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精製過程の最も重い留分から生産される石油製品。船舶燃料(バンカー油)として広く使用され、発電所や工業用ボイラーの燃料としても重要。
基本概念
重油は原油を精製する過程で、ガソリン、灯油、軽油などの軽質留分を取り出した後に残る重質な石油製品です。常温では高粘度で、加熱により流動性を確保する必要があります。沸点350度以上の炭化水素を主成分とし、硫黄分2-3.5%、金属分(バナジウム、ニッケル)を含有します。世界の石油製品需要の約7%を占めています。
種類と規格
A重油(動粘度20cSt以下、硫黄分0.5-2%)は軽油に近い性質で取り扱いが容易です。B重油(動粘度50cSt程度)は日本では限定的使用です。C重油(動粘度100cSt以上、硫黄分2-3.5%)は最も重質で、加熱設備が必要です。ISO8217規格により、船舶用燃料はRMG380、RMK700などに分類されます。
用途と需要
船舶燃料(バンカー油)が需要の約50%を占め、大型貨物船- タンカー- コンテナ船で年間約2.5億トンが消費されます。火力発電用が約30%で、中東- アジア- アフリカで重要な電源です。産業用(製鉄、セメント、製紙、化学)が約20%を占めます。季節変動があり、冬季の暖房需要と夏季の発電需要でピークを迎えます。
市場と価格
シンガポール380cSt高硫黄重油価格が国際指標です。主要補給港はシンガポール(年間5,000万トン)、ロッテルダム(3,000万トン)、フジャイラ(2,500万トン)です。価格は原油価格の60-80%程度で推移し、軽重格差(軽質油との価格差)により変動します。低硫黄重油(VLSFO)は高硫黄重油より50-100ドル/トン高く取引されます。
環境と規制
IMO2020規制により船舶燃料の硫黄分上限が3.5%から0.5%に引き下げられました。EU- 米国- 中国沿岸部ではECA規制により0.1%の厳格な規制が適用されます。対応策として、低硫黄重油への転換、スクラバー(排ガス洗浄装置)設置、LNG- メタノール等の代替燃料への転換が進んでいます。
将来展望
2050年カーボンニュートラルに向けて、アンモニア- 水素- メタノールなどゼロエミッション燃料への転換が検討されています。IMOは2050年までにGHG排出量50%削減目標を設定しています。重油需要は2030年までに年率2-3%減少が予想されますが、価格競争力から一定の需要は維持される見込みです。精製設備の高度化により付加価値向上が図られています。
バンカーオイル, 残渣油
WTI原油
WTI(West Texas Intermediate)は米国テキサス州西部で産出される軽質スイート原油です。API比重約40度、硫黄含有量約0.24%という優れた品質を持ち、ニューヨーク商品取引所で最も活発に取引される原油先物の基準となっています。北米原油市場の価格指標として機能します。
クラックスプレッド
クラックスプレッドは、原油価格と石油製品価格の差額で、製油所の精製マージンを表す指標です。エネルギー市場では、3-2-1や2-1-1などの比率で原油と製品の価格差を計算し、精製事業の収益性評価とリスクヘッジに活用される重要な概念です。
エネルギー資源
エネルギー資源は経済活動と生活を支える動力源となる資源の総称です。化石燃料(石油・天然ガス・石炭)が一次エネルギーの約80%を占めますが、気候変動対策により再生可能エネルギーへの転換が進んでいます。エネルギー安全保障と脱炭素化の両立が世界的課題となっています。
API比重
API比重は米国石油協会が定めた原油の密度を表す指標です。水の密度を基準として原油の軽重を数値化したもので、数値が高いほど軽質で、低いほど重質となります。この指標により原油の品質評価や取引価格の決定が行われています。
サワー原油
サワー原油は硫黄含有量が0.5%を超える高硫黄原油です。精製時に高度な脱硫処理が必要で、硫化水素による設備腐食のリスクも高くなります。処理コストは増加しますが、世界の原油埋蔵量の多くを占める重要な資源であり、スイート原油より安価で取引されるため、高度化精製所では経済的メリットがあります。
ジェット燃料/灯油
ジェット燃料と灯油は、原油精製の中間留分から生産される密接に関連した石油製品です。化学的にはほぼ同一の炭素数9-16の炭化水素混合物で、沸点範囲は150-300℃です。ジェット燃料は航空機用に厳格な品質管理が行われ、灯油は家庭用暖房や照明用として使用されます。両者は季節需要の補完関係にあります。
シェールオイル
シェールオイルは頁岩(シェール)層に含まれる非在来型原油です。水平掘削と水圧破砕技術により商業生産が可能となり、2010年代の米国エネルギー革命を主導しました。API比重35-50度の軽質原油が多く、低硫黄で高品質です。米国を世界最大の原油生産国に押し上げ、世界のエネルギー地図を塗り替えました。