サステナビリティ報告基準とは、企業がESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組みや成果を統一的な基準に従って開示するためのフレームワークです。GRIスタンダード、SASBスタンダード、TCFD提言などが代表的です。
サステナビリティ報告基準(Sustainability Reporting Standards)は、企業の環境- 社会- ガバナンス(ESG)に関する情報開示のためのフレームワークと基準です。コモディティ関連企業では、資源採掘の環境影響、サプライチェーンの透明性、気候変動対応などの開示が投資家、規制当局、市民社会から強く求められており、複数の国際基準が並立- 収斂する複雑な状況となっています。
GRI(Global Reporting Initiative)スタンダード
最も広く利用されている包括的なサステナビリティ報告基準です。マテリアリティ(重要性)原則に基づき、ステークホルダーにとって重要な情報を開示します。ユニバーサルスタンダード、セクタースタンダード(石油- ガス、鉱業、農業など)、トピックスタンダードの3層構造となっています。
SASB(Sustainability Accounting Standards Board)スタンダード
投資家向けの財務的に重要なサステナビリティ情報の開示基準です。77の産業別に具体的な開示指標を定めており、コモディティ関連では、石油- ガス探査、金属- 鉱業、農産物などのセクター別基準があります。定量的指標を重視し、企業間比較を容易にします。
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言
気候関連の財務リスクと機会の開示フレームワークです。ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4つの柱で構成され、シナリオ分析による将来予測を特徴とします。多くの国で義務化または義務化が予定されています。
ISSB(International Sustainability Standards Board)基準
IFRS財団が設立した国際サステナビリティ基準審議会による、グローバルに一貫した開示基準です。TCFD提言を組み込み、SASBの産業別指標を活用し、財務報告と同等の厳格さを求めます。2024年から段階的に適用開始予定です。
採掘産業の透明性イニシアティブ(EITI)
石油、ガス、鉱物資源の採掘に関わる企業と政府間の資金の流れの透明性を高める国際基準です。ライセンス情報、生産量、収入、政府への支払いなどの開示を要求します。
EU タクソノミー規則
経済活動の環境持続可能性を分類する制度で、グリーンな活動の定義と開示要求を定めています。コモディティ関連では、持続可能な農業、循環型経済への移行などが対象となります。
責任ある鉱業保証イニシアティブ(IRMA)
鉱山サイトレベルでの環境- 社会パフォーマンスの第三者認証基準です。労働者の権利、地域社会への影響、水資源管理、廃棄物処理など、400以上の要求事項があります。
環境関連
社会関連
ガバナンス関連
マテリアリティ評価
ステークホルダーエンゲージメントを通じて、重要な開示項目を特定します。ダブルマテリアリティ(財務的重要性と環境- 社会への影響の両方)の概念が主流となっています。
データ収集と管理
ESGデータ管理システムを導入し、グローバルな事業拠点からデータを収集- 集計します。データの信頼性、完全性、適時性の確保が課題となります。
第三者保証
開示情報の信頼性を高めるため、独立した第三者による保証を取得します。限定的保証から合理的保証へと保証水準を高める企業が増えています。
EU 企業サステナビリティ報告指令(CSRD)
2024年から段階的に適用され、大企業と上場企業に詳細なサステナビリティ情報の開示を義務付けます。欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に基づく開示が要求されます。
米国 SEC 気候開示規則
上場企業に気候関連リスクと温室効果ガス排出量の開示を要求する規則が検討されています。スコープ3排出量の開示要求については議論が続いています。
各国の動向
英国、カナダ、日本、シンガポールなど、多くの国でTCFD提言に基づく開示の義務化が進んでいます。中国も独自のESG開示ガイドラインを策定しています。
基準の乱立と収斂
複数の基準への対応負担を軽減するため、ISSB基準への収斂が進んでいます。GRI と ISSB の相互運用性も確保されています。
データの比較可能性
業界特有の指標の標準化、デジタルタクソノミー(XBRL)の活用により、企業間比較を容易にする取り組みが進んでいます。
開示疲れと重要情報の埋没
統合報告やコンセクティビティ(財務情報と非財務情報の関連性)の向上により、投資家にとって真に重要な情報を効果的に伝える工夫が必要です。
自然関連財務開示(TNFD)
生物多様性と自然資本に関する開示フレームワークが開発され、2024年から自主的な採用が始まります。コモディティ企業にとって重要な開示領域となります。
インパクト会計
環境- 社会への影響を金額換算し、財務諸表に統合する試みが進んでいます。真の企業価値を測定する新たな会計体系として注目されています。
サステナビリティ報告基準は、コモディティ企業の透明性を高め、持続可能な事業運営を促進する重要な仕組みです。適切な開示により、投資家の信頼獲得、規制リスクの軽減、社会的ライセンスの維持が可能となります。
ESG格付け
ESG格付けとは、企業の環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への取り組みを評価し、格付機関が総合的にスコア化・ランク付けする仕組みです。投資判断の重要な指標として活用されています。
企業サステナビリティ報告指令
企業サステナビリティ報告指令(CSRD)は、EUにおける企業のサステナビリティ情報開示を義務付ける規制です。環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する情報を標準化された形式で開示し、投資家の意思決定と企業の持続可能性を促進します。商品取引では、ESG投資とサステナビリティ管理において重要な規制です。
再生可能エネルギー証明書
Renewable Energy Certificate(REC)は、再生可能エネルギー発電の環境価値を証券化した取引可能な証書です。商品取引では電力の環境属性を分離して取引することで、企業のRE100達成やScope2排出削減に活用され、年間数百億ドル規模の市場を形成しています。
EUタクソノミー
EUタクソノミーは、欧州連合が策定した持続可能な経済活動の分類基準です。環境、社会、ガバナンス(ESG)の観点から経済活動を評価し、持続可能な投資の促進とグリーン経済への移行を支援します。商品取引では、ESG投資とサステナビリティ管理において重要な規制です。
グリーンボンド原則
グリーンボンド原則は、環境プロジェクトの資金調達を目的とする債券発行のための国際的なガイドラインです。資金使途の透明性、環境効果の報告、プロジェクトの選定基準などを定め、グリーンファイナンスの信頼性向上を図ります。商品取引では、ESG投資とサステナビリティ管理において重要な基準です。
科学的根拠に基づく目標
気候変動の科学的知見に基づいて設定される温室効果ガス削減目標。パリ協定の目標達成に貢献し、企業の脱炭素化を促進する。国際的に認証された信頼性の高い目標設定手法。
気候関連財務情報開示タスクフォース
G20の要請を受け金融安定理事会(FSB)が設立した、企業に対し気候変動関連のリスクと機会に関する財務情報の開示を推奨するタスクフォース、及びその提言のことです。