1. 基本概念

限月（げんげつ、Contract/Delivery Month）は、先物契約やオプション契約において、その契約が満期を迎える月を指定する重要な概念です。各限月は独立した取引対象として扱われ、異なる限月の契約は別々の商品として取引されます。商品先物取引では、3月限、6月限、9月限、12月限など、四半期ごとに設定されることが一般的で、農産物では収穫時期、エネルギーでは需要ピーク、金属では工業需要サイクルに応じて主要限月が決定されます。限月の選択により、リスクヘッジの期間、投資戦略、現物受渡しのタイミングが決まります。

2. 契約構造- 条件

各限月契約には、最終取引日、受渡期間、決済方法、取引単位が個別に設定されます。最終取引日は通常、満期月の第3金曜日や月末営業日など、取引所規則により統一されています。近月物（期近物）は流動性が高く価格変動が大きく、遠月物（期先物）は流動性が相対的に低いが長期ヘッジに適しています。限月交代（ロールオーバー）では、期近契約から次の期近契約への乗り換えが行われ、この際の価格差がロールコストとして取引コストに影響します。商品特性により、連続する月に限月を設定する場合と、四半期ごとに設定する場合があります。

3. 商品取引での活用

農産物取引では、収穫期に合わせた限月（大豆11月限、トウモロコシ12月限）で生産者の販売ヘッジと需要家の調達ヘッジが活発化します。エネルギー取引では、暖房需要期（冬季）、冷房需要期（夏季）に対応した限月で季節変動をヘッジします。金属取引では、自動車生産、建設需要の季節性に応じた限月選択により、製造業の原料調達リスクを管理します。商社では、複数限月の価格差（カレンダースプレッド）を活用した裁定取引、在庫コストを考慮した最適限月選択、顧客のヘッジニーズに応じた限月提案を行います。

4. メリットと効果

限月制度により、多様な期間のリスクヘッジ、効率的な価格発見、流動性の集中が実現できます。生産者- 需要家にとって、事業サイクルに適合したヘッジ期間の選択、季節性リスクの管理、在庫調整の最適化が可能になります。投資家にとっては、異なる期間の投資機会、限月間裁定による収益機会、ポートフォリオの時間分散効果が期待できます。市場全体では、各期間の需給バランス反映、将来予想の価格形成、効率的な資源配分が促進されます。

5. 注意点とリスク

限月選択では、流動性リスク、ロールオーバーリスク、ベーシスリスクに注意が必要です。遠月物は流動性が低く、スプレッドが広がりやすく、思惑通りの価格での売買が困難な場合があります。限月交代時期には、ロールコスト（期近と期先の価格差）が取引収益に影響します。また、最終取引日接近時の価格変動拡大、現物受渡しを避けるための強制決済、税務上の期間損益計算への影響も考慮する必要があります。商品によっては、特定限月への取引集中により価格歪みが生じる場合もあります。

6. 関連契約- 法制度

先物取引では、商品先物取引法、金融商品取引法により限月設定、取引規則、最終取引日が規制されます。税務上は、期間損益計算、繰延ヘッジ会計、デリバティブ会計基準への対応が重要です。国際取引では、各国取引所の限月設定、時差による取引時間、決済通貨の違いへの対応が必要です。会計処理では、ヘッジ会計の適用、公正価値評価、キャッシュフロー- ヘッジ会計の期間対応が複雑になります。

7. 実務ポイント- 事例

限月選択では、ヘッジ期間と事業サイクルの整合性、流動性と取引コストのバランス、ロールオーバー戦略の設計が重要です。穀物メジャーでは、南米大豆（3月収穫）の11月限ヘッジ、北米トウモロコシ（9月収穫）の12月限ヘッジが一般的です。石油会社では、夏場ガソリン需要に備えた5月限、冬場暖房油需要に備えた10月限での調達ヘッジが行われます。電力会社では、夏季電力需要ピークに備えたLNG夏季限、冬季暖房需要に備えた冬季限での燃料ヘッジが重要です。近年は、気候変動による季節パターンの変化、再生可能エネルギーの普及による需要構造変化に応じた限月戦略の見直しが進んでいます。