天然ゴムは、ゴムノキの樹液(ラテックス)から製造される弾性高分子材料です。タイ、インドネシア、ベトナムが主要生産国で、タイヤ産業が需要の約70%を占めます。東京商品取引所とシンガポール取引所が主要市場で、合成ゴムとの競合、病害リスク、価格変動が課題となっています。
天然ゴム(Natural Rubber)は、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)の樹皮から採取される乳白色の樹液(ラテックス)を原料とする弾性高分子材料です。主成分はシス-1,4-ポリイソプレンで、優れた弾性、引張強度、耐摩耗性、電気絶縁性を持ちます。加硫(硫黄架橋)により、実用的なゴム製品となります。年間生産量は約1,400万トンで、合成ゴムと並ぶ重要な工業原料です。自動車タイヤが最大用途で、全需要の約70%を占めます。
ゴムノキは、赤道の南北15度以内の高温多湿地域で栽培されます。植林から生産開始まで5-7年を要し、経済寿命は25-30年です。タッピング(樹皮切開)により、ラテックスを採取します。一本あたり年間2-3kgの乾燥ゴムが得られます。ラテックスは、酸凝固により生ゴムシート(RSS: Ribbed Smoked Sheet)、または遠心分離により濃縮ラテックスに加工されます。技術的格付けゴム(TSR: Technically Specified Rubber)は、品質規格により等級分けされます。
タイが世界最大の生産- 輸出国(全生産の33%)で、南部地域が主産地です。インドネシア(23%)、ベトナム(8%)、インド(6%)、中国(5%)が続きます。小規模農家による生産が全体の85%を占めます。消費は、中国(40%)、インド(9%)、米国(8%)、日本(5%)に集中しています。自動車生産と強い相関があり、中国の自動車市場が価格形成に大きく影響します。
天然ゴムの価格は、複数の市場で形成されます。東京商品取引所(TOCOM)のRSS3、上海先物取引所(SHFE)、シンガポール取引所(SGX)のTSR20が主要指標です。価格は、主要生産国の天候、病害(根腐病、葉枯病)、タッピング中断(雨季、ウィンディング)、原油価格(合成ゴムとの競合)、自動車生産動向に影響されます。国際天然ゴム機構(ITRO)による価格安定化の試みもありますが、効果は限定的です。
天然ゴム産業は、多様な課題を抱えています。価格変動が激しく、小規模農家の生計が不安定です。単一栽培による生物多様性の低下、森林破壊も問題となっています。合成ゴムとの競争、電気自動車普及によるタイヤ需要変化も懸念材料です。持続可能な天然ゴムプラットフォーム(GPSNR)により、森林保全、人権尊重、トレーサビリティ確保が推進されています。品種改良による収量向上、タンポポゴムなど代替原料の研究も進んでいます。
生ゴム, Natural Rubber