Cable Negotiation
ケーブルネゴ
取引実務
信用状(L/C)付き荷為替手形取引において、輸出者が提示した書類に不備があった場合に、買取銀行が自行の判断で買い取らず、信用状発行銀行に電信で照会し、その指示に基づいて買取または取立を行うことです。
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### 概要
ケーブルネゴ(Cable Negotiation)とは、信用状(L/C)に基づく荷為替手形の買取実務において、輸出者から提示された船積書類に不備、すなわち信用状条件との不一致(英語ではDiscrepancy、ディスクレとも呼ばれます)が見つかった場合に、買取銀行(Negotiating Bank)が、自身の判断でリスクを取って書類を買い取るのではなく、信用状の発行銀行(Issuing Bank)に対して電信(Cable)で「ディスクレがあるが買い取って(支払って)良いか」と照会する手続きのことです。「電信照会ネゴ」とも呼ばれます。
ここでいう「ケーブル(Cable)」とは「電信」を意味しますが、これは歴史的な呼称に由来します。19世紀から20世紀にかけて、国際間の迅速な通信手段は海底に敷設された電信ケーブル(Submarine Cable)を用いた電報(テレグラム)が主流でした。その名残で、今日のSWIFTメッセージなど電子的な通信手段が中心となった現在でも、銀行や貿易の実務では電信による照会などを慣習的に「ケーブル」と呼ぶことがあります。
発行銀行から支払う旨の確約(承諾)や指示を得られれば、買取銀行はディスクレが存在することを前提としつつも、信用状に基づく資金化を進めることが可能になります。
### 発生する状況
輸出者が信用状(L/C)の条件に完全に一致する書類を揃えて買取銀行に提示したつもりでも、銀行は信用状統一規則(UCP)に基づく厳密一致の原則で書類を審査するため、タイプミスや記載漏れ、内容の些細な不一致などがディスクレとして指摘されることがあります。ディスクレが存在すると、発行銀行は信用状に基づく支払いを拒否する権利を持つため、輸出者から書類を買い取る銀行にとっては代金回収ができないリスクが生じます。
### 手続きと選択肢
買取銀行がディスクレを発見した場合、ケーブルネゴは取り得る対応策の一つであり、通常、輸出者と協議の上で以下のような選択肢の中から対応が決定されます。
1. **ケーブルネゴ(電信照会):** 発行銀行へ電信(通常はSWIFT MT799等のメッセージ)でディスクレの内容を通知し、この書類を受け付けて支払いを行う意思があるかを確認します。発行銀行が支払いを確約すれば、買取銀行はリスクなく買い取りを実行できます。
2. **L/Gネゴ(保証状買取):** 輸出者が、ディスクレが原因で将来発行銀行から支払い拒否を受けた場合に買取銀行への返金を保証する旨の保証状(Letter of Guarantee, L/G)を差し入れることを条件に、買取銀行が支払拒否リスクを自身で負担して買い取ります。
3. **取立扱い (Bill for Collection, B/C):** 買取(資金化)を行わず、ディスクレのある船積書類を信用状発行銀行へ送付し、発行銀行から代金が回収できるのを待つ方法です。輸出者の資金化は遅れます。
4. **アメンドメント(信用状条件変更)依頼:** 輸出者が輸入者に連絡を取り、ディスクレの内容に合わせて信用状の条件を変更(アメンドメント)してもらうよう依頼し、修正された信用状に基づいて再度手続きを行います。
### 特徴
- **リスク回避(買取銀行):** 買取銀行は、発行銀行の支払確約を得ることで、ディスクレに起因する支払拒否リスクを回避できます。
- **時間とコスト:** 発行銀行との電信でのやり取り(SWIFT通信料など)や回答待ちに時間がかかり、銀行手数料などの追加コストが発生します。その間、輸出者の資金化は遅れる可能性があります。
- **発行銀行の判断:** 最終的に支払いを行うかどうかは発行銀行の判断(多くの場合、発行依頼人である輸入者の意向が強く反映される)に委ねられます。
### まとめ(ケーブルネゴの位置づけ)
ケーブルネゴは、船積書類に不備(ディスクレ)が発生した場合でも、直ちに買取不能とするのではなく、発行銀行の最終的な支払い意思を確認することで、買取銀行のリスクを管理しつつ、可能な限り信用状取引の枠組みの中で決済を前に進めるための、実務的で重要な選択肢の一つです。
同義語・略語
電信照会ネゴ
関連用語
Letter of Credit
信用状
銀行が発行する、条件付きの支払い保証書です。輸出者が信用状に定められた条件(船積書類の提示など)を満たせば、銀行が輸入者に代わって代金の支払いを保証する仕組みで、貿易決済に広く利用されます。
参考文献
参考文献はありません