基本概念

FIFO（First In First Out、先入先出法）は、最も古い在庫から順番に払い出す在庫管理方法です。「最初に入庫したものを最初に出庫する」という原則に基づき、在庫の物理的な流れと会計上の流れを一致させます。食品、医薬品、化学品など、経年劣化や使用期限がある商品の管理に特に適しており、品質管理と在庫評価の両面で重要な役割を果たします。

FIFOの仕組みと実施方法

FIFOを実践するためには、入庫日時の正確な記録と管理が不可欠です。各商品やロットに入庫日、製造日、有効期限を明記したラベルを貼付し、データベースで管理します。保管場所は、古い在庫へのアクセスが容易になるよう配置し、「前入れ後出し」のレイアウトを採用します。ピッキング指示では、システムが自動的に最も古い在庫を指定し、作業者の判断によるミスを防ぎます。

商品別の適用例

食品業界：賞味期限管理が最重要で、期限切れによる廃棄ロスを最小化します。

医薬品業界：有効期限の厳格な管理により、患者の安全を確保します。

化学品業界：経時変化による品質劣化を防ぎ、規格適合性を維持します。

アパレル業界：シーズン商品の適切な回転により、在庫の陳腐化を防ぎます。

電子部品業界：はんだ付け性の劣化などを防ぎ、製造品質を確保します。

会計上の効果

FIFOは、在庫評価方法としても使用されます。インフレ環境下では、古い（安い）在庫が先に売上原価となるため、利益が大きく計上される傾向があります。貸借対照表上の在庫は、より最近の（高い）価格で評価されるため、資産価値が実勢に近くなります。国際会計基準（IFRS）および多くの国の会計基準で認められている方法です。

システムとテクノロジー

現代のWMS（倉庫管理システム）は、FIFOを自動的に実行する機能を備えています。バーコードやRFIDによる個体管理、ロット管理により、入庫日時を正確に追跡します。また、有効期限が近い在庫に対するアラート機能、自動的な在庫の再配置指示など、FIFOの徹底を支援する機能が充実しています。

メリットと課題

FIFOの最大のメリットは、品質劣化リスクの最小化です。古い在庫が滞留することなく、常に新鮮な状態の商品を顧客に提供できます。また、在庫の流れが単純で理解しやすく、作業者の教育も容易です。一方、課題としては、古い在庫へのアクセスを確保するための特別なレイアウトが必要なこと、頻繁な在庫の移動が発生する可能性があることなどが挙げられます。

業界標準と規制

食品業界では、HACCP（Hazard Analysis and Critical Control Points）により、FIFOの実施が義務付けられています。医薬品業界のGMP（Good Manufacturing Practice）、GDP（Good Distribution Practice）でも、FIFOは基本要件となっています。これらの規制により、FIFOは単なる管理手法を超えて、法的要求事項となっています。

まとめ

FIFOは、在庫の品質維持と適切な評価を実現する基本的かつ重要な管理手法です。特に有効期限のある商品では必須の方法であり、顧客への品質保証と企業の信頼性向上に直結します。システム化により実施の精度と効率が向上し、サプライチェーン全体の最適化に貢献しています。