Discount Rate

### 概要 割引率（Discount Rate）とは、ファイナンスや経済学において、将来のある時点で発生すると見込まれるキャッシュフロー（収益や費用）の価値を、現在の価値（現在価値, Present Value）に換算（割り引く、Discounting）するために用いられる利率のことです。 ### 考え方 基本的な考え方は「時間価値（Time Value of Money）」に基づいています。つまり、「将来受け取る100円は、今すぐ受け取る100円よりも価値が低い」という考え方です。これは、今すぐ受け取れば運用して増やす機会があること（機会費用）や、将来確実に受け取れるかどうかの不確実性（リスク）が存在するためです。割引率は、この時間価値やリスクを反映する尺度となります。 ### 計算 将来（n期後）のキャッシュフロー CFn の現在価値 PV は、割引率を r とすると、以下の式で計算されます。 PV = CFn / (1 + r)^n 割引率 r が高いほど、将来キャッシュフローの現在価値は低くなります。 ### 利用場面 - **割引キャッシュフロー法 (DCF法):** 企業価値や事業価値、不動産などの資産価値を評価する際に、将来予測されるキャッシュフローを適切な割引率（例: WACC - 加重平均資本コスト）で割り引いて現在価値を算出します。 - **投資の意思決定 (NPV法):** 投資プロジェクトが生み出す将来キャッシュフローの現在価値合計から、初期投資額を差し引いた正味現在価値（Net Present Value, NPV）を計算し、NPVがプラスであれば投資を実行すると判断します。この際の割引率は、投資家の要求収益率や資本コストが用いられます。 - **債券価格の評価:** 債券の将来の利払いと元本償還を、市場金利などを反映した割引率で割り引くことで理論価格を計算します。 - **金融政策:** 中央銀行が金融機関に資金を貸し出す際の公定歩合（Discount Rate）も割引率の一種です（ただし、DCF等で使う割引率とは意味合いが異なります）。 ### 割引率の決定 DCF法などで用いる割引率は、評価対象のリスクの大きさを反映して決定されます。一般的には、無リスク金利（Risk-Free Rate、例: 国債利回り）に、対象固有のリスク（市場リスク、信用リスク、事業リスクなど）に応じたリスクプレミアムを上乗せして設定されます。WACCなどが代表的な割引率です。 割引率は、将来価値を現在価値に換算するための重要な概念であり、その設定水準は評価結果に大きな影響を与えます。