ティア2資本は、銀行の自己資本規制における補完的自己資本で、劣後債や劣後ローンが主要構成要素です。商品取引金融において、取引銀行の総合的な財務健全性を評価する際の重要指標となります。ティア1資本と合わせて総自己資本を構成し、バーゼルⅢでは総自己資本比率8%以上が求められています。
ティア2資本(Tier 2 Capital)は、バーゼル自己資本規制において、ティア1資本を補完する第二層の自己資本です。「補完的項目」とも呼ばれ、ティア1資本ほどの損失吸収力はないものの、銀行の財務基盤を強化する重要な要素として位置づけられています。商品取引業界では、取引銀行の信用リスク評価、プロジェクトファイナンスの組成能力評価、長期的な取引関係の安定性判断において重要な指標となります。破綻時には預金者に劣後するが、普通株主には優先する性質を持ち、ゴーイングコンサーン(継続企業)ベースでの損失吸収力は限定的です。
ティア2資本の主要構成要素は、劣後債務(期限付劣後債、永久劣後債)、劣後ローン、一般貸倒引当金(標準的手法採用行のみ、信用リスクアセットの1.25%まで)、土地再評価差額金の45%などです。劣後債務は、残存期間5年以内になると、1年あたり20%ずつ段階的に算入額が減少します(アモチゼーション)。ティア2資本の算入上限はティア1資本の額までとされていましたが、バーゼルⅢではこの制限が撤廃されました。総自己資本比率は「(ティア1資本+ティア2資本)÷リスクアセット×100」で計算されます。
商社が銀行と大規模な取引を行う際、相手行の総自己資本比率(ティア1+ティア2)を総合的に評価します。特に長期のプロジェクトファイナンスや大口の信用状取引では、ティア2資本も含めた資本の厚みが重要です。商品デリバティブの清算機関も、ティア2資本を活用して規制資本要件を満たしています。劣後債市場は、金融機関の資本調達手段として発達しており、商社の財務部門も投資対象として劣後債を評価することがあります。国際的な商品取引では、各国の規制によりティア2資本の定義が異なる場合があり、比較時には注意が必要です。
ティア2資本の質と量の両面から評価することが重要です。劣後債の残存期間構成を分析し、今後の資本減少リスクを把握します。ティア2資本がティア1資本に比して過大な場合、資本の質に懸念があると判断されることがあります。一般的に、ティア2資本はティア1資本の30-50%程度が適正とされています。劣後債のスプレッド(国債との金利差)は、市場の信用リスク評価を反映するため、重要な指標となります。また、ハイブリッド証券の条件(コール条項、ステップアップ条項など)も詳細に確認する必要があります。
ティア2資本の活用により、金融機関は資本コストを最適化できます。劣後債は普通株式よりも配当負担が軽く、既存株主の希薄化も避けられます。税務上、劣後債の利息は損金算入可能で、節税効果があります。投資家にとっては、普通社債より高い利回りが期待でき、株式より安定したインカムゲインが得られます。規制資本の積み増しにより、事業拡大の余地が生まれ、収益機会を逃しません。また、多様な資本調達手段を持つことで、市場環境に応じた柔軟な資本政策が可能となります。
ティア2資本には構造的な制約があります。ゴーイングコンサーンベースでの損失吸収力が限定的で、実際の破綻時まで元本削減されません。劣後債の満期到来時に借り換えができない再調達リスクがあります。金利上昇局面では、劣後債の調達コストが上昇し、収益を圧迫する可能性があります。バーゼル規制の変更により、ティア2資本の要件が厳格化されるリスクもあります。投資家視点では、劣後債はベイルイン(破綻処理時の債務削減)の対象となる可能性があり、元本毀損リスクがあります。格付けが投資不適格に低下すると、機関投資家の投資対象から外れる可能性もあります。
総自己資本比率は、ティア1とティア2の合計をリスクアセットで除した指標で、国際統一基準では8%以上が必要です。劣後債スプレッドは、信用リスクのマーケット評価を示す重要指標です。ベイルイン債は、破綻時に元本削減や株式転換が行われる条項付きの債券です。TLAC(総損失吸収力)は、G-SIBsに求められる追加的な損失吸収力要件で、ティア2資本も一部算入可能です。ハイブリッド証券は、負債と資本の中間的性質を持つ金融商品の総称です。資本再構成(リキャピタライゼーション)では、ティア2資本の最適化が重要なテーマとなります。
資本要件
資本要件は、金融機関が事業を営むために最低限必要とされる資本の水準を定めた規制です。バーゼル規制に基づき、リスク資産の規模に応じて必要な資本を算出し、金融機関の健全性を確保します。商品取引では、金融機関の信用力評価と取引リスク管理において重要な指標です。
資本バッファー
資本バッファーは、金融機関が規制要件を上回る資本を保有することで、経済的ショックや市場変動に対する抵抗力を高める制度です。バーゼルIII規制に基づき、金融システムの安定性を確保します。商品取引では、金融機関の健全性評価と取引リスク管理において重要な概念です。
流動性カバレッジ比率
LCR(流動性カバレッジ比率)は、金融機関が30日間のストレス状況下で必要となる資金を、高品質な流動資産でカバーできるかを示す指標です。バーゼルIII規制に基づき、金融機関の流動性リスク管理を強化します。商品取引では、金融機関の健全性評価と取引リスク管理において重要な指標です。
リスク加重資産
銀行の資産をリスク度合いに応じて重み付けした総額。資本充足性規制の基準となり、リスクの高い資産ほど多くの資本が必要となる。銀行の健全性を評価する重要な指標。
レバレッジ比率
レバレッジ比率は、総資産に対する負債の割合を示す財務指標で、企業の財務リスクを測定します。商品取引企業では、大規模な在庫保有や先物ポジションによりレバレッジが高くなりやすく、一般的に2-4倍が適正水準とされます。市況変動時の財務安定性を評価する重要指標として、金融機関や格付機関が重視しています。
Tier1資本
ティア1資本は、銀行の自己資本規制における中核的自己資本で、普通株式と内部留保を主要構成要素とします。商品取引の金融取引やデリバティブ取引において、カウンターパーティーリスク評価の重要指標となり、取引限度額の設定に影響します。バーゼルⅢでは最低6%の比率が求められています。