Last Mile Delivery

概要

ラストマイル配送は、配送センターや物流拠点から最終消費者の手元に商品を届ける物流の最終区間を指します。物流全体のコストの約50%を占める最も高コストな部分であり、同時に顧客満足度に直接影響する最も重要な工程です。eコマースの急成長により、ラストマイル配送の効率化は物流業界の最大の課題となっています。

ラストマイル配送の概念は、通信業界で使われていた用語が物流業界に転用されたものです。2000年代のeコマース黎明期から重要性が認識され始め、Amazonの翌日配送サービスの登場により、競争が激化しました。現在では、即日配送や時間指定配送が標準化しつつあります。

商品取引において、ラストマイル配送は競争優位性の源泉となっています。配送スピードと品質が顧客の購買決定に大きく影響し、リピート率を左右します。特に生鮮品や医薬品など、時間的制約のある商品では、ラストマイル配送の品質が事業の成否を決定します。

主な特徴

コスト構造が非効率です。個別配送のため、トラックの積載率が低く、配送先が分散しているため移動距離が長くなります。不在再配達により、さらにコストが増加します。都市部では交通渋滞も効率を低下させます。

労働集約的な作業です。最終的な受け渡しは人手に頼らざるを得ず、自動化が困難です。配送員の確保と教育が品質を左右します。

顧客との接点となります。配送員は企業の顔として顧客と直接接するため、その対応がブランドイメージに影響します。丁寧な対応と確実な配送が顧客満足度を決定します。

実務での活用

配送ルートの最適化により効率を向上させます。リアルタイムの交通情報を反映した動的なルート変更も行います。

多様な受取方法を提供します。宅配ボックス、コンビニ受取、駅ロッカー、置き配など、顧客のライフスタイルに合わせた受取オプションを用意します。

配送状況の可視化により顧客満足度を向上させます。リアルタイムトラッキング、到着予定時刻の通知、配送員の位置情報提供などにより、顧客の利便性を高めます。

メリット- 効果

顧客満足度の向上により、リピート購入が増加します。迅速で確実な配送は、顧客ロイヤリティを高める最も効果的な方法です。

差別化要因となります。優れたラストマイル配送は、価格競争から脱却し、付加価値による競争優位を確立できます。

データ収集の機会となります。配送時の顧客の反応や要望を収集し、サービス改善に活用できます。

注意点- リスク

コスト増加のリスクがあります。燃料費の高騰、人件費の上昇、環境規制の強化などにより、コストが増加する傾向にあります。

労働力不足が深刻です。配送ドライバーの高齢化と若手の不足により、配送能力の確保が困難になっています。

環境負荷が問題となっています。個別配送による CO2排出量の増加が社会問題化しており、環境配慮型の配送方法が求められています。

関連用語との違い

ファーストマイルは発送元から最初の集荷拠点までの区間で、ラストマイルの逆の概念です。

ミドルマイルは拠点間の幹線輸送を指し、大量輸送により効率的ですが、ラストマイルは個別配送で非効率です。

宅配便は配送サービス全体を指しますが、ラストマイル配送は最終区間に特化した概念です。

実務ポイント- 事例

Amazonは独自の配送網「Amazon Logistics」を構築し、ラストマイル配送を内製化しています。配送密度を高めることでコストを削減し、Prime会員向けの迅速な配送を実現しています。ドローン配送「Prime Air」の実験も進めています。

ヤマト運輸は「EAZY」サービスにより、非対面配送を推進しています。玄関前への置き配、車庫やガスメーターボックスへの配送など、多様な受取方法を提供し、再配達率の削減を図っています。

中国のJD.comは、無人配送車やドローンを活用したラストマイル配送を実用化しています。農村部では、ドローンにより従来アクセスが困難だった地域への配送を可能にしています。都市部では、自動運転配送車により24時間配送を実現しています。