Commodity Classification

分類の必要性と歴史

商品取引が活発化した19世紀後半、取引所では似た特性を持つ商品をグループ化する必要が生じました。シカゴ商品取引所では穀物部門、ニューヨーク商業取引所では金属部門というように、商品の性質に応じた専門市場が形成されました。現代では、投資商品の多様化に伴い、より精緻な分類体系が確立されています。

大分類：ハードコモディティとソフトコモディティ

ハードコモディティ
地球から採掘・抽出される天然資源を指します。エネルギー（原油、天然ガス、石炭）と金属（プレシャスメタル・ベースメタル）が主要構成要素です。埋蔵量に限りがある枯渇性資源であり、探査・開発に巨額の設備投資を要します。価格は世界経済の成長率と強い相関を持ち、景気の先行指標として注目されます。

ソフトコモディティ（農産物・畜産物）
農業により栽培・飼育される再生可能な商品群です。ハードコモディティ（鉱物資源）とは対照的に、毎年生産が可能な商品を指します。穀物、油糧種子、砂糖、コーヒー、綿花、畜産物などが含まれます。生産には季節性があり、天候や気候変動の影響を強く受けます。多くは食料や繊維原料として消費され、人口増加と所得向上が長期的な需要増加要因となっています。「ソフト」という名称は、地中から採掘する「ハード」な鉱物資源に対して、地上で栽培する「ソフト」な農産物という意味で使われています。

セクター別詳細分類

エネルギーセクター
世界経済の動力源として最も重要なセクターです。原油は、WTI（米国産軽質油）、ブレント（北海産）、ドバイ（中東産）の3大ベンチマークを中心に価格が形成されます。天然ガスは地域性が強く、米国のヘンリーハブ、欧州のTTF、アジアのJKMがそれぞれ独自の価格体系を持ちます。石炭は発電用と製鉄用に分類され、環境規制の影響を強く受けています。

プレシャスメタル（貴金属）セクター
金、銀、プラチナ、パラジウムの4種が主要なプレシャスメタル（貴金属）です。金は投資資産と宝飾品需要が中心で、中央銀行の外貨準備としても保有されます。銀は工業用途が需要の約半分を占め、太陽光パネルや電子部品に使用されます。プラチナとパラジウムは自動車の排ガス触媒が主用途で、環境規制の強化が需要を左右します。

ベースメタル（卑金属）セクター
銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、鉛、錫の6種がロンドン金属取引所（LME）で取引される主要なベースメタル（卑金属）です。プレシャスメタル（貴金属）とは対照的に、産出量が多く工業用途が中心の金属を指します。銅は電線や配管に、アルミニウムは軽量化が求められる輸送機器に、亜鉛は鉄鋼の防錆メッキに使用されます。中国の需要が世界消費の40〜50%を占め、中国経済の動向が価格を大きく左右します。

基礎農産物セクター
主食や飼料となる基本的な農産物です。穀物では、小麦（パンや麺類の原料）、トウモロコシ（家畜飼料やエタノール燃料の原料）、大豆（食用油や家畜飼料の原料）が世界3大作物です。米は生産量の90%以上がアジアで消費され、国際取引は限定的です。油糧種子では、パーム油（食品や化粧品の原料）、菜種油（食用油やバイオ燃料の原料）が主要品目となっています。これらは生活必需品として需要が安定しており、価格変動は世界の食料安全保障に直結します。

嗜好品・特用農産物セクター
基礎農産物とは対照的に、嗜好品や特殊用途に使用される農産物です。砂糖はサトウキビ（ブラジル、インド）とテンサイ（欧州）から生産されます。コーヒーはアラビカ種（高級品）とロブスタ種（インスタント用）に分類されます。ココアは西アフリカが生産の70%を占め、政治不安が供給リスクとなっています。綿花は天然繊維の代表で、インド、中国、米国が主要生産国です。これらの商品は嗜好性が高く、所得水準の変化により需要が大きく変動する特徴があります。

畜産物セクター
生牛、フィーダー牛（肥育用子牛）、豚肉、鶏肉が主要品目です。飼料コストが生産コストの60〜70%を占めるため、トウモロコシや大豆などの穀物価格と強い連動性があります。食肉消費は所得水準の向上とともに増加する傾向があり、新興国の経済成長が長期的な需要拡大要因となっています。また、疾病の発生や貿易制裁措置などが価格に大きな影響を与える特徴があります。

用途別分類

工業原材料
製造業の基礎素材として、銅（電気・電子機器）、アルミニウム（輸送機器）、原油（化学製品・プラスチック）などが該当します。工業生産指数と高い相関を示し、景気循環の影響を強く受けます。

食料・飼料原料
人間の食料として消費される穀物、砂糖、食用油と、家畜の飼料原料となるトウモロコシや大豆ミールなどが含まれます。人口増加と食生活の変化が長期的な需要トレンドを形成します。

投資資産
金や銀を中心とした貴金属が該当します。実物資産として、インフレーション時の資産価値保全（インフレヘッジ）や経済不安時の安全資産としての役割を果たします。株式や債券とは異なる値動きを示すため、ポートフォリオの分散投資効果も期待されます。中央銀行の金融政策や地政学的リスクが価格に大きな影響を与えます。

取引所別分類

各商品は特定の取引所で中心的に取引され、そこでの価格が国際指標となります。CMEグループ（シカゴ・マーカンタイル取引所、農産物・エネルギー）、ICE（インターコンチネンタル取引所、エネルギー・嗜好品農産物）、LME（ロンドン金属取引所、ベースメタル）、上海先物取引所（中国最大の商品先物取引所、中国国内市場向け）などが主要取引所です。

この分類体系を理解することで、商品間の相関関係、代替関係、競合関係を把握し、より効果的で体系的な投資戦略の構築が可能となります。