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金融派生商品の金利等の計算に使われる名目上の元本。
想定元本(Notional Amount)とは、金融派生商品の金利等の計算に使われる名目上の元本のことです。実際に資金の授受は行われませんが、利息や手数料の計算基準として使用される理論的な元本金額です。金利スワップ、通貨スワップ、先物契約、オプション契約などのデリバティブ取引において、損益やキャッシュフローを算出するための基準となります。想定元本の大きさにより、取引のリスク量や収益規模が決まるため、リスク管理において重要な概念となっています。
想定元本の概念は、1980年代の金利スワップ市場の発展とともに確立されました。当時、銀行間で金利リスクを交換する取引が活発化しましたが、実際の資金移動を伴わない利息交換の仕組みが必要でした。この際に、利息計算の基準として想定元本が使用されるようになりました。
1990年代以降のデリバティブ市場の急拡大とともに、想定元本の概念は様々な金融商品に適用されるようになりました。特に店頭デリバティブ市場では、複雑な商品の損益計算において想定元本が重要な役割を果たすようになりました。
金利スワップでは、固定金利と変動金利の交換において、利息計算の基準として想定元本が使用されます。例えば、想定元本1億円の金利スワップでは、固定金利2%と変動金利(TIBOR)を交換し、その差額のみが決済されます。
通貨スワップでは、異なる通貨間での元本と利息の交換において、各通貨での想定元本が設定されます。ドル/円スワップでは、ドル建て想定元本と円建て想定元本の両方が存在します。
先物契約では、契約の標準化された取引単位が想定元本となります。日経225先物では「指数×1,000倍」、米国債先物では「額面10万ドル」が想定元本として機能します。
オプション契約では、権利行使時に売買される原資産の金額が想定元本となります。通貨オプションでは特定通貨額、金利オプションでは特定の元本金額が設定されます。
エクスポージャーの測定では、想定元本によりポジションの規模を把握できます。ただし、想定元本が大きくても実際のリスクは限定的な場合があるため、注意が必要です。
VaR(Value at Risk)計算では、想定元本を基準としてリスク量を算出します。市場リスク、信用リスク、流動性リスクの評価において、想定元本は重要な要素となります。
ネッティングでは、同一相手方との複数取引において、想定元本を基準として相殺計算を行います。これにより、実質的なリスク・エクスポージャーを圧縮できます。
オフバランス取引では、想定元本は貸借対照表に計上されません。これは、実際の資金授受を伴わないためです。ただし、注記等での開示が求められる場合があります。
時価評価では、想定元本ではなく、契約の時価(公正価値)が損益に反映されます。想定元本は時価計算の基礎データとして使用されます。
ヘッジ会計では、ヘッジ対象とヘッジ手段の想定元本の対応関係が重要となります。適切なヘッジ比率の設定により、会計上のヘッジ効果を認識できます。
BIS規制では、銀行の自己資本比率計算において、デリバティブ取引の信用リスク・エクスポージャーを想定元本を基準として算出します。
レバレッジ比率規制では、想定元本がレバレッジ比率の分母(エクスポージャー)の計算に含まれる場合があります。
大口信用供与規制では、デリバティブ取引の信用リスク・エクスポージャーを想定元本を基準として計算し、規制上の限度額管理を行います。
市場規模の測定では、デリバティブ市場の規模を想定元本ベースで表示することが一般的です。国際決済銀行(BIS)の統計では、世界のデリバティブ市場規模を想定元本で公表しています。
取引量の比較では、異なる商品間での取引量を想定元本ベースで比較します。これにより、市場の相対的な重要性を評価できます。
信用リスクでは、想定元本全額が損失となることは稀で、実際の信用リスクは時価や将来エクスポージャーに依存します。
市場リスクでは、想定元本の大きさと価格変動率により損益の振れ幅が決まります。低ボラティリティの商品では、大きな想定元本でも市場リスクは限定的です。
流動性リスクでは、想定元本が大きいほど、ポジション解消時の市場インパクトが大きくなる可能性があります。
ポートフォリオ管理では、想定元本を基準として、各商品のウェイトや集中度を管理します。
限度額管理では、取引相手方別、商品別、地域別などの想定元本ベースでの限度額を設定し、リスクの集中を防ぎます。
収益管理では、想定元本当たりの収益率(ROA:Return on Assets)を算出し、取引の効率性を評価します。
想定元本は、デリバティブ取引の理解とリスク管理において不可欠な概念であり、適切な理解と活用が重要です。
権利行使価格
オプションの権利を行使する際に、原資産を売買する基準となる価格のことです。「エクササイズプライス」とも呼ばれます。オプション契約を定義する上で基本的な要素の一つです。
オプション売り手
オプション契約の「売り手」のことです。オプションプレミアムを受け取る代わりに、買い手が権利行使した場合に、原資産を売買する「義務」を負います。「オプションセラー」とも呼ばれます。
イン・ザ・マネー
In the Money(イン・ザ・マネー)は、オプションの権利行使価格が原資産の価格に対して有利な状態を指します。コールは市場価格が高い場合、プットは市場価格が低い場合が該当します。
オプション保有者
オプション契約の「買い手」のことです。オプションプレミアムを支払うことで、原資産を特定の価格で売買する「権利」を取得しますが、権利を行使する「義務」はありません。損失は支払ったプレミアムに限定されます。
プレミアム
基準となる価値や価格に対する「上乗せ価格」や「割増金」を指します。オプション取引における権利料(価格)や、保険契約における保険料、債券価格の額面超過分などを指すことが多いです。
原資産
オプション取引の対象となる資産のことです。株式、株価指数、通貨、金利、コモディティ(商品)など、様々なものが原資産となり得ます。オプションが「何の権利」であるかを定義します。