Cash-and-Carry Arbitrage

### 概要 キャッシュ・アンド・キャリー裁定（Cash-and-Carry Arbitrage）とは、同一資産について、現在の現物（スポット）価格と先物価格との間に、理論価格（現物価格＋キャリーコスト）からの乖離が生じている場合に、その価格差を利用してリスクなく（理論上）利益を得ようとする裁定取引戦略の一つです。具体的には、先物価格が理論価格よりも割高な状況で行われます。「順鞘取り」や「裁定買い」とも呼ばれます。 ### 取引手順 1. **現物購入 (Cash):** 現物市場で対象資産を購入します。 2. **先物売却 (Carry):** 同時に、先物市場で同じ資産の先物を売却します。 3. **現物保有:** 購入した現物を先物満期日まで保有します（保管コスト・金利コスト発生）。 4. **満期決済:** 満期日に保有現物を引き渡す（または決済）ことで、当初の価格差からコストを引いた利益を確定させます。 ### 条件 「先物価格 > 現物価格 + 満期までのキャリーコスト」という関係が成り立っている必要があります。この差額が裁定利益の源泉です。 ### 注意点 - 理論上の無リスクであり、現実には取引コスト、キャリーコスト見積もり誤差、受渡リスクなどが存在します。 - 効率的な市場では、このような裁定機会は発生してもすぐに解消される傾向があります。 キャッシュ・アンド・キャリー裁定は、現物市場と先物市場の価格関係の理論に基づいた基本的な裁定取引の一つです。