急峻なコンタンゴとは、先物価格が現物価格を大幅に上回る極端な順鞘状態です。現物の供給過剰、在庫の急増、需要の急減などが原因で発生します。保管コストを上回る価格差は、市場の歪みを示唆し、裁定取引の機会を提供することがあります。
スティープコンタンゴ(Steep Contango)は、先物価格が現物価格を大幅に上回り、フォワードカーブが急峻な右上がりを示す極端な市場状態です。通常の金利と保管コストでは説明できないほどの価格差が生じており、月間3-5%以上、年率換算で30%を超えるような急激な上昇カーブを描くことがあります。「急峻な順鞘」として、市場の異常事態を示す重要なシグナルとなります。
この現象は、現物の極端な供給過剰、需要の急減、保管施設の逼迫など、複合的な要因により発生します。2008年の金融危機時や2020年のコロナ禍など、市場に大きなショックが加わった際に観察されることが多い現象です。
理論値を超える価格差
キャリーコストだけでは説明できない大幅な価格差が発生し、時に現物価格の2倍以上の先物価格となることもあります。
保管能力の限界
物理的な保管スペースの不足が、価格構造を極端に歪める主要因となります。
現物の投げ売り
即座に処分しなければならない現物と、将来の需要回復を見込んだ先物の間で、極端な価格差が生じます。
一時的な現象
多くの場合、数週間から数カ月で解消される一時的な市場の歪みです。
スーパーキャリートレード:保管施設を確保できる業者にとって、異常に高い収益機会となります。
現物調達の好機:将来の需要を見込んで、極端に安い現物を調達する絶好の機会です。
市場ストレスの指標:スティープコンタンゴの発生は、市場の機能不全を示す警告シグナルとして活用されます。
異常収益の機会:適切なリスク管理の下で、通常では得られない高収益を実現できる可能性があります。
市場修正の予兆:極端な状態は持続不可能であり、修正局面での利益機会を示唆します。
構造的優位の活用:保管施設や輸送手段を持つ業者が、その優位性を最大限に活用できます。
保管リスク:物理的な商品の保管には、品質劣化、事故、盗難などのリスクが伴います。
資金繰りリスク:キャリートレードには大量の資金が必要で、資金調達コストが収益を圧迫する可能性があります。
急激な構造変化:需給の急変により、スティープコンタンゴが急速に解消し、損失を被る可能性があります。
ノーマルコンタンゴとの違い:ノーマルは理論的に妥当な水準ですが、スティープは異常な水準を示します。
スーパーコンタンゴとの違い:両者はほぼ同義ですが、スーパーコンタンゴはより極端な状態を強調する場合に使われます。
2020年4月20日、WTI原油5月限がマイナス37.63ドルまで暴落した際、6月限は20ドル台を維持し、史上最大のスティープコンタンゴが発生しました。クッシング(オクラホマ州)の貯蔵施設が満杯に近づき、現物を引き取れない投資家が投げ売りを余儀なくされました。一方、貯蔵能力を持つ石油会社は、この機会を利用して巨額の利益を上げました。この事例は、物理的制約がもたらす極端な価格歪みの教訓となっています。
期間構造
期間構造とは、異なる満期日を持つ先物契約の価格関係を示す概念です。近月物から遠月物までの価格がどのような形状を描くかにより、市場の需給状況や将来見通しを把握できます。コンタンゴやバックワーデーションといった価格パターンの基礎となる重要な概念です。
フォワード曲線
フォワードカーブとは、将来の異なる受渡期日における先物価格を時系列に並べた曲線です。横軸に期日、縦軸に価格をとることで、市場の将来価格予想を視覚的に把握できます。金利、保管コスト、需給見通しなどの要因により、右上がりや右下がりの形状を示します。
正鞘
コンタンゴとは、先物価格が現物価格を上回る市場状態です。通常、金利と保管コストの分だけ先物が高くなるため、多くの商品市場で観察される正常な状態です。在庫が潤沢で、将来の供給不安がない時に発生しやすく、キャリートレードの機会を提供します。
逆鞘
バックワーデーションとは、現物価格が先物価格を上回る逆転現象です。現物の需給が逼迫し、即座に商品を手に入れることに高い価値がある時に発生します。在庫不足、供給障害、緊急需要などが原因となり、商品市場特有の重要な価格シグナルとなります。
近月
近月物とは、最も期日が近い先物契約のことです。通常、最も取引量が多く流動性が高いため、現物市場の需給を最もよく反映します。実需筋の取引が集中し、価格発見機能の中心となる重要な限月で、ロールオーバーのタイミング判断にも不可欠です。
遠月
遠月物とは、受渡期日が遠い将来の先物契約です。近月物に比べて取引量は少ないものの、中長期的な需給見通しや市場期待を反映します。ヘッジ取引や長期ポジション構築に利用され、期間構造分析において重要な情報を提供します。
近接契約
近接契約とは、現在取引されている中で最も期日が近い、または2番目に近い先物契約を指します。高い流動性と狭いスプレッドが特徴で、短期的な価格変動を捉える取引に適しています。実需家のヘッジ取引が集中する限月でもあります。
正常なコンタンゴ
正常なコンタンゴとは、金利と保管コストを反映した理論通りの順鞘状態です。先物価格が満期までの持越費用分だけ現物価格を上回り、安定した右上がりのカーブを描きます。在庫が適正水準にあり、市場に大きな不安要因がない健全な状態を示します。