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追加証拠金(追証)は、評価損により証拠金が必要維持率を下回った際に追加で差し入れる証拠金です。期限内に入金しない場合は強制決済となり、損失が確定します。商品取引では価格変動が大きいため、適切な追証管理がリスクコントロールの鍵となります。
追加証拠金(追証:ついしょう)は、先物- オプション取引において、評価損の拡大により証拠金残高が必要維持率を下回った際に、追加で差し入れなければならない証拠金です。市場価格の変動により建玉の評価損が拡大すると、当初差し入れた証拠金だけでは将来の決済義務を担保できなくなる可能性があるため、追加の証拠金拠出を求める制度です。通常、翌営業日の指定時刻までに入金する必要があり、期限内に入金されない場合は、証券会社等が顧客の建玉を強制的に決済(強制ロスカット)します。この仕組みにより、顧客の損失拡大を防ぐとともに、市場全体の信用リスクを管理しています。
証拠金維持率は、「有効証拠金÷必要証拠金×100」で計算されます。有効証拠金は、預託証拠金に評価損益を加減した金額で、実質的な証拠金残高を表します。必要証拠金は、建玉を維持するために最低限必要な証拠金額で、取引所や証券会社が定める証拠金率に基づいて算出されます。この維持率が一定水準(通常100%)を下回ると、追証が発生します。
毎営業日の取引終了後、清算価格に基づいて全ての建玉の評価損益を計算する「値洗い」が行われます。この値洗いの結果、証拠金維持率が必要水準を下回った顧客に対して、追証の請求が行われます。商品取引では価格変動が大きいため、一日で大幅な評価損が発生し、多額の追証が必要となることもあります。
追証額は、「必要証拠金-有効証拠金」で計算されます。ただし、証券会社によっては、翌日以降の価格変動も考慮して、必要証拠金の110%や120%まで回復させることを求める場合もあります。また、複数の建玉を保有している場合は、全体のポートフォリオベースで計算されることが一般的です。
商品市場は株式市場と比べてボラティリティが高く、天候、地政学的リスク、需給バランスの急変などにより、価格が短期間で大きく変動することがあります。このため、追証の発生頻度が高く、追証額も大きくなる傾向があります。特にエネルギー商品や農産物では、一日で10%以上の価格変動も珍しくありません。
商品先物取引は高いレバレッジ効果を持つため、少額の証拠金で大きなポジションを持つことができます。しかし、これは逆に小さな価格変動でも大きな評価損益を生み出すことを意味し、追証リスクを高めます。レバレッジ10倍の取引では、原資産が10%逆行すると、証拠金が全額失われる計算になります。
商品先物では限月制度があり、定期的にポジションのロールオーバーが必要です。限月交代時には価格差(スプレッド)の変動により、予期しない評価損が発生し、追証が必要となることがあります。また、納会日が近づくにつれて証拠金率が引き上げられることも、追証発生の要因となります。
追証に適切に対応するためには、十分な余裕資金を確保しておくことが重要です。証拠金の2-3倍程度の資金を用意し、追証発生時に速やかに対応できる体制を整えておく必要があります。また、複数の建玉を持つ場合は、相関関係を考慮したリスク分散を行うことで、追証リスクを軽減できます。
追証が発生した場合、必ずしも追加入金だけが選択肢ではありません。損失が出ているポジションの一部または全部を決済することで、必要証拠金を減らし、証拠金維持率を回復させることも可能です。ただし、この方法は損失を確定させることになるため、慎重な判断が必要です。
多くの証券会社では、証拠金維持率が一定水準を下回った時点で自動的にポジションを決済する「ロスカット」機能を提供しています。これを適切に設定することで、追証の発生を未然に防ぎ、想定以上の損失拡大を回避できます。ただし、急激な価格変動時にはスリッページが発生する可能性があります。
金融当局は、過度な投機を抑制し、投資者保護を図るため、証拠金規制を定期的に見直しています。市場のボラティリティが高まった際には、取引所が証拠金率を臨時に引き上げることもあります。これにより、既存ポジションに対しても追証が発生することがあります。
金融商品取引業者は、顧客に対して追証制度について十分な説明を行う義務があります。また、顧客の知識、経験、財産状況に照らして、不適当な取引を勧誘してはならない適合性原則も適用されます。これにより、追証リスクを十分に理解- 許容できない投資家の保護が図られています。
追証は商品取引におけるリスク管理の重要な要素ですが、同時に投資家にとって大きな負担となる可能性があります。市場参加者は、追証制度を正しく理解し、適切な資金管理とポジション管理を行うことが不可欠です。また、追証の発生は市場のボラティリティを反映する指標でもあり、市場全体のリスク水準を把握する上でも重要な情報となります。証券会社や清算機関は、追証制度の適切な運用により、個別の投資家保護と市場全体の安定性維持のバランスを取ることが求められています。
エクスポージャー管理
エクスポージャー管理(Exposure Management)は、市場リスクにさらされている資産や負債の総量を把握し、適切にコントロールする包括的なリスク管理手法です。商品取引では、価格変動リスク、為替リスク、カントリーリスクなど多様なエクスポージャーを統合的に管理します。ポジション限度額の設定、ストレステストの実施、ヘッジ戦略の策定などを通じて、許容範囲内にリスクを制御します。
証拠金要件
証拠金要件(Margin Requirements)は、デリバティブ取引を行う際に取引所やブローカーが要求する最低限の担保金額です。当初証拠金と維持証拠金から構成され、市場の変動性や商品のリスク特性に応じて設定されます。商品先物取引では、価格変動による損失をカバーし、決済不履行リスクを防ぐための重要な制度として機能しています。
損益計算
損益計算(P&L Calculation)は、取引ポジションの利益(Profit)と損失(Loss)を算出する基本的なプロセスです。リアルタイムでの未実現損益の把握から、決済後の実現損益の確定まで、取引管理の根幹を成します。商品取引では契約サイズ、為替レート、手数料などを考慮した正確な計算が求められ、リスク管理と投資判断の基礎となります。
時価評価
時価評価(Mark to Market)は、保有ポジションや資産を現在の市場価格で評価し直す会計処理です。日々の市場価格変動を損益に反映させることで、ポートフォリオの真の価値を把握できます。商品デリバティブ取引では、日次での時価評価により証拠金の過不足を計算し、追証の発生有無を判定する重要なプロセスとなっています。
利確
利確(Take Profit)は、保有ポジションが目標利益に達した際に自動的に決済を行う注文方式です。事前に設定した価格水準で確実に利益を確定させることで、その後の相場反転による利益減少を防ぎます。商品取引では、ボラティリティの高い市場環境において、達成した利益を確実に確保するための重要な取引手法として活用されています。
ポートフォリオ・リバランス
ポートフォリオ・リバランシング(Portfolio Rebalancing)は、市場価格の変動により変化した資産配分を、当初の目標配分に戻す調整プロセスです。値上がりした資産を売却し、値下がりした資産を購入することで、リスクレベルを一定に保ちます。商品投資では、セクター間の価格変動が大きいため、定期的なリバランシングにより、リスク管理と長期的な収益の安定化を図ります。
ポジション追跡
新規に買い注文を出して約定すると「買いポジション(ロングポジション)」を持つことになり、新規に売り注文を出して約定すると「売りポジション(ショートポジション)」を持つことになります。このポジションは、反対売買により決済するまで継続し、その間の価格変動により損益が変動します。
レバレッジ
「てこ」の原理のように、少ない自己資金で、借入金やデリバティブなどを利用して、自己資金だけの場合よりも大きな規模の取引や投資を行うことです。高いリターンが期待できる反面、損失も拡大するリスクがあります。