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原商品の市場の現在価格とオプションの権利行使価格が等しい状態。ATMとも略される。
アット・ザ・マネー(At-The-Money、ATM)とは、原商品の市場の現在価格とオプションの権利行使価格が等しい状態を指します。株価が1,000円の時に権利行使価格1,000円のオプションがATMとなります。この状態では、オプションの内在価値(本質的価値)はゼロですが、時間価値は最大となります。ATMオプションは、価格変動に対する感応度が最も高く、オプション取引において最も重要な価格帯として位置づけられています。
ATMの概念は、1973年のブラック・ショールズ・オプション価格理論の確立とともに体系化されました。それ以前のオプション取引では、権利行使価格と現在価格の関係について明確な分類がありませんでしたが、理論的なオプション価格算出の必要性から、ITM(イン・ザ・マネー)、ATM、OTM(アウト・オブ・ザ・マネー)の分類が確立されました。
1970年代のシカゴ・オプション取引所(CBOE)設立以降、ATMオプションは最も活発に取引される価格帯となりました。機関投資家や個人投資家にとって、最もヘッジ効果が高く、かつ適度なコストでリスク管理ができる商品として認識されるようになりました。
内在価値ゼロでは、権利行使価格と現在価格が等しいため、即座に権利行使しても利益は発生しません。オプション価格は全て時間価値で構成されています。
最大時間価値では、ATMオプションは時間価値が最も大きくなります。これは、将来の価格変動により利益を得る可能性が最も高いためです。
最高デルタ値では、コール・オプションの場合約0.5、プット・オプションの場合約-0.5となり、原資産価格の変動に対する感応度が最適化されています。
ATMオプションの価格は、主に時間価値、ボラティリティ、金利、配当により決定されます。内在価値がゼロのため、これらの外在的要因が価格に大きく影響します。
ボラティリティの影響が最も顕著に現れるのがATMオプションです。インプライド・ボラティリティの上昇は、ATMオプション価格の大幅な上昇をもたらします。
時間減衰の影響も最大となります。満期が近づくにつれて時間価値が急速に減少し、特に満期直前では急激な価格下落が生じます。
株式ポートフォリオのヘッジでは、ATMプット・オプションを購入することで、保有株式の下落リスクを効率的にヘッジできます。コストと効果のバランスが最も優れています。
為替ヘッジでは、輸出入企業がATMオプションを利用して、適度なコストで為替変動リスクを管理します。フォワード契約より柔軟性があり、有利な方向への変動時には利益を享受できます。
金利リスクヘッジでは、ATMキャップやフロアを利用して、金利上昇・下落リスクを管理します。
方向性投機では、強い方向感を持つ投資家がATMオプションを購入します。レバレッジ効果により、少額の投資で大きな利益を狙うことができます。
ボラティリティ投機では、ボラティリティの変化を予想してATMオプションを売買します。ボラティリティ上昇を予想する場合は買い、下落を予想する場合は売りポジションを構築します。
時間減衰リスクが最大の課題です。予想した方向に価格が動かない場合、時間の経過とともにオプション価値が急速に減少します。
ボラティリティ・リスクでは、インプライド・ボラティリティの低下により、価格変動がなくてもオプション価格が下落する可能性があります。
ガンマ・リスクでは、ATMオプションはガンマ(デルタの変化率)が最大となるため、原資産価格の小幅な変動でもデルタが大きく変化し、ヘッジ比率の調整が頻繁に必要になります。
ATMオプションは流動性の中心となります。最も取引量が多く、ビッド・オファー・スプレッドも狭いため、大口取引でも効率的な執行が可能です。
価格発見機能では、ATMオプションの価格からインプライド・ボラティリティが算出され、市場参加者の将来の価格変動予想を知ることができます。
ベンチマーク機能では、他の権利行使価格のオプション価格を評価する際の基準として使用されます。
権利行使価格
オプションの権利を行使する際に、原資産を売買する基準となる価格のことです。「エクササイズプライス」とも呼ばれます。オプション契約を定義する上で基本的な要素の一つです。
オプション売り手
オプション契約の「売り手」のことです。オプションプレミアムを受け取る代わりに、買い手が権利行使した場合に、原資産を売買する「義務」を負います。「オプションセラー」とも呼ばれます。
イン・ザ・マネー
In the Money(イン・ザ・マネー)は、オプションの権利行使価格が原資産の価格に対して有利な状態を指します。コールは市場価格が高い場合、プットは市場価格が低い場合が該当します。
オプション保有者
オプション契約の「買い手」のことです。オプションプレミアムを支払うことで、原資産を特定の価格で売買する「権利」を取得しますが、権利を行使する「義務」はありません。損失は支払ったプレミアムに限定されます。
プレミアム
基準となる価値や価格に対する「上乗せ価格」や「割増金」を指します。オプション取引における権利料(価格)や、保険契約における保険料、債券価格の額面超過分などを指すことが多いです。
原資産
オプション取引の対象となる資産のことです。株式、株価指数、通貨、金利、コモディティ(商品)など、様々なものが原資産となり得ます。オプションが「何の権利」であるかを定義します。