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オプションのスプレッド取引手法の一つで、同じ期日で権利行使価格の異なるコールまたはプットを組み合わせる。
バーティカル・スプレッド(Vertical Spread)とは、オプションのスプレッド取引手法の一つで、同じ期日で権利行使価格の異なるコールまたはプットを組み合わせる戦略です。「バーティカル」の名前は、オプション価格表示画面で権利行使価格が縦(vertical)に並んでいることに由来します。一方のオプションを買い、他方を売ることで、方向性のある相場観を表現しながら、リスクとリターンの両方を限定する特徴があります。ブル・スプレッドとベア・スプレッドの2つの基本形があります。
バーティカル・スプレッドは、1970年代のオプション市場創設期から存在する古典的な戦略の一つです。1973年のシカゴ・オプション取引所(CBOE)設立当初から、複数のオプションを組み合わせた取引として実践されていました。
当初は専門的なトレーダーが主に使用していましたが、1980年代以降の個人投資家のオプション取引参加拡大とともに、リスク限定型の方向性戦略として広く普及しました。リスク管理を重視する機関投資家にも採用され、現在では最も基本的なオプション戦略の一つとなっています。
ブル・コール・スプレッドは、低い権利行使価格のコールを買い、高い権利行使価格のコールを売る戦略です。上昇相場で利益を得ながら、コストを削減し、リスクを限定します。
ブル・プット・スプレッドは、低い権利行使価格のプットを買い、高い権利行使価格のプットを売る戦略です。プレミアム収入を得ながら、上昇相場での利益を狙います。
損益構造では、最大利益は「権利行使価格の差 - 支払プレミアム純額」となり、株価が高い権利行使価格以上で実現されます。最大損失は支払プレミアム純額に限定されます。
ベア・コール・スプレッドは、低い権利行使価格のコールを売り、高い権利行使価格のコールを買う戦略です。下落相場でプレミアム収入を得ながら、リスクを限定します。
ベア・プット・スプレッドは、高い権利行使価格のプットを買い、低い権利行使価格のプットを売る戦略です。下落相場で利益を得ながら、コストを削減します。
損益構造では、最大利益は「権利行使価格の差 - 支払プレミアム純額」となり、株価が低い権利行使価格以下で実現されます。
ATM中心の設定では、現在株価を中心として上下に権利行使価格を設定します。デルタが0.5付近となり、方向性に対する感応度が適度になります。
OTM中心の設定では、より安いコストで戦略を構築できますが、利益を得るためにはより大きな価格変動が必要になります。
ITM中心の設定では、高い成功確率を得られますが、コストも高くなります。
価格間隔により、最大利益と最大損失の比率が決まります。間隔が広いほど利益ポテンシャルは大きくなりますが、コストも増加します。
時間減衰の影響は複雑です。買いオプションには不利、売りオプションには有利に働くため、全体への影響は株価位置により異なります。
ITM側への移動では、買いオプションの時間価値減少が小さく、売りオプションの時間価値減少が大きいため、全体としてプラスに働きます。
OTM側への移動では逆の効果が生じ、時間減衰が戦略に不利に働く場合があります。
インプライド・ボラティリティの変化が戦略に影響を与えます。一般的に、ボラティリティ上昇は買いオプションに有利、売りオプションに不利に働きます。
ボラティリティ・スキューにより、異なる権利行使価格でボラティリティが異なる場合、戦略の価値に複雑な影響を与えます。
ボラティリティ・クラッシュでは、イベント通過後のボラティリティ急落により、戦略全体の価値が変動します。
同時執行が理想的で、レッグ・リスクを最小化します。流動性の高い銘柄では、スプレッド注文として一括執行が可能です。
段階的執行では、まず流動性の高いオプションから執行し、その後もう一方を執行します。市場インパクトを考慮した執行順序が重要です。
価格監視では、各レッグの価格変動を監視し、理論的なスプレッド価格からの乖離を確認します。
目標利益は、通常は最大利益の50-75%程度に設定されます。残り期間が短くなると、わずかな逆行で利益が消失するリスクがあります。
損切り水準は、投資額の50%程度が一般的です。時間価値減衰により損失が拡大する前の対処が重要です。
満期保有は、利益確定の機会を逸した場合の最後の手段ですが、権利行使・割当てのリスクを考慮する必要があります。
ポジション・サイジングでは、最大損失額を投資資金の一定割合以下に制限します。通常は5-10%程度が適切とされます。
相関リスクでは、複数の銘柄で同様の戦略を実行する場合、市場全体の動きによる相関リスクを考慮します。
流動性リスクでは、各オプションの出来高とオープン・インタレストを確認し、決済時の流動性を事前に評価します。
スプレッド取引として、両レッグの損益を合算して課税所得を計算します。同日決済の場合は比較的単純ですが、異日決済では複雑な処理が必要になります。
60/40ルールでは、米国の先物・オプション取引において、60%を長期キャピタルゲイン、40%を短期キャピタルゲインとして課税する特別ルールがあります。
レシオ・スプレッドでは、売買比率を1:1以外に設定し、より複雑な損益構造を作ります。
ダイアゴナル・スプレッドでは、権利行使価格だけでなく満期も異なるオプションを組み合わせます。
コンドル・スプレッドでは、2つのバーティカル・スプレッドを組み合わせて、より広い利益ゾーンを作ります。
トレンド相場では、方向性が明確な場合にバーティカル・スプレッドが効果的です。強いトレンドではアウトライト・ポジションの方が有利な場合もあります。
レンジ相場では、レンジの上限・下限付近でのバーティカル・スプレッドが効果的です。
ボラティリティ環境により、戦略の選択と権利行使価格の設定を調整します。
バーティカル・スプレッドは、方向性のある相場観を持ちながらリスクを管理したい投資家にとって、最も実用的なオプション戦略の一つです。
カラー
オプション戦略の一つで、原資産(株式、コモディティ等)の保有と同時に、その資産に対するプットオプションを買い、コールオプションを売る取引を組み合わせる戦略です。価格下落リスクを限定しつつ、プレミアムコストを抑制します。
ストラドル
同一の原資産、同一の権利行使価格、同一の満期日を持つコールオプションとプットオプションを同時に買う(ロングストラドル)または売る(ショートストラドル)オプション戦略です。主に価格の大きな変動(または不変)を予想する場合に用いられます。
プロテクティブプット
保有している原資産(株式、コモディティ等)に対して、その資産を対象とするプットオプションを買う戦略です。原資産価格の下落に対する保険(プロテクション)のような役割を果たし、損失を限定します。