Total Return Swap

概要

トータルリターンスワップ（Total Return Swap, TRS）は、一方の当事者（トータルリターン支払者）が特定の参照資産（株式、債券、ローン、コモディティ指数など）から生じるトータルリターン（価格変動による損益と、配当や利息などのインカムゲインの合計）を相手方に支払い、もう一方の当事者（トータルリターン受取者）からLIBORやSOFRなどの変動金利に連動する金利（＋スプレッド）を受け取る（またはその逆の支払いを行う）相対取引のデリバティブ契約です。

仕組み

トータルリターン受取者は、実際に参照資産を保有することなく、その資産の経済的なリターンとリスク（エクスポージャー）を持つことになります。一方、トータルリターン支払者は、参照資産を保有し続ける場合でも、その価格変動リスクやインカム変動リスクをヘッジし、代わりに安定した金利収入を得ることができます。

主な利用目的

• エクスポージャーの移転: 参照資産の保有権を移転することなく、その経済的なリスクとリターンのみを移転させます。レバレッジを効かせた投資や、バランスシート上の理由からの利用があります。
• 資金調達: 資産を保有する当事者がTRSを通じて実質的にその資産を担保にした資金調達（シンセティック- ファイナンス）を行う場合があります。
• 規制資本の効率化: 金融機関が、特定の資産をバランスシートから実質的に切り離し、自己資本規制への対応を効率化するために利用することがあります。
• 裁定取引: 参照資産市場とデリバティブ市場間の価格差を利用した取引に用いられることもあります。

対応できる主なリスク

• 市場リスク（価格変動リスク、インカムリスク）: 参照資産の価値変動やインカム（配当、利息）の変動から生じるリスクを移転します。
• 信用リスク（参照資産が債券やローンの場合）: デフォルトなどによる参照資産の価値下落リスクもトータルリターンに含まれるため、このリスクも移転対象となります。
• （受取側にとって）資金調達リスク: 少ない資金で大きなエクスポージャーを持つことができる一方、損失発生時の支払い義務リスクがあります。

利用上の注意点

• カウンターパーティリスクが存在します。
• 参照資産の特定や評価方法、決済条件などを契約で明確にする必要があります。
• 複雑な取引であり、リスク管理には専門知識が求められます。