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コモディティ取引用語辞典トレタム

コモディティ取引に関する専門用語を学べる総合用語集

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    LGD (Loss Given Default)

    デフォルト時損失率

    信用リスク

    デフォルト時損失率(LGD)は、債務不履行が発生した場合に失われる債権額の割合です。商品取引では、担保価値、優先順位、回収プロセスの効率性により変動します。通常40-60%程度ですが、無担保取引では100%近くになることもあり、期待損失計算の重要要素です。

    基本概念

    デフォルト時損失率(LGD: Loss Given Default)は、債務者がデフォルトした場合に、最終的に回収できない債権の割合を示す指標です。回収率(Recovery Rate: RR)の逆数の関係にあり、LGD = 1 - RR として表されます。商品取引においては、売掛金、前払金、デリバティブエクスポージャーなどがデフォルトした際の実際の損失額を予測する重要なパラメータであり、PD(デフォルト確率)、EAD(デフォルト時エクスポージャー)と組み合わせて期待損失を算出します。

    LGDの重要性は、信用リスクの経済的影響を定量化することにあります。PDが「デフォルトが起きるか」を示すのに対し、LGDは「起きた場合にどれだけ失うか」を示します。商品取引では、大口取引が多く、一件のデフォルトでも影響が大きいため、LGDの正確な推定が損失管理の鍵となります。また、与信判断、プライシング、引当金計算、規制資本計算においても不可欠な要素です。

    LGDの決定要因

    LGDは複数の要因により決定されます。

    担保の種類と価値が最も重要な要因です。現金担保は回収率がほぼ100%(LGD≈0%)ですが、不動産、在庫、売掛金などの担保は、処分時の価値下落により回収率が低下します。商品取引では、商品在庫を担保とすることが多いですが、価格変動、品質劣化、処分コストなどによりLGDが変動します。例えば、原油在庫は比較的流動性が高くLGDが低い一方、特殊鋼材などは処分が困難でLGDが高くなります。

    債権の優先順位により、回収順位が決まります。シニア債権(優先債権)は回収率が高く(LGD 20-40%)、劣後債権は回収率が低い(LGD 60-100%)傾向があります。商品取引では、担保付債権、一般債権、劣後債権の順位構造を理解することが重要です。倒産法制により、労働債権、税金などが優先される場合もあります。

    企業特性と産業要因もLGDに影響します。有形資産が多い製造業は回収率が高く、無形資産中心のサービス業は低い傾向があります。商品取引企業では、在庫、倉庫、輸送設備などの有形資産の比率が重要です。また、産業全体の景況、技術革新による資産の陳腐化なども影響します。

    商品取引におけるLGDの特性

    商品取引には特有のLGD要因があります。

    商品価格との相関が重要な特徴です。デフォルト時の商品価格水準がLGDに大きく影響します。価格下落局面でのデフォルトでは、在庫担保の価値も低下し、LGDが上昇します。この「ダブルデフォルト」効果により、期待以上の損失が発生することがあります。例えば、2014-2016年の原油価格暴落時には、エネルギー企業のLGDが大幅に上昇しました。

    物理的資産の特性により、回収プロセスが複雑化します。商品の保管場所、品質状態、輸送可能性などが回収率に影響します。腐敗しやすい農産物、危険物指定の化学品、特殊な保管条件が必要な商品などは、処分が困難でLGDが高くなります。また、国際取引では、現地法制度、輸出規制なども考慮する必要があります。

    取引構造の複雑性もLGDに影響します。三国間貿易、背中合わせ取引、ストラクチャードファイナンスなどの複雑な取引では、権利関係の確定、相殺の可否、担保権の執行などに時間とコストがかかり、LGDが上昇します。信用状取引、保証付取引では、銀行や保証人からの回収可能性も考慮します。

    LGDの推定手法

    LGDを推定するための様々な手法があります。

    ヒストリカル平均法は、過去のデフォルト案件の実績回収率から平均的なLGDを算出する最も基本的な手法です。債権種類別、担保種類別、産業別などのセグメントごとに集計します。商品取引では、商品カテゴリー別、地域別の実績データを蓄積することが重要です。ただし、過去データが少ない場合は、外部データベースや業界平均を参照することもあります。

    回帰モデル法により、LGDの決定要因を統計的に分析します。線形回帰、ベータ回帰、トービットモデルなどを用いて、担保カバー率、企業規模、産業ダミー、マクロ経済変数などとLGDの関係をモデル化します。商品取引では、商品価格、在庫回転率、取引条件などを説明変数に加えます。ただし、LGDは0-100%の範囲に制約されるため、適切な変換が必要です。

    市場LGD法は、社債価格やCDSからインプライドLGDを抽出します。デフォルト後の社債価格、CDSの回収率前提などから市場が想定するLGDを逆算します。上場企業や債券発行企業に限定されますが、フォワードルッキングな評価が可能です。商品取引企業では、同業他社や類似企業の市場LGDを参考にすることがあります。

    回収プロセスとLGD

    実際の回収プロセスがLGDを決定します。

    回収戦略の選択により、最終的なLGDが変わります。任意売却、競売、債権譲渡、企業再建支援など、様々な選択肢があります。早期回収を優先すれば回収額は低くなり、時間をかければ費用がかさみます。商品取引では、商品の劣化、保管コスト、市況変化なども考慮して最適な戦略を選択します。

    回収期間とコストは、実質的な回収率を低下させます。法的手続き、資産査定、売却交渉などに時間がかかり、その間の金利コスト、弁護士費用、管理費用などが発生します。商品取引では、国際仲裁、船舶差押え、倉庫在庫の処分などに特有のコストがかかります。回収期間が長期化するほど、現在価値ベースのLGDは上昇します。

    **ワークアウト(私的整理)**による回収も重要です。法的倒産手続きを避け、債務者との交渉により回収を図ります。債務減免、返済期限延長、債務の株式化(DES)などの手法があります。商品取引では、重要な取引先の場合、事業継続を支援しながら段階的に回収することもあります。この場合、短期的なLGDは高くても、長期的には回収率が改善することがあります。

    担保管理とLGD削減

    適切な担保管理によりLGDを削減できます。

    担保評価の精緻化により、実効性のある担保価値を把握します。定期的な再評価、ストレス時の価値下落、処分コストを考慮した保守的な評価が必要です。商品在庫では、価格変動リスク、品質劣化リスク、陳腐化リスクなどを反映した掛け目(ヘアカット)を設定します。独立した評価機関の活用も有効です。

    担保権の完全性確保は、法的な回収可能性の前提です。担保設定契約の適法性、対抗要件の具備、優先順位の確認が重要です。商品取引では、動産譲渡登記、倉庫証券への質権設定、所有権留保条項などを活用します。国際取引では、現地法に基づく担保権設定が必要です。

    担保のモニタリングにより、価値の毀損を防ぎます。定期的な実査、在庫報告の取得、品質検査などを実施します。商品取引では、第三者倉庫での保管、保険付保、定期的なローテーションなどにより、担保価値を維持します。異常な在庫変動、品質劣化の兆候を早期に発見することが重要です。

    LGDのストレステスト

    極端な状況でのLGDを評価することが重要です。

    景気後退シナリオでは、LGDが大幅に上昇します。資産価格の下落、買い手の減少、処分期間の長期化により、回収率が低下します。過去の不況期のLGDデータを分析し、ダウンサイドLGDを推定します。商品取引では、商品価格暴落シナリオでのLGDを評価します。

    システミックストレスでは、市場全体の機能不全によりLGDが上昇します。金融危機、パンデミック、地政学的危機などにより、資産市場が凍結し、回収が困難になります。2008年金融危機時のLGD上昇率を参考に、ストレス時LGDを設定します。

    相関効果の考慮により、複合的なリスクを評価します。PDとLGDの正の相関、担保価値と債務者信用力の相関などを考慮します。商品取引では、商品価格、為替、金利の複合ショックシナリオでのLGDを分析します。

    規制要件とLGD

    LGDは規制資本計算の重要な要素です。

    バーゼル規制では、基礎的内部格付手法で規制当局指定のLGD(シニア無担保45%など)、先進的内部格付手法で自行推定LGDの使用が認められています。デフォルト時データの蓄積、ダウンサイドLGDの考慮、保守的なバイアスなどの要件があります。商品取引会社も、銀行借入において間接的に影響を受けます。

    IFRS 9会計基準では、予想信用損失(ECL)の計算にLGDが必要です。過去実績に加え、フォワードルッキングな情報、複数の経済シナリオを反映したLGDを使用します。担保価値、回収コストを考慮した実効LGDの算定が求められます。

    ストレステスト要件では、厳しい経済シナリオでのLGDが要求されます。規制当局指定のシナリオ、または内部シナリオに基づき、ストレス時LGDを推定します。過去の危機時のLGD、専門家判断を組み合わせて設定します。

    LGDモデルの高度化

    LGDモデリングは継続的に進化しています。ランダムフォレスト、勾配ブースティング、ニューラルネットワークにより、非線形関係を捉えることができます。大量の説明変数から自動的に重要な要因を抽出します。ただし、解釈可能性、外挿性の課題もあります。

    回収プロセスの最適化により、実際のLGDを改善できます。

    統合モデリングにより、PD-LGD-EADの相関を考慮します。同時方程式モデル、構造モデルにより、信用リスクパラメータ間の依存関係を表現します。商品価格を共通ファクターとした統合モデルにより、より現実的なリスク評価が可能となります。

    将来の展望

    LGD管理は市場環境の変化とともに進化しています。

    ESG要因の影響が注目されています。環境規制違反、社会問題により、資産価値が急落し、LGDが上昇するケースが増えています。座礁資産リスク、レピュテーション毀損による事業価値低下などを、LGD推定に組み込む必要があります。

    デジタル資産とLGDの関係が新たな課題です。デジタル化された商品取引、トークン化された資産では、従来と異なる回収プロセスとなります。

    行動経済学の応用により、回収プロセスが改善されています。債務者の心理、交渉のタイミング、インセンティブ設計などを最適化し、任意回収率を向上させています。ナッジ理論、ゲーム理論の応用により、Win-Winの解決策を見出すアプローチが発展しています。

    関連用語
    Contingency Fund

    緊急時基金

    予算やプロジェクト計画などにおいて、予期せぬ出来事(コスト超過、事故、災害など)が発生した場合に備えて、あらかじめ確保しておく資金枠や予算項目のことです。

    Credit Spread Risk

    クレジットスプレッドリスク

    クレジットスプレッドリスクは、信用スプレッドの変動により損失が発生するリスクです。商品取引では、取引先企業の信用力変化、市場環境悪化により、保有ポジションの評価損や資金調達コスト上昇が生じます。

    Collateral

    担保

    担保は、債務不履行時の損失を軽減するために徴求する資産や権利です。商品取引では、商品在庫、売掛金、倉庫証券、信用状、預金などを担保とします。適切な評価、法的有効性の確保、継続的な管理が信用リスク軽減の鍵となります。

    Settlement Risk

    決済リスク

    決済リスクは、取引の決済過程で相手方が義務を履行しない、または遅延するリスクです。商品取引では、商品引渡しと代金支払いの時間差、異なる法域間の決済などで発生します。DVP(同時決済)、エスクロー、信用状の活用により軽減を図ります。

    Netting

    ネッティング

    ネッティングは、同一取引先との債権債務を相殺し、純額で決済する仕組みです。商品取引では、売買取引、デリバティブ、複数通貨の取引を包括的に相殺します。法的有効性の確保により、信用リスクと決済リスクを大幅に削減できます。

    PD (Probability of Default)

    デフォルト確率

    デフォルト確率(PD)は、債務者が一定期間内にデフォルトする確率を示す指標です。商品取引では、取引先の財務状況、市場環境、業界動向から推定します。格付け、統計モデル、市場情報を組み合わせて算出し、与信判断と期待損失計算の基礎となります。

    Credit Limit

    与信限度額

    与信限度は、取引先に対して供与できる信用の上限額です。商品取引では、売掛金、在庫委託、デリバティブエクスポージャーなどの合計額を管理します。信用力、取引実績、担保状況により設定し、定期的に見直します。