Real Price

基本概念

実質価格（Real Price）は、インフレーションの影響を除去し、基準年の購買力で表現した価格です。消費者物価指数（CPI）や生産者物価指数（PPI）を用いて名目価格を調整することで、異なる時点の価格を同じ基準で比較可能にします。商品の真の価値変動を把握し、長期的な価格トレンドを分析するために不可欠な概念です。

この概念の重要性は、1970年代の高インフレ期に広く認識されました。石油危機により名目価格が急騰する中、実質価格で見ると異なる姿が見えることが明らかになりました。現代では、中央銀行の政策決定、長期投資判断、学術研究などで、実質価格分析が標準的に使用されています。

主な特徴

購買力の一定化
異なる時点の価格を、同じ購買力基準で表現し、真の価値変動を明らかにします。

長期トレンドの把握
インフレの影響を除去することで、商品の本質的な需給変化を識別できます。

基準年の選択
特定の年を基準（通常100）として、他の年の価格を指数化して表現します。

デフレーターの使用
CPIやGDPデフレーターなど、適切な物価指数を選択して調整を行います。

実務での活用

商品市場の長期分析では、実質価格が不可欠です。例えば、金価格の長期チャートを実質価格で見ると、1980年のピークが2011年のピークを上回っていたことが分かります。これは、インフレ調整後の実質的な価値では、1980年の金バブルの方が大きかったことを示しています。

投資判断でも重要です。商品への長期投資を検討する際、名目リターンではなく、インフレ調整後の実質リターンで評価する必要があります。

メリット- 効果

真の価値変動の把握：インフレの影響を除去し、商品の本質的な価値変動を理解できます。

適切な投資判断：実質リターンに基づいて、投資の真の収益性を評価できます。

政策効果の評価：政府の価格政策や補助金の実質的な効果を測定できます。

注意点- リスク

デフレーターの選択：使用する物価指数により、実質価格が変わる可能性があります。

地域差の無視：全国平均の物価指数を使用すると、地域差が反映されません。

品質変化の問題：商品の品質向上を価格指数が十分に反映していない可能性があります。

関連用語との違い

名目価格との違い：名目価格は額面通りの価格ですが、実質価格はインフレ調整済みです。

固定価格との違い：固定価格は契約上の概念ですが、実質価格は分析上の概念です。

実務ポイント- 事例

米国の住宅価格を実質価格で分析すると、興味深い事実が判明します。2006年のサブプライム- バブルのピークは、名目価格では史上最高でしたが、実質価格で見ると1890年代や1970年代のピークと同程度でした。また、2020年以降の住宅価格急騰も、高インフレを考慮すると、実質価格での上昇率は名目ほど極端ではありません。このように、実質価格分析は、市場の過熱度を適切に評価する上で重要なツールとなります。