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電力を発電所から需要家まで輸送する送配電ネットワークシステムです。高圧送電線、変電所、配電線から構成され、電力の安定供給を支える重要インフラとなっています。送電容量の制約が電力市場の地域分断や価格差を生み出すため、系統運用と市場取引は密接に関連しています。
送電網(Grid)とは、発電所で生産された電力を需要家まで輸送するための電力ネットワークシステムです。送電線、変電所、配電線などの設備から構成され、電力の安定供給を支える社会インフラの根幹を成しています。日本では、一般送配電事業者が運営- 管理を行っています。
基幹送電網
50万V、27万5千V、15万4千Vなどの超高圧送電線で、大規模発電所と変電所を結びます。長距離- 大容量の電力輸送を担い、地域間の電力融通を可能にしています。
地域送電網
6万6千V、7万7千Vの高圧送電線で、基幹変電所から配電用変電所まで電力を送ります。地域内の電力供給の骨格となっています。
配電網
6,600Vの高圧配電線と、100V/200Vの低圧配電線から構成されます。最終的に需要家に電力を届ける、きめ細かなネットワークです。
変電所
電圧を変換する施設で、効率的な送電と安全な配電を実現します。送電ロスの低減と、需要家への適切な電圧での供給を可能にしています。
送電網の運用では、周波数と電圧を一定範囲内に維持することが最重要課題です。
周波数は、発電量と消費量のバランスを示す指標です。日本では東日本50Hz、西日本60Hzで管理され、±0.2Hz以内の変動に抑えられています。
電圧は、送電線の各地点で適正範囲内に維持されます。無効電力の調整により、電圧の安定化が図られています。
系統運用者は、リアルタイムで需給バランスを監視し、発電所の出力調整や予備力の確保により、安定供給を維持しています。
送電網の物理的制約は、電力市場に大きな影響を与えます。
送電容量制約
送電線には熱的容量や安定度による送電限界があります。この制約により、安い電源があっても送電できない状況が発生し、地域間の価格差を生み出します。
連系線制約
地域間を結ぶ連系線の容量制限により、電力市場が地域ごとに分断されることがあります。日本では、50Hz/60Hz の周波数変換設備の容量も制約となっています。
ループフロー
電力は物理法則に従って流れるため、契約経路と異なる経路を流れることがあります。この現象により、予期しない送電線の混雑が発生することがあります。
従来の送電網利用は、送電容量を確実に確保する「ファーム型」が主流でした。しかし、再生可能エネルギーの大量導入に対応するため、「ノンファーム型接続」が導入されています。
ノンファーム型では、平常時は送電可能ですが、混雑時には出力制御を受け入れることを条件に接続が認められます。これにより、既存の送電網を最大限活用した再エネ導入が可能となっています。
デジタル技術を活用した次世代送電網として、スマートグリッドの構築が進められています。
双方向通信により、需要側の情報もリアルタイムで把握し、より効率的な系統運用が可能となります。
分散型電源や蓄電池、電気自動車などの新たなリソースを統合的に制御し、系統の柔軟性を向上させます。
需要側の能動的な参加により、デマンドレスポンスなど新たなサービスの提供が可能となっています。
送電網の建設- 維持には巨額の投資が必要で、その費用は託送料金として回収されます。
日本では、レベニューキャップ制度が導入され、必要な投資を確実に行いながら、効率化インセンティブも働く仕組みとなっています。
送電網の増強は、再生可能エネルギーの導入拡大や、レジリエンスの向上のために不可欠ですが、費用負担のあり方が課題となっています。
島国である日本は、現在国際連系線を持っていませんが、将来的な構想として検討されています。
国際連系により、電力の相互融通、再生可能エネルギーの変動吸収、エネルギーセキュリティの向上などのメリットが期待されています。
技術的課題、経済性、制度的課題など、実現に向けては多くの検討事項があります。
電力
電気エネルギーの供給形態で、発電所で生産され送電網を通じて需要家に届けられるエネルギー商品です。他のエネルギー資源と異なり貯蔵が困難なため、需給の同時同量が必要となります。産業活動や日常生活に不可欠な基盤エネルギーとして、安定供給と効率的な取引が重要視されています。
発電
一次エネルギーを電気エネルギーに変換する過程で、火力、原子力、水力、再生可能エネルギーなど多様な方式があります。各発電方式は出力特性やコスト構造が異なり、電力市場での役割も変わります。安定供給と経済性、環境性のバランスを考慮した最適な電源構成が求められています。
ベースロード
一日を通じて安定的に存在する最小限の電力需要で、産業用需要や家庭の待機電力などが該当します。原子力発電や石炭火力発電など、一定出力での運転が経済的な電源で供給されることが多く、電力市場では比較的安定した価格で取引されます。電源構成の基礎となる重要な概念です。
ピーク負荷
一定期間内で電力需要が最大となる負荷レベルで、通常は夏季の午後や冬季の夕方に発生します。電力システムの設備容量はピーク負荷に対応できるよう計画され、この時間帯の電力価格は高騰する傾向があります。ピーク負荷の予測と管理は、安定供給と経済性の両立において重要な要素です。
エネルギー生産者
石油、天然ガス、石炭、電力などのエネルギー資源を生産・供給する事業者です。探査・開発に巨額の投資が必要で、長期的な価格ヘッジが不可欠です。OPECなどの生産者組織を通じた供給調整により、市場価格に大きな影響を与える重要なプレーヤーです。