で、軍事転用可能な物資は厳格に管理されます。
金属- 鉱物取引
コンフリクト- ミネラル、ロシアのアルミニウム- ニッケル、ミャンマーの宝石類など、特定の原産地や企業からの調達が制限されています。サプライチェーンの透明性確保が不可欠です。
リスク評価
取引相手、取引地域、商品、決済方法などのリスク要因を評価し、高リスク取引を特定します。国別リスク、顧客リスク、商品リスク、取引リスクのマトリックスを作成します。
スクリーニング
取引相手、船舶、最終需要家などを制裁リストと照合します。ファジーマッチング(曖昧検索)により、スペルの違いや別名も検出します。リアルタイム- スクリーニングと定期的な再スクリーニングを実施します。
デューデリジェンス
Know Your Customer(KYC)、実質的支配者(UBO)の特定、取引の経済合理性の確認を行います。高リスク取引では、強化デューデリジェンス(EDD)を実施します。
内部統制
承認権限、文書化、研修、監査などの内部統制を整備します。OFAC は、効果的なコンプライアンス- プログラムの5つの要素(管理職のコミットメント、リスク評価、内部統制、テストと監査、研修)を示しています。
巨額制裁金の事例
コモディティ関連の違反
原油の原産地偽装、制裁対象船舶の使用、イラン産石油化学製品の取引、ベネズエラ産金の取引などで、多くの企業が制裁を受けています。
取引スクリーニング
専門のスクリーニング- ソフトウェア(Dow Jones、Refinitiv、KYCGlobal等)を導入し、自動化と効率化を図ります。誤検知(false positive)の管理も重要です。
契約条項
制裁条項(sanctions clause)を契約に含め、制裁対象となった場合の契約解除権を確保します。表明保証、補償条項も重要です。
決済ルートの確認
コルレス銀行、SWIFT メッセージ、信用状の条件を精査し、米国金融システムの関与を把握します。必要に応じて、非米ドル決済や代替決済ルートを検討します。
制裁の複雑化
スマート制裁、セクター制裁、二次制裁など、制裁手法が多様化- 複雑化しています。人権制裁(グローバル- マグニツキー法)の適用も拡大しています。
技術的回避への対応
暗号資産、デジタル人民元、代替決済システムなどによる制裁回避に対し、規制強化が進んでいます。
国際協調と分断
G7での制裁協調が強化される一方、中国、インドなど非同盟国との取引をどう扱うかが課題となっています。
OFAC コンプライアンスは、コモディティ取引における必須要件です。適切な管理体制により、制裁リスクを回避し、国際取引の健全性を維持することが、企業の持続的成長に不可欠となっています。
多国間制裁
多国間制裁は、複数の国が協調して特定の国、組織、個人に対して実施する制裁措置です。国際社会の価値観と規範を守り、国際的な平和と安全を確保することを目的とします。商品取引では、国際貿易におけるコンプライアンスとリスク管理において重要な規制です。
資産凍結
資産凍結は、法的権限を持つ機関が特定の個人や企業の資産の移動や処分を禁止する行政処分です。制裁措置や犯罪捜査の一環として実施され、対象者の経済活動を制限します。商品取引では、国際的な制裁リスクやコンプライアンス管理において重要な概念です。
EU制裁
EU制裁は、欧州連合が特定の国、組織、個人に対して実施する経済的・政治的制裁措置です。人権侵害、テロ活動、核開発などの問題に対応し、国際的な平和と安全の確保を目的とします。商品取引では、国際貿易におけるコンプライアンスとリスク管理において重要な規制です。
セクション232関税
米国が安全保障上の理由で課す関税。鉄鋼・アルミニウム製品など特定商品に適用され、国内産業の保護と安全保障の確保を目的とする。国際貿易に大きな影響を与える。
セクション301関税
米国が不公正貿易慣行に対して課す関税。知的財産権侵害や技術移転の強要などに対抗し、貿易相手国の行動変更を促す。米中貿易摩擦の主要な要因となった。
貿易禁輸
貿易禁輸は、特定国との貿易を全面的に禁止する経済制裁措置で、政治的・安全保障上の目的で実施されます。商品取引では対象国との取引停止、代替調達先確保、リスク管理体制の強化が必要となる重大な規制です。