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商品の価格に加えて、買い手が指定する最終的な納入場所までの輸送費、保険料、場合によっては関税など、全てのコストを含んだ価格のことです。インコタームズのDDP条件などがこれに近いです。
納入渡し価格(Delivered Price)とは、商品の価格に加えて、買い手が指定する最終的な納入場所までの輸送費、保険料、場合によっては関税など、全てのコストを含んだ価格のことです。売り手が商品を買い手の指定場所まで運び、そこで引き渡すまでの全ての費用と責任を負う価格設定方式です。インコタームズ(国際商業会議所が制定した貿易条件の国際規則)では、DDP(Delivered Duty Paid:関税込み持込渡し)条件がこれに近い概念として位置づけられています。
納入渡し価格の概念は、産業革命以降の大量輸送時代とともに発展しました。19世紀後半、鉄道網の整備により商品の長距離輸送が可能になると、輸送費を含めた総合的な価格設定の必要性が高まりました。当初は売り手と買い手が個別に輸送手段を手配していましたが、効率性の観点から売り手が一括して輸送を担当する方式が普及しました。
20世紀に入ると、自動車輸送や航空輸送の発達により、より複雑な輸送ルートと輸送手段の組み合わせが可能になりました。この結果、輸送専門知識を持つ売り手が輸送全体を管理し、買い手に対して納入渡し価格を提示することが一般的になりました。
第二次世界大戦後の国際貿易拡大とともに、異なる国の法制度や商慣行を調整する必要性が生じました。1936年に初版が制定されたインコタームズは、その後何度も改訂され、納入渡し価格に関する国際的な標準が確立されました。
商品本体価格は納入渡し価格の基礎となる部分で、工場出荷価格や港渡し価格などが基準となります。品質、仕様、数量に応じて決定される基本価格です。
輸送費は納入渡し価格の重要な構成要素です。陸上輸送(トラック、鉄道)、海上輸送(船舶)、航空輸送の費用が含まれます。輸送距離、輸送手段、貨物の性質(危険物、冷凍品など)により大きく変動します。複数の輸送手段を組み合わせる複合輸送の場合、各区間の輸送費を合計します。
保険料は輸送中の貨物損害に備えるものです。貨物の価値、輸送リスク、保険範囲により保険料が決定されます。海上輸送では海上保険、陸上輸送では陸上保険が適用されます。
通関費用には、輸出通関、輸入通関に関わる手数料が含まれます。通関業者への手数料、検査費用、証明書発行費用などが該当します。
関税・税金は、輸入国で課される関税、消費税、その他の税金です。DDPの場合、これらの税金も売り手が負担し、納入渡し価格に含まれます。
納入渡し価格は、インコタームズの複数の条件と関連があります。**DDP(Delivered Duty Paid)**は最も包括的な納入渡し価格で、関税を含む全ての費用を売り手が負担します。買い手にとって最もリスクが少ない条件です。
**DAP(Delivered at Place)**は関税を除く全ての費用を売り手が負担する条件です。輸入通関と関税の支払いは買い手の責任となります。
**DPU(Delivered at Place Unloaded)**は指定場所での荷降ろしまでを売り手が担当する条件です。2020年版インコタームズで新設された条件で、従来のDAT(Delivered at Terminal)を発展させたものです。
納入渡し価格の設定には、多様な要素を考慮する必要があります。輸送距離と輸送手段により費用が大きく変動します。近距離ではトラック輸送が効率的ですが、長距離では鉄道や船舶輸送の方が単位当たりコストが安くなります。
貨物の性質も重要な要素です。危険物、冷凍品、精密機器などは特別な輸送設備や取り扱いが必要で、輸送費が高くなります。また、重量物や大型貨物は特殊車両や特別な積み込み設備が必要です。
輸送時期により費用が変動します。繁忙期には輸送費が上昇し、閑散期には下降します。また、天候条件や交通事情により輸送時間と費用が影響を受けます。
為替レートは国際取引において重要な要素です。輸送費や保険料が現地通貨で発生する場合、為替変動により納入渡し価格が変動します。
売り手にとって納入渡し価格方式のメリットは、価格競争力の向上です。輸送効率の改善や輸送業者との交渉により、競合他社より安い納入渡し価格を提示できれば、受注機会が拡大します。
顧客サービスの向上も重要なメリットです。買い手は輸送手配の手間が省け、一つの価格で全てが解決するため、取引の簡素化が図れます。
一方で、売り手は輸送リスクを負うことになります。輸送中の事故、遅延、紛失などのリスクを管理する必要があります。また、為替リスクや輸送費変動リスクも負担することになります。
買い手にとってのメリットは、総コストの明確化です。商品価格と輸送費を別々に管理する必要がなく、予算管理が簡素化されます。
輸送手配の省力化により、買い手は輸送業者の選定や輸送条件の交渉から解放されます。特に国際取引では、複雑な輸送手続きを売り手に委ねることができます。
ただし、価格比較の困難性という注意点があります。商品本体価格と輸送費が一体化されているため、他社との価格比較が困難になる場合があります。
納入渡し価格契約では、納入場所の明確化が重要です。住所だけでなく、具体的な引き渡し場所(工場内の指定場所、倉庫の搬入口など)を明記する必要があります。
納入時間の指定も重要な要素です。営業時間内の納入、事前連絡の義務、荷受け担当者の指定などを契約に明記します。
検収条件では、納入された商品の検査方法、合格基準、不合格時の処理方法を定めます。輸送中の損傷や品質劣化に対する責任分担も明確にしておく必要があります。
近年、納入渡し価格を取り巻く環境は大きく変化しています。環境規制の強化により、低排出ガス車両の使用や環境負荷の少ない輸送手段の選択が求められています。これらの要求は輸送費の上昇要因となり、納入渡し価格に影響を与えています。
労働力不足により輸送業界では人手不足が深刻化しており、輸送費の上昇圧力となっています。自動運転技術やドローン配送などの新技術の導入により、この課題の解決が期待されています。
デジタル化の進展により、輸送の可視化やリアルタイム追跡が可能になっています。これにより、輸送効率の改善と顧客サービスの向上が図られています。
納入渡し価格は、商品取引における重要な価格設定方式として、市場環境の変化に対応しながら発展を続けています。
固定価格
契約期間中、価格が一定に固定される価格設定方法。価格変動リスクを回避でき、予算計画が立てやすい利点があります。インフレ期には買い手有利、デフレ期には売り手有利となるため、市場見通しに基づく交渉が重要です。
変動価格
市場価格やインデックスに連動して変動する価格設定方法。原油のスポット価格、LME金属価格などを基準に、定期的に価格が改定されます。市場実勢を反映できる反面、価格変動リスクを負うことになります。
フォーミュラ価格
事前に合意した計算式により価格を決定する方法。基準価格にプレミアムやディスカウント、輸送費、品質調整などを加味します。長期契約で多用され、透明性が高く、市場変動と契約の安定性のバランスを取ることができます。
指数連動価格
商品指数や価格指標に連動して自動的に調整される価格。S&P GSCI、Platts価格、CPI などを基準とし、価格改定の透明性と客観性を確保できます。天然ガスの原油価格連動など、異なる商品間の連動も行われます。
スポット価格(直物価格)
商品や金融商品を即時または短期間内に受け渡す現物取引の価格。先物価格と対比される最も基本的な価格概念で、現在の需給バランスを直接反映します。原油、金属、農産物など各商品市場で日々形成されています。
ビッドプライス(買値)
市場で買い手が特定の資産を購入してもよいと提示している価格水準のことです。「買値」や「買い気配値」と同義です。売り手が提示するアスクプライス(売値)と対になります。
清算値(決済価格)
主に先物取引やオプション取引において、取引所が毎日の取引終了後に、値洗い(時価評価)や証拠金の計算、最終的な決済を行うために公式に決定・発表する価格のことです。
始値(寄り付き)
取引所の取引時間開始後、または特定の取引セッションの開始時に、最初に成立した取引の価格のことです。「寄り付き値段」とも呼ばれます。その日の取引の起点となる価格です。