Dynamic Hedging

### 概要 ダイナミックヘッジ（Dynamic Hedging、動的ヘッジ）とは、オプションなどのデリバティブの売りポジションを保有する場合や、特定のポートフォリオのリスク特性を一定に保ちたい場合に、市場の状況（特に原資産価格）の変化に合わせて、ヘッジ手段（通常は原資産そのものや、関連する先物など）の保有量を**継続的かつ機動的に調整**していくリスク管理（ヘッジ）戦略のことです。「静的ヘッジ（Static Hedging）」と対比されます。 ### オプションのデルタヘッジ 最も代表的な例が、オプションの売り手がデルタリスクを管理するために行う「デルタヘッジ（Delta Hedging）」です。 - オプションのデルタ（価格感応度）は、原資産価格などによって常に変動します。 - オプション売り手は、この変動するデルタを相殺するように、原資産の保有量を継続的に売買（調整）し、ポートフォリオ全体のデルタを常にゼロ（または目標水準）に近づけようとします（デルタニュートラル）。 ### その他の応用 ポートフォリオ保険や、為替・金利などのリスク管理においても、市場変動に応じてヘッジ比率を動的に調整するアプローチはダイナミックヘッジと言えます。 ### 特徴と課題 - **継続的な調整:** 市場変動に合わせ頻繁な取引（リバランス）が必要です。 - **取引コスト:** 頻繁な売買に伴うコスト（手数料、スプレッド、マーケットインパクト）が発生します。 - **モデルリスク:** ヘッジ比率（デルタ等）の計算はモデルに依存するため、モデルが不正確だとヘッジ効果が得られない可能性があります。 - **ボラティリティリスク（ガンマリスク）:** デルタヘッジだけでは、ボラティリティ変動（ガンマ）によるリスクを完全にカバーできない場合があります。 - **実行上の困難:** 市場急変時や流動性低下時には、想定通りのヘッジ取引を実行できない可能性があります。 ダイナミックヘッジは、理論上はリスクを精緻に管理できる可能性がある一方、実行にはコストと複雑さが伴うヘッジ手法です。