現金決済型は、先物やオプション契約の満期時に現物の受け渡しを行わず、価格差のみを現金で決済する取引方式です。株価指数先物、天候デリバティブ、一部の商品先物などで採用され、物理的な受け渡しが困難または非効率な商品で利用されます。決済の簡便性と取引の効率性から、金融デリバティブ市場で広く普及している決済方法です。
現金決済型(Non-Deliverable、キャッシュセトルメント)は、デリバティブ取引において、満期時に原資産の現物を受け渡す代わりに、契約価格と最終決済価格の差額を現金で精算する仕組みです。「差金決済」「金銭決済」とも呼ばれ、現代の金融デリバティブ市場の中核的な決済方式となっています。
この方式は、物理的な受け渡しが不可能または非実用的な商品(株価指数など)や、受け渡しコストが高い商品で採用されています。投資家は現物を扱う必要がなく、純粋に価格変動から損益を実現できるため、投機やヘッジ取引に適しています。
満期日に、取引所または指定された価格決定機関が最終決済価格を算出します。この価格は、原資産の市場価格を基に、事前に定められた方法で計算されます。
決済額 = (最終決済価格 - 契約価格)× 契約数量 × 契約乗数
買い手は価格上昇で利益、価格下落で損失となります。売り手はその逆となります。
清算機関を通じて、利益を得た側に現金が支払われ、損失を被った側から現金が徴収されます。通常、満期日の翌営業日に決済が完了します。
日経225、S&P500、FTSEなどの株価指数は、構成銘柄すべてを物理的に受け渡すことが不可能なため、現金決済が標準です。
ユーロドル先物、短期金利先物など、概念的な金利を対象とする商品は現金決済で処理されます。
気温、降水量、風速などを対象とする商品は、物理的な受け渡しが不可能なため、観測値と基準値の差を現金で決済します。
電力先物、排出権先物など、物理的な受け渡しが困難または標準化が難しい商品で採用されています。
ビットコイン先物の一部は、保管やセキュリティの観点から現金決済を採用しています。
決済の簡便性:現物の保管、輸送、品質検査などが不要で、決済プロセスが大幅に簡素化されます。事務コストと時間を削減できます。
市場参加の容易性:現物を扱う設備や専門知識が不要なため、金融投資家が参加しやすくなります。これにより市場の流動性が向上します。
リスクの限定:現物の品質リスクや受渡リスクがなく、純粋に価格リスクのみに集中できます。カウンターパーティリスクも清算機関により軽減されます。
クロスボーダー取引の促進:現物の国際輸送や通関手続きが不要なため、国境を越えた取引が容易になります。
現物の受け渡しがないため、先物価格と現物価格の収束メカニズムが弱く、価格の乖離が生じやすくなります。
最終決済価格の算出方法によっては、価格操作の対象となる可能性があります。特に、流動性の低い原資産では注意が必要です。
現物を扱う実需筋にとって、現金決済では完全なヘッジにならない場合があります。ベーシスリスクが残存します。
一部の法域では、現金決済型商品が賭博とみなされる可能性があり、規制上の制約を受けることがあります。
単純平均法:満期日の特定時間帯の価格を平均して算出します。瞬間的な価格変動の影響を軽減できます。
加重平均法:取引量で加重平均した価格を使用します。市場の実勢をより正確に反映します。
特別清算値(SQ):日本の株価指数先物で使用される方法で、構成銘柄の始値を基に算出されます。
公式価格の採用:取引所の終値や、公的機関が発表する価格を採用する場合もあります。
株式ポートフォリオ全体のリスクを、株価指数先物の売りでヘッジします。個別銘柄の売買なしに、市場リスクを管理できます。
現物と先物の価格差を利用した裁定取引で、現金決済により取引を完結させます。
純粋に価格の方向性に賭ける投機取引で、現物を扱う必要がないため参入障壁が低くなります。
リアルタイム決済:従来のT+1決済から、即時決済への移行が検討されています。
現物決済は実際の商品を受け渡しますが、現金決済は差額のみを精算します。コストと複雑性が大きく異なります。
CFDは常に現金決済ですが、現金決済型は取引所取引を含むより広い概念です。CFDは現金決済型商品の一種といえます。
代替可能性
ある商品のどの単位も品質が同じで、区別なく交換可能であるという性質のことです。「同質性」とも呼ばれます。この性質が、取引所での効率的な標準化取引を可能にする基盤となります。
コントラクト
コントラクトは、先物取引における標準化された取引単位で、1枚の契約が表す商品の数量を指します。日経225先物なら指数×1,000円、原油先物なら1,000バレルなど、商品ごとに定められた単位で取引され、ポジション管理や損益計算の基準となる重要な概念です。
売付取引
売付取引は、先物やオプション市場において売り注文を出して約定させる取引行為です。価格の下落を期待する場合や、買いポジションを決済する場合に行われます。新規に売る場合は「新規売り」、買いポジションを決済する場合は「転売」と呼ばれ、現物を持たずに売りから入れる点が先物取引の大きな特徴です。
転売
転売は、買いポジション(ロングポジション)を決済するために行う売り注文のことです。買い建てした先物契約を売却することで、ポジションをクローズし、損益を確定させます。利益確定、損切り、満期前の清算など、取引を終了させる基本的な決済行為です。
買付取引
買付取引は、先物やオプション市場において買い注文を出して約定させる取引行為です。価格の上昇を期待する場合や、売りポジションを決済する場合に行われます。新規に買う場合は「新規買い」、売りポジションを決済する場合は「買戻し」と呼ばれ、取引の基本的な行為の一つです。
中心限月
中心限月は、先物市場において最も活発に取引されている限月のことです。通常、期近限月や第一限月がこれに該当し、流動性が高く、売買スプレッドが狭いため、多くのトレーダーが取引の中心とする限月です。市場の価格発見機能が最も効果的に働く限月でもあります。
買戻し
買戻しは、売りポジション(ショートポジション)を決済するために行う買い注文のことです。空売りした先物契約を買い戻すことで、ポジションをクローズし、損益を確定させます。利益確定、損切り、または満期前の清算など、さまざまな理由で実行される基本的な決済行為です。
手仕舞い
手仕舞いは、保有している先物やオプションのポジションを反対売買により決済する行為です。買いポジションは売りで、売りポジションは買いで決済します。利益確定や損切り、満期前の清算など、さまざまな理由で行われる取引の終了プロセスで、ポジション管理の最も重要な判断の一つです。