Slippage

### 概要 スリッページ（Slippage）とは、株式、FX、商品先物などの市場で売買注文（特に成行注文やストップ注文）を出した際に、注文時に意図していた価格（または画面に表示されていた価格）と、実際に取引が成立（約定）した価格との間にずれが生じる現象、またはその価格差のことを指します。「すべる」と表現されることもあります。 ### 発生要因 スリッページが発生する主な要因は以下の通りです。 - **市場の価格変動:** 注文を発注してから、それが取引システムに到達し、約定するまでのごくわずかな時間差の間に、市場価格が変動した場合。 - **流動性の低さ:** 取引量が少ない、あるいは買値（ビッド）と売値（アスク）のスプレッドが広い市場では、希望価格での取引相手が見つからず、より不利な価格で約定しやすくなります。 - **市場の急変時:** 重要な経済指標の発表時や、予期せぬニュースが出た直後など、価格が非常に速く大きく動く（ボラティリティが高い）状況下。 - **注文の集中:** 特定の価格水準（例: ストップロス注文が集まる水準）に注文が殺到した場合。 - **取引システムの遅延:** 利用している取引システムやネットワークの応答速度。 ### ポジティブとネガティブ スリッページは、必ずしも不利な方向（買い注文なら高く、売り注文なら安く約定）に発生するとは限りません。有利な方向（買い注文なら安く、売り注文なら高く約定）にずれることもあり、これを「ポジティブ・スリッページ」と呼ぶことがあります。不利な方向へのずれは「ネガティブ・スリッページ」です。 ### 取引への影響と対策 - **取引コスト:** ネガティブ・スリッページは、意図しなかった追加的な取引コストとなります。 - **対策:** - **指値注文の利用:** 約定価格を指定する指値注文を利用すれば、原理的に不利なスリッページは発生しません（ただし、希望価格で約定しない可能性はあります）。 - **流動性の高い市場・時間帯での取引:** できるだけ取引が活発な市場・時間帯を選びます。 - **重要指標発表時などを避ける:** 市場が荒れやすいタイミングでの取引を控えます。 - **取引システムの選択:** 約定力の高い（スリッページが発生しにくいとされる）ブローカーやシステムを選択します。 スリッページは、特に短期売買や自動売買において、その発生頻度や大きさが損益に影響を与える要因となります。