Fair Value

概要

公正価値（Fair Value）とは、市場参加者間で行われる取引において、十分な情報を持った当事者間で合意される価格のことです。この価値は、強制的な取引や清算取引ではなく、通常の取引を前提として決定されます。公正価値は、企業の資産や負債を時価で評価する際の基準となり、投資家や債権者が企業の真の価値を判断する上で重要な概念です。IFRSや米国GAAPなど、主要な会計基準でも公正価値による評価が広く採用されています。

主な特徴

• 市場ベースの評価: 公正価値は市場での取引価格を基準として決定され、企業の主観的な判断ではなく、市場の客観的な評価を反映します。
• 十分な情報の前提: 市場参加者が十分な情報を持った上で取引を行うことを前提としており、情報の非対称性がない状態での価格です。
• 通常取引の前提: 強制的な取引や清算取引ではなく、通常の事業活動における取引を前提として決定されます。
• 時価評価の基準: 企業の資産や負債を時価で評価する際の基準となり、財務諸表の信頼性向上に貢献します。
• 国際標準: IFRSや米国GAAPなど、主要な会計基準で採用されており、国際的な会計の標準となっています。

実務での活用

公正価値は、企業の財務報告において資産や負債の真の価値を適切に反映し、投資家や債権者の意思決定を支援する重要な役割を果たします。

• 金融商品の評価: 株式、債券、デリバティブなどの金融商品を公正価値で評価し、市場価値の変動を財務諸表に反映します。
• 投資不動産の評価: 投資目的で保有する不動産を公正価値で評価し、市場価値の変動を認識します。
• 企業結合の評価: 企業買収時に取得した資産や負債を公正価値で評価し、適切な価値を財務諸表に反映します。
• 減損テスト: 資産の減損テストにおいて、公正価値を基準として減損損失を測定します。

メリット- 効果

• 財務情報の透明性向上: 公正価値により、企業の資産や負債の真の価値が財務諸表に反映され、情報の透明性が向上します。
• 市場価値の反映: 市場価値の変動が財務諸表に適切に反映され、投資家や債権者が企業の真の価値を評価できます。
• 国際比較の可能性: 公正価値による評価により、国際的な企業比較が可能になり、投資判断の質が向上します。

注意点- リスク

• 市場価値の変動性: 公正価値は市場価値に基づくため、市場の変動により大きく変動する可能性があります。
• 評価の複雑性: 市場価値が存在しない資産や負債の公正価値の決定は複雑であり、適切な評価手法の選択が重要です。
• 市場の非効率性: 市場が非効率な場合、公正価値が真の価値を適切に反映しない可能性があります。

関連用語との違い

• 取得原価: 資産を最初に取得した時の価格。公正価値は時価での評価であり、取得原価とは異なる概念です。
• 市場価値: 市場での取引価格。公正価値は市場価値を基準としますが、市場価値が存在しない場合の評価手法も含みます。

実務ポイント- 事例

• 金融商品の公正価値評価: 市場価値が存在する金融商品については、市場価値を公正価値として採用します。市場価値が存在しない場合は、適切な評価手法（DCF法、オプション価格モデルなど）を使用します。
• 投資不動産の公正価値評価: 投資不動産については、不動産鑑定士による鑑定価格や類似物件の取引価格を参考として公正価値を決定します。
• 監査での評価: 監査人は、公正価値の評価において、評価手法の妥当性や評価に使用された仮定の合理性を評価します。