FCOJ

### 概要 冷凍濃縮オレンジジュース（Frozen Concentrated Orange Juice, FCOJ）とは、オレンジ果汁から水分を除去して濃縮し（通常、元の約5分の1程度まで）、その濃縮果汁を冷凍したものです。ソフトコモディティとして扱われます。 ### 製造目的と利点 オレンジジュースは水分割合が高いため、FCOJに加工することで以下の利点があります。 - **輸送・保管コストの削減:** 体積と重量が大幅に減るため、輸送効率が向上し、保管スペースも削減できます。これにより、遠隔地への市場拡大も可能になります。 - **品質保持:** 冷凍することで長期間の品質維持が可能になります。 - **安定供給:** 収穫期に加工・冷凍保存することで、年間を通じたオレンジジュース製品の安定供給に貢献します。 消費地では、FCOJに水を加えて元の濃度に戻す（還元する）ことで、濃縮還元オレンジジュースとして販売されます。 ### 主な生産国 FCOJの原料となるオレンジの主要栽培地およびFCOJの主要生産国は以下の通りです。 - **ブラジル:** 世界最大のオレンジジュース生産・輸出国です。サンパウロ州などが中心です。 - **アメリカ合衆国:** フロリダ州が歴史的に主要な生産地でしたが、近年はカンキツグリーニング病やハリケーンの影響で生産量が減少傾向にあります。 - **メキシコ、欧州連合（スペインなど）**などもオレンジジュースの生産を行っています。 ### 主な用途 FCOJの主な用途は、水を加えて希釈・還元し、以下のような最終製品の原料となることです。 - 濃縮還元オレンジジュース: 小売店で販売される一般的なパックやペットボトル入りのジュース。 - フードサービス向けジュース: レストランやホテルで提供されるジュース。 - その他食品・飲料の原料: ブレンドジュース、カクテル、菓子、デザートなどの原料としても利用されます。 ### 国際取引市場と価格指標 FCOJは国際的なオレンジジュース取引における標準的な形態であり、ICE Futures U.S.（ニューヨーク）に先物契約（シンボル: OJ）が上場され、世界の価格指標となっています。 - **契約単位:** 15,000ポンド（濃縮果汁固形分、約6.8トン）。 - **決済方法:** 契約上は現物受け渡しが可能ですが、実際には差金決済で手仕舞われる取引がほとんどです。 現物の国際取引は、品質（Brix糖度、酸度、香味など）、産地、輸送条件などを考慮した相対契約によっても行われます。 ### 価格変動要因 FCOJの価格は、特に天候に左右されやすく、ボラティリティが高い商品の一つです。 - **天候:** 主要生産地である米国フロリダ州やブラジルの天候が最大の変動要因です。特にフロリダにおけるハリケーンの襲来や冬場の寒波（霜害）は、オレンジの収穫量に壊滅的な打撃を与え、価格を高騰させることがあります。ブラジルの降雨量も重要です。 - **病害:** カンキツグリーニング病（Citrus Greening Disease, HLB）などの病気の蔓延状況は、樹木の生産性や寿命に深刻な影響を与え、供給量を左右します。 - **需給バランス:** 世界的なオレンジジュースの消費動向（健康志向、他の飲料との競合など）、主要輸入国の需要、在庫水準（特にフロリダ州の在庫統計）。 - **為替レート:** 主要生産国であるブラジルの通貨（レアル）と米ドルの為替レートは、生産コストや輸出競争力に影響します。 - **収穫量予測:** USDA（米国農務省）などが発表するオレンジの収穫量予測は、市場に大きな影響を与えます。 FCOJは、オレンジジュースが国際商品として効率的に取引されるための重要な加工形態です。