Cobalt

### 概要 コバルト（Cobalt）は、原子番号27、元素記号Coで表される遷移金属元素です。銀白色でわずかに青みがかった硬い金属で、鉄（Fe）やニッケル（Ni）と類似した性質を持ち、常温で強磁性を示します。レアメタルの一つに分類されます。 ### 主な用途 近年、最大の用途となっているのは**リチウムイオン二次電池（LIB）の正極材料**です。 - **LIB正極材:** コバルト酸リチウム（LCO）、ニッケル・マンガン・コバルト酸リチウム（NMC）、ニッケル・コバルト・アルミニウム酸リチウム（NCA）など、多くのLIB正極材において、電池の容量、寿命、安定性を高めるためにコバルトが不可欠な役割を果たしています。特に電気自動車（EV）向け需要が急増しています。 その他の主な用途は以下の通りです。 - **超合金 (Superalloys):** ニッケル基またはコバルト基の超合金の構成元素として、高温での強度、耐熱性、耐摩耗性を向上させます。ジェットエンジン、ガスタービンなどの高温部品に利用されます。 - **磁石材料:** アルニコ磁石やサマリウムコバルト磁石（SmCo）など、強力な永久磁石の材料として利用されます。 - **顔料:** コバルト化合物は鮮やかな青色（コバルトブルー）や緑色を呈するため、ガラス、セラミックス、絵具などの着色剤として古くから利用されています。 - **触媒:** 石油精製における脱硫触媒や、化学合成プロセスにおける酸化触媒などとして利用されます。 - **その他:** 硬質合金（超硬工具の結合材）、めっき、乾燥剤、ビタミンB12の構成元素など。 ### 資源と市場 コバルトは通常、銅鉱石やニッケル鉱石に伴って産出し、それらの製錬における副産物として回収されます。最大の生産国はコンゴ民主共和国（DRC）であり、世界の供給の大部分を占めていますが、同国における人権問題やサプライチェーンの不透明性（紛争鉱物問題）が指摘されています。価格は、LIB需要（特にEV市場）、供給国の情勢、在庫水準などの影響を強く受け、変動が大きい傾向があります。 コバルトは、EVシフトを支える上で戦略的に非常に重要なレアメタルですが、供給面での課題を抱えています。