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オプションの権利を行使する際に、原資産を売買する基準となる価格のことです。「エクササイズプライス」とも呼ばれます。オプション契約を定義する上で基本的な要素の一つです。
権利行使価格(Strike Price)とは、オプションの権利を行使する際に、原資産を売買する基準となる価格のことです。「エクササイズプライス(Exercise Price)」とも呼ばれ、オプション契約を定義する上で基本的な要素の一つです。コール・オプションでは買う権利の価格、プット・オプションでは売る権利の価格を意味し、この価格と市場価格の関係によりオプションの価値と戦略的意義が決まります。権利行使価格は契約締結時に固定され、満期まで変更されることはありません(ただし、株式分割などの調整事由を除く)。
権利行使価格の概念は、古代ギリシャの哲学者タレスが行ったとされるオリーブ圧搾機の権利取引にまで遡ることができます。彼は豊作を予想してオリーブ圧搾機を使用する権利を事前に確保し、実際に豊作となった際にその権利を高値で転売したとされています。
近代的なオプション取引における権利行使価格の体系は、1973年のシカゴ・オプション取引所(CBOE)設立とともに確立されました。標準化された契約仕様により、複数の権利行使価格が同時に取引される仕組みが構築され、投資家の多様なニーズに対応できるようになりました。
日本では、1989年の大阪証券取引所での株価指数オプション上場により、本格的な権利行使価格システムが導入されました。その後、個別株オプション、通貨オプションなど様々な商品で権利行使価格の設定が行われています。
価格刻みの標準化では、原資産の価格水準に応じて一定間隔で権利行使価格が設定されます。日本株オプションでは、株価100円未満は5円刻み、100円以上500円未満は10円刻み、500円以上は25円刻みなどの基準があります。
ATM中心の配置では、現在の市場価格(アット・ザ・マネー)を中心として、上下に複数の権利行使価格が配置されます。通常は5-10本程度の権利行使価格が同時に取引可能です。
追加上場システムにより、市場価格が大きく変動した場合、新しい権利行使価格が自動的に追加上場されます。これにより、常にATM付近での取引機会が確保されます。
**イン・ザ・マネー(ITM)**では、コール・オプションの場合は市場価格が権利行使価格を上回る状態、プット・オプションの場合は市場価格が権利行使価格を下回る状態を指します。内在価値が存在し、即座に権利行使すれば利益が得られます。
**アット・ザ・マネー(ATM)**では、市場価格と権利行使価格がほぼ等しい状態です。内在価値はゼロですが、時間価値が最大となり、最も活発に取引される価格帯です。
**アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)**では、ITMの逆の状態で、内在価値はゼロです。時間価値のみで構成されるため、オプション価格は相対的に安くなります。
ヘッジ戦略では、保護したい価格水準に応じて権利行使価格を選択します。株式ポートフォリオの下落リスクをヘッジする場合、現在の株価に近いATMプットは高いヘッジ効果を提供しますが、コストも高くなります。OTMプットはコストは安いですが、ヘッジ効果は限定的です。
投機戦略では、予想する価格変動の方向と大きさに応じて権利行使価格を選択します。大きな価格変動を予想する場合はOTMオプションでレバレッジを効かせ、確実性を重視する場合はITMオプションを選択します。
インカム戦略では、カバード・コール戦略において、目標売却価格に相当する権利行使価格を設定します。株価がその水準に達した場合の売却を前提として、オプション・プレミアムによる追加収入を得ます。
株式分割・株式併合により、権利行使価格と契約単位が比例的に調整されます。2:1の株式分割の場合、権利行使価格は半分に、契約単位は2倍になり、経済的価値は保持されます。
配当調整では、特別配当が支払われた場合、権利行使価格が配当額分だけ調整される場合があります。ただし、通常の配当については調整は行われません。
企業再編対応では、合併、買収、スピンオフなどの企業再編により、権利行使価格や受渡し対象が複雑に調整される場合があります。
ATM付近の高流動性では、市場価格に近い権利行使価格ほど取引量が多く、ビッド・オファー・スプレッドも狭くなります。機関投資家の大口取引でも効率的な執行が可能です。
深いITM・OTMの低流動性では、市場価格から大きく離れた権利行使価格は取引量が少なく、価格発見が困難な場合があります。売買時には価格インパクトを考慮する必要があります。
スプレッド戦略では、異なる権利行使価格のオプションを組み合わせて、リスク・リターン特性を調整します。ブル・スプレッドでは低い権利行使価格を買い、高い権利行使価格を売ります。
ストラドル・ストラングルでは、同じ権利行使価格(ストラドル)または異なる権利行使価格(ストラングル)のコールとプットを組み合わせて、大きな価格変動から利益を得ようとします。
バタフライ・コンドルでは、3つまたは4つの異なる権利行使価格を組み合わせて、特定の価格レンジでの利益を狙います。
ピン・リスクでは、満期時に市場価格が権利行使価格に極めて近い場合、権利行使されるかどうかの不確実性が生じます。オプション売り手にとって予期しないポジションを持つリスクがあります。
アサイメント・リスクでは、深いITMのオプションを売建てしている場合、早期権利行使により予期しない現物ポジションを持つ可能性があります。
ガンマ・リスクでは、ATM付近でガンマ(デルタの変化率)が最大となるため、原資産価格の変動に対してポジションのリスク特性が大きく変化します。
権利行使価格は税務計算において重要な要素となります。権利行使時の課税では、権利行使価格と市場価格の差が譲渡所得として認識されます。取得価格の算定では、権利行使により取得した現物資産の取得価格は、権利行使価格にオプション・プレミアムを加えた金額となります。
権利行使価格は、オプション取引の核心的な要素として、投資戦略の成功を左右する重要な選択要因です。
オプション売り手
オプション契約の「売り手」のことです。オプションプレミアムを受け取る代わりに、買い手が権利行使した場合に、原資産を売買する「義務」を負います。「オプションセラー」とも呼ばれます。
イン・ザ・マネー
In the Money(イン・ザ・マネー)は、オプションの権利行使価格が原資産の価格に対して有利な状態を指します。コールは市場価格が高い場合、プットは市場価格が低い場合が該当します。
オプション保有者
オプション契約の「買い手」のことです。オプションプレミアムを支払うことで、原資産を特定の価格で売買する「権利」を取得しますが、権利を行使する「義務」はありません。損失は支払ったプレミアムに限定されます。
プレミアム
基準となる価値や価格に対する「上乗せ価格」や「割増金」を指します。オプション取引における権利料(価格)や、保険契約における保険料、債券価格の額面超過分などを指すことが多いです。
原資産
オプション取引の対象となる資産のことです。株式、株価指数、通貨、金利、コモディティ(商品)など、様々なものが原資産となり得ます。オプションが「何の権利」であるかを定義します。