Neutral Strategy

### 概要 ニュートラル戦略（Neutral Strategy）とは、株式、為替、コモディティ、デリバティブなどの市場において、市場全体の価格が上昇するか下落するかという方向性（ディレクション）に対する予測に依存せず、ポートフォリオ全体として市場の方向性リスク（ベータリスク、デルタリスク）を中立（ニュートラル、ゼロに近い状態）に保ちながら、他の要因から収益機会を見出そうとする投資・取引戦略の総称です。「市場中立戦略」や「デルタニュートラル戦略」などがこれに含まれます。 ### 主なアプローチと例 - **マーケットニュートラル戦略 (Market Neutral):** - ロング（買い）ポジションとショート（売り）ポジションの市場価値をほぼ同額にすることで、市場全体の上下動の影響を相殺し、個別銘柄選択能力（アルファ）やペア間の価格差（スプレッド）収斂などから収益を狙います。 - 例: 統計的裁定取引、ペアトレード、ロング・ショート戦略（ベータをヘッジしたもの）。 - **ボラティリティ戦略 (Volatility Trading):** - 市場の方向性ではなく、将来の価格変動の大きさ（ボラティリティ）が、現在の市場予想（インプライド・ボラティリティ）より大きくなるか小さくなるかを予測して利益を狙います。 - 例: オプションのストラドル買い/売り、ストラングル買い/売り、バリアンススワップ取引など。デルタヘッジにより方向性リスクを中立化しながら行うことが多いです。 - **時間価値（セータ）戦略 (Theta Trading):** - オプションの売りポジションなどを構築し、時間の経過とともにオプションの時間価値が減少すること（プレミアムディケイ）から利益を得ようとする戦略。デルタヘッジを伴うことが多いです。 ### 目的と特徴 - **市場方向性リスクの低減:** 市場全体が大きく変動した場合でも、ポートフォリオへの影響を限定的にすることを目指します。 - **代替的な収益源:** 市場の上昇・下落に関わらず、ボラティリティや価格差など、市場の方向性以外の要因から収益機会を追求します。 - **ヘッジファンド:** ヘッジファンドが用いる代表的な戦略カテゴリーの一つです。 ### 注意点 - **完全な中立化は困難:** 市場リスクを完全にゼロにすることは現実的には難しく、残余リスクが存在します。 - **他のリスク:** 市場の方向性リスクは低減されても、ボラティリティリスク、相関リスク、モデルリスク、流動性リスク、カウンターパーティリスクなど、他のリスクは依然として存在します。 - **複雑性:** 戦略の構築やリスク管理には、高度な分析能力や専門知識が必要となることが多いです。 ニュートラル戦略は、伝統的な「買って待つ」戦略とは異なる収益源を提供する可能性がありますが、そのリスク特性を十分に理解する必要があります。