ATC (Average Total Cost)

### 概要 平均総費用（Average Total Cost, ATC）は、ミクロ経済学における費用理論の概念の一つです。企業が生産活動を行う際に発生する全ての費用（総費用, Total Cost = 固定費用 + 変動費用）を、その生産量（Quantity, Q）で割ったものであり、製品1単位あたりにかかる平均的な費用を示します。「平均費用（Average Cost, AC）」とほぼ同義で使われることもあります。 ### 計算式 ATC = 総費用 (TC) / 生産量 (Q) = (固定費用 (FC) + 変動費用 (VC)) / Q = 平均固定費用 (AFC) + 平均変動費用 (AVC) - **平均固定費用 (Average Fixed Cost, AFC):** 固定費用を生産量で割ったもの (FC/Q)。生産量が増えるほど低下します。 - **平均変動費用 (Average Variable Cost, AVC):** 変動費用を生産量で割ったもの (VC/Q)。 ### 費用曲線 ATC曲線は、横軸に生産量、縦軸に費用をとったグラフ上で、通常、生産量が少ない領域ではAFCの低下により減少し、ある点で最小となり、その後は生産量増加に伴うAVCの上昇（収穫逓減など）により増加していく、U字型のカーブを描くと考えられます。 また、限界費用（Marginal Cost, MC：生産量を1単位増やしたときに追加でかかる費用）曲線は、ATC曲線の最低点を下から上に通過します。 ### 意味合いと利用 - **企業の損益分岐点:** 価格がATCを上回っていれば企業は利益を上げ、下回っていれば損失を被ります。価格がATCの最低点と一致する点が、長期的な損益分岐点（利益ゼロ）となります。 - **生産効率:** ATCが低いほど、より効率的に生産が行われていることを示唆します。 - **価格設定:** 企業が価格を設定する際に、最低限カバーすべきコスト水準として考慮されます。 平均総費用は、企業の費用構造と生産効率を理解するための基本的な概念です。