企業や組織が、目標達成に影響を与える可能性のあるあらゆるリスク(戦略、財務、オペレーショナル、ハザード等)を、組織全体として統合的に認識・評価・管理していくための経営上の枠組みやプロセスです。「ERM」と略されます。
エンタープライズリスクマネジメント(Enterprise Risk Management, ERM)とは、企業などの組織が、その戦略目標を含むあらゆる目的の達成に影響を与えうる潜在的な事象(リスクおよび機会)を、組織全体(エンタープライズワイド)の視点から包括的かつ統合的に認識- 評価- 管理し、組織価値の最大化を図るための経営上の枠組みであり、継続的なプロセスです。「全社的リスク管理」と訳されます。
従来の個別リスク- 部門別管理(TRM)に対し、ERMは以下のような特徴を持ちます。
COSO ERMフレームワークやISO 31000などが、ERM導入- 実践のための国際的な指針として参照されます。
予期せぬ損失の低減、情報に基づく意思決定、経営資源の効率配分、法令遵守- ガバナンス強化、ステークホルダーからの信頼向上、機会損失低減と事業機会獲得などが期待されます。
ERMは、現代の複雑で不確実な経営環境において、組織のレジリエンスを高め、持続的成長を実現するための経営管理手法として重要性が増しています。
ERM, 全社的リスク管理
リスクマネジメント(リスク管理)
リスク管理は、潜在的な損失要因を特定、評価、制御する体系的プロセスです。市場リスク、信用リスク、オペレーショナルリスクなど多様なリスクに対し、計測、モニタリング、ヘッジ戦略を組み合わせ、許容範囲内にリスクを維持しながら収益機会を追求します。
効率的市場仮説
効率的市場仮説(Efficient Market Hypothesis, EMH)は、市場価格が入手可能な全ての情報を即座に反映するという金融理論です。この仮説では、継続的に市場平均を上回る超過収益の獲得は困難とされます。商品市場では、価格形成メカニズムの理解、投資戦略の立案、規制政策の設計において重要な理論的基盤となっており、市場の機能と限界を理解する上で欠かせない概念です。
リスク許容度
リスク許容度(Risk Tolerance)は、組織が目標から逸脱することを許容できる変動幅や不確実性の範囲を定義した実務的な境界線です。リスクアペタイトが「取りたいリスク」を示すのに対し、リスク許容度は「耐えられる限界」を明確にします。商品取引では、日々の価格変動、一時的な損失、ポジションの変動など、通常業務で発生する変動の許容範囲を定め、適切な管理を実現します。
リスクレポーティング
リスクレポーティングは、組織のリスク状況を体系的に収集、分析、伝達するプロセスです。商品取引では、ポジション、損益、リスク指標を日次・週次・月次で報告し、経営陣の意思決定を支援します。規制当局への報告要件も満たしながら、組織内のリスク認識を共有し、適時適切な対応を可能にします。
リスクカルチャー
リスクカルチャー(Risk Culture)は、組織全体でリスクに対する認識、態度、行動を形成する共有された価値観と規範の体系です。単なるルールや手続きを超えて、従業員の日常的な判断と行動に影響を与える組織の「DNA」となります。商品取引では、複雑なリスクに直面する中で、健全な判断と適切なリスクテイクを促進し、長期的な成功の基盤となる組織文化を醸成します。
リスクガバナンス
組織全体のリスクマネジメントが効果的かつ適切に機能するように、取締役会や経営層がリーダーシップを発揮し、方針策定、体制整備、監督、説明責任などを果たすための仕組みや統治プロセスのことです。
リスクマネージャー
リスクマネージャーは、組織のリスク管理体制の中核を担う専門職で、リスクの識別、評価、監視、報告を統括します。商品取引では、市場リスク、信用リスク、オペレーショナルリスクを包括的に管理し、トレーダーと経営陣の橋渡し役として、健全な取引環境の維持と規制要件の遵守を確保します。
リスクアペタイト
リスクアペタイト(Risk Appetite)は、組織が目標達成のために進んで受け入れるリスクの種類と量を示す基本方針です。単なるリスク許容度ではなく、積極的にとるべきリスクの範囲を定義します。商品取引では、市場リスク、信用リスク、オペレーショナルリスクなどに対する組織の姿勢を明確化し、一貫性のある意思決定と適切なリスクテイクを実現する指針となります。