AIFMD

欧州代替投資ファンド運用者指令

法制度・規制

欧州連合(EU)におけるヘッジファンドやプライベートエクイティなど代替投資ファンド(AIF)の運用者(AIFM)に対する規制・監督指令です。投資家保護やシステミックリスク管理を目的として導入されました。「AIFM指令」とも呼ばれます。

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### 概要 AIFMD(Alternative Investment Fund Managers Directive、欧州代替投資ファンド運用者指令)は、欧州連合(EU)域内でオルタナティブ投資ファンド(Alternative Investment Fund, AIF)を運用または販売する運用会社(Alternative Investment Fund Manager, AIFM)に対して適用される包括的な規制・監督の枠組みを定めたEU指令です。2011年に採択され、2013年から施行されています。「AIFM指令」とも略称されます。 ### 背景と目的 リーマンショック後の金融危機を受けて、それまで比較的規制が緩やかであったヘッジファンドやプライベートエクイティファンドなどのオルタナティブ投資ファンド運用者に対する監督を強化し、金融システムの安定性を高めること、および投資家保護を強化することを主な目的として導入されました。 ### 主な規制内容 AIFMDは、対象となるAIFMに対して以下のような多岐にわたる要求事項を課しています。 | 規制項目 | 概要 | | :--------------------------- | :----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | | 認可・登録 | 一定規模以上のAIFMは、各国の規制当局からの認可または登録が必要です。 | | 業務執行体制 | 適切な組織体制、リスク管理、利益相反管理、報酬方針などの整備が求められます。 | | カストディアンの選任 | AIF資産保全のため、独立したカストディアンの選任が原則義務付けられます。 | | 評価(バリュエーション) | AIF資産の公正な評価に関する方針・手続きの確立が求められます。 | | レバレッジ管理 | 過度なレバレッジに対する監視・管理体制の構築と当局への報告が必要です。 | | 透明性・情報開示 | 投資家および規制当局に対し、運用戦略、リスク、手数料、レバレッジ等に関する詳細な情報開示・報告が義務付けられます。 | ### 影響 AIFMDの導入により、欧州のオルタナティブ投資業界における規制遵守コストは増加しましたが、一方で運用者やファンドに対する信頼性・透明性が向上し、機関投資家などがより安心して投資できる環境整備に繋がった側面もあります。 この指令は、欧州でオルタナティブ投資ビジネスを行う上で理解しておくべき基本的な規制枠組みです。
関連用語
Alternative dispute resolution

代替的紛争解決

裁判(訴訟)以外の方法で、当事者間の紛争を解決するための手続きの総称です。仲裁(Arbitration)、調停(Mediation)、あっせんなどが含まれます。「ADR」と略されます。

AML

マネーロンダリング対策

犯罪等で得た不正資金を、正当な資金に見せかけるマネー・ローンダリング(資金洗浄)を防止するための取り組みです。法律、規制、および金融機関などが実施する顧客管理や取引監視といった手続きの総称を指します。金融システムの健全性維持や、犯罪・テロ資金供与の防止を目的としています。

Big Bang

ビッグバン

1986年10月に英国ロンドンの金融市場(シティ)で行われた、証券取引に関する大規模な規制緩和・自由化措置の通称です。固定手数料の廃止や外資参入自由化などが実施されました。

CFTC

米商品先物取引委員会

アメリカ合衆国における商品先物取引およびスワップ(デリバティブ)市場を監督・規制する独立した連邦政府機関です。市場の公正性・透明性の確保や、市場参加者の保護を目的としています。

Chapter 11

チャプター11(連邦破産法第11章)

米国の連邦破産法における手続きの一つで、主に企業が対象となります。裁判所の監督下で事業を継続しながら、債務の整理や事業の再建を目指すことを目的としています。

Common Carriage

コモン・キャリア(公共輸送機関)

不特定多数の荷主に対して、差別なく公平に、公示された料金で輸送サービスを提供する義務を負う輸送事業者のことです。パイプライン、鉄道、一部の海運・航空などが該当する場合があり、規制下に置かれます。

Corporate Governance

コーポレートガバナンス

企業経営を監視・規律し、不正行為の防止や、株主をはじめとするステークホルダー(利害関係者)の利益を考慮した、公正で効率的な経営を実現するための仕組みや体制のことです。「企業統治」と訳されます。

Customs

税関

国境を越えて移動する貨物や旅客、輸送手段などを管理し、関税やその他の税金を徴収し、輸出入に関連する法令(密輸、禁制品、検疫など)を執行する政府機関のことです。

Doha Round

ドーハ・ラウンド

世界貿易機関(WTO)の下で2001年にカタールのドーハで開始された多角的貿易交渉(ラウンド)のことです。農業、非農産品、サービスなどの分野での貿易自由化を目指しましたが、先進国と途上国の対立などから交渉は長期化し、包括的な合意には至りませんでした。

Dumping

ダンピング(不当廉売)

採算を度外視して、通常の国内販売価格や生産コストよりも著しく低い価格で商品を輸出すること、または国内市場で販売することです。「不当廉売」とも呼ばれ、国際貿易や国内競争において問題視されることがあります。

Economic Sanctions

経済制裁

国際的な平和や安全保障上の問題、人権侵害などを理由に、特定の国、団体、個人に対して、貿易制限、資産凍結、金融取引制限などの経済的な制限措置を課すことです。

Export Control

輸出管理

国際的な安全保障や平和維持などの観点から、特定の貨物(武器、軍事転用可能な汎用品など)や技術が、懸念国やテロリスト等に渡ることを防ぐために、輸出を法律に基づいて規制・管理することです。

Force Majeure

不可抗力

予測不能な事態により契約義務が免除される条項

Foreign Tax Credit

外国税額控除

国際的な二重課税を排除するために、居住国(自国)で所得税や法人税を納める際に、国外で得た所得に対して既にその国(源泉地国)で納付した税額を、自国の税額から一定の限度内で差し引くことができる制度です。

Import Quota

輸入割当(制)

国内産業の保護や需給調整などを目的として、政府が特定の輸入品目について、一定期間内に輸入できる数量や金額に上限(割当枠)を設定する制度、またはその割当枠のことです。「IQ制度」とも呼ばれます。

Import Tariff

輸入関税

外国から輸入される商品に対して、国内産業の保護や財政収入確保のために、その価格や数量を基準として輸入国の政府が課す税金のことです。単に「関税」とも呼ばれます。

Position Limits

ポジション制限(建玉制限)

先物・オプション市場において、特定の市場参加者が保有できる未決済建玉(ポジション)の数量に、取引所や規制当局が設ける上限のことです。相場操縦やリスク集中を防ぐ目的があります。

Price Limit

値幅制限

株式市場や商品先物市場などで、一日の取引における価格の変動幅(上限・下限)を、前日の終値などを基準にあらかじめ定めておく制度のことです。市場の過熱や混乱を防ぐ目的があります。

Tax Treaty

租税条約

租税条約は、二つの国が税金に関するルールを取り決めた国際条約で、同じ所得に対して両国で二重に課税されるのを防ぐために結ばれます。配当や利息、ロイヤルティなどの所得について、どちらの国がどの範囲で課税できるかを定め、企業や個人の国際的な取引や投資を円滑にします。

参考文献

野村資本市場研究所|私募ファンド運用会社全般を規制する欧州AIFMDの概要と影響

神山 哲也