読み込み中...
コンタンゴとは、先物価格が現物価格を上回る市場状態です。通常、金利と保管コストの分だけ先物が高くなるため、多くの商品市場で観察される正常な状態です。在庫が潤沢で、将来の供給不安がない時に発生しやすく、キャリートレードの機会を提供します。
コンタンゴ(Contango)とは、先物価格が現物価格を上回る市場状態を指し、商品市場における最も一般的な価格構造です。満期が遠い契約ほど価格が高くなる右上がりのフォワードカーブを描きます。この状態は「順鞘(じゅんざや)」とも呼ばれ、金利と保管コストを反映した理論的に自然な価格関係といえます。
語源は19世紀のロンドン証券取引所で使われた専門用語「continuation」の変形とされています。当時の取引所では、決済を翌月に延期(continue)する際に追加料金が発生し、この料金体系がコンタンゴと呼ばれるようになりました。現代では、より広く先物高- 現物安の状態全般を指すようになっています。
キャリーコストの反映
コンタンゴの基本的な要因は、商品を保有するためのコスト(キャリーコスト)です。保管料、保険料、金利などが先物価格に上乗せされます。
在庫の潤沢さ
十分な在庫が存在し、供給不安がない時にコンタンゴが発生しやすくなります。現物がすぐに必要ない市場環境を示しています。
時間とともに収束
先物契約が満期に近づくにつれ、先物価格は現物価格に収束します。この収束過程がロールオーバーコストを生み出します。
正常な市場状態
多くの商品市場において、コンタンゴは通常の状態です。特に金融商品化された商品ETFなどは、恒常的にコンタンゴの影響を受けます。
キャリートレード:現物を購入- 保管し、先物で売却することで、保管コストを上回る利益を狙います。ただし、資金調達コストと保管施設の確保が必要です。
ロールオーバー戦略:コンタンゴ市場では、限月交代時にコストが発生するため、ロールタイミングの最適化が重要になります。
在庫投資判断:コンタンゴの程度により、在庫を積み増すか削減するかを判断します。急峻なコンタンゴは在庫投資の好機となります。
価格予測の安定性:コンタンゴ市場では、将来価格がある程度予測可能で、ヘッジ戦略が立てやすくなります。
裁定機会の存在:理論値を超えるコンタンゴは、現物購入- 先物売却の裁定機会を提供します。
市場の健全性:適度なコンタンゴは、市場に十分な流動性と在庫が存在することを示し、価格の安定に寄与します。
ロールオーバー損失:長期保有の投資家にとって、継続的なロールオーバーコストは大きな負担となります。
保管リスク:キャリートレードでは、商品の物理的な保管に伴う品質劣化や事故のリスクがあります。
急激な構造変化:供給ショックなどにより、コンタンゴからバックワーデーションへ急転する可能性があります。
バックワーデーションとの違い:バックワーデーションは現物高- 先物安で、コンタンゴの正反対の状態です。
ベーシスとの違い:ベーシスは現物と先物の価格差そのものを指し、コンタンゴはその差がプラスの状態を指します。
キャリーとの違い:キャリーは保有コストを指し、コンタンゴはそのコストが価格に反映された状態を指します。
2020年4月のWTI原油市場では、極端なコンタンゴが発生しました。コロナ禍による需要急減と貯蔵施設の逼迫により、5月限がマイナス価格となる一方、6月限は20ドル台を維持し、史上最大の限月間スプレッドが記録されました。この事例は、物理的制約がコンタンゴ構造に与える影響の極端な例として歴史に残っています。
期間構造
期間構造とは、異なる満期日を持つ先物契約の価格関係を示す概念です。近月物から遠月物までの価格がどのような形状を描くかにより、市場の需給状況や将来見通しを把握できます。コンタンゴやバックワーデーションといった価格パターンの基礎となる重要な概念です。
フォワード曲線
フォワードカーブとは、将来の異なる受渡期日における先物価格を時系列に並べた曲線です。横軸に期日、縦軸に価格をとることで、市場の将来価格予想を視覚的に把握できます。金利、保管コスト、需給見通しなどの要因により、右上がりや右下がりの形状を示します。
逆鞘
バックワーデーションとは、現物価格が先物価格を上回る逆転現象です。現物の需給が逼迫し、即座に商品を手に入れることに高い価値がある時に発生します。在庫不足、供給障害、緊急需要などが原因となり、商品市場特有の重要な価格シグナルとなります。
近月
近月物とは、最も期日が近い先物契約のことです。通常、最も取引量が多く流動性が高いため、現物市場の需給を最もよく反映します。実需筋の取引が集中し、価格発見機能の中心となる重要な限月で、ロールオーバーのタイミング判断にも不可欠です。
遠月
遠月物とは、受渡期日が遠い将来の先物契約です。近月物に比べて取引量は少ないものの、中長期的な需給見通しや市場期待を反映します。ヘッジ取引や長期ポジション構築に利用され、期間構造分析において重要な情報を提供します。
近接契約
近接契約とは、現在取引されている中で最も期日が近い、または2番目に近い先物契約を指します。高い流動性と狭いスプレッドが特徴で、短期的な価格変動を捉える取引に適しています。実需家のヘッジ取引が集中する限月でもあります。
正常なコンタンゴ
正常なコンタンゴとは、金利と保管コストを反映した理論通りの順鞘状態です。先物価格が満期までの持越費用分だけ現物価格を上回り、安定した右上がりのカーブを描きます。在庫が適正水準にあり、市場に大きな不安要因がない健全な状態を示します。