Basis Spread

### 概要 ベーシス・スプレッド（Basis Spread）とは、主に金利ベーシススワップ（異なる二つの変動金利指標を交換するスワップ）において、一方の変動金利指標に加算または減算される固定のスプレッド（利鞘）のことです。このスプレッドは、二つの変動金利指標間の市場における評価の差を反映しており、契約締結時点においてスワップの価値がゼロになるように決定されます。 ### なぜ発生するか？ 同一通貨の変動金利指標であっても、市場では完全に等価とは見なされないことがあります。その評価差がベーシス・スプレッドとして現れます。主な要因としては以下が考えられます。 - 信用リスクの差: 指標の算出基礎となる金融機関群の平均的な信用力の違い（例: かつてのLIBORとOISの差）。 - 流動性の差: 各指標に関連する市場（先物市場など）の流動性の違い。 - 指標の特性差: 金利の参照期間（例: 3ヶ月物 vs 6ヶ月物）、リセット頻度、算出方法の違い。 - 需給関係: 特定の指標に対するヘッジ需要や資金調達ニーズの偏り。 例えば、LIBOR（銀行間調達金利）とSOFR（担保付翌日物調達金利）の間には、信用リスクプレミアムの差などからベーシス・スプレッドが存在します。 ### 取引と表示 金利ベーシススワップ取引では、「変動金利Aを受け取り、変動金利B + 固定ベーシス・スプレッドを支払う」（またはその逆）といった形で契約が結ばれます。ベーシス・スプレッドは通常、ベーシスポイント（bp, 1bp = 0.01%）単位で提示されます。このスプレッドの水準は市場の状況によって変動します。 ### 市場での意味 ベーシス・スプレッドの変動は、市場参加者が二つの指標間の相対的な価値やリスクをどのように評価しているかを示す情報となります。 - 相対的な資金調達コスト: 異なる金利指標に基づく資金調達コストの差を示唆します。 - 市場ストレスの指標: 金融市場のストレスが高まると、特定のベーシス・スプレッドが広がることがあります（例: LIBOR-OISスプレッド）。 - ベーシスリスク: 異なる金利指標に連動する資産と負債を持つ場合に生じるベーシスリスクの程度を示唆します。 ベーシス・スプレッドの理解は、金利デリバティブ市場の分析や、金利リスク管理において考慮される要素です。