Delivery Order

基本概念

Delivery Order（配達指図書、D/O）は、運送人またはその代理店が、ターミナルオペレーターや倉庫業者に対して貨物の引渡しを指示する書類です。B/L原本と引き換えに発行され、実際の貨物受取の最終段階で使用されます。港湾や空港での貨物引取プロセスにおいて、B/Lと現物を結びつける重要な役割を果たします。

発行プロセス

荷受人または通関業者がB/L原本を船会社代理店に提示すると、代理店は運賃やサーチャージの支払いを確認後、D/Oを発行します。このD/Oをコンテナヤード（CY）やコンテナフレートステーション（CFS）に提示することで、初めて貨物の引取りが可能となります。一連のプロセスは「B/Lの現金化」とも呼ばれ、書類から実物への転換点となります。

種類と形式

Full D/O：B/L全量に対して発行される標準的なD/Oです。1つのB/Lに対して1つのD/Oが発行されます。

Partial D/O：B/Lの一部数量に対して発行される分割D/Oです。大量貨物を複数回に分けて引き取る場合に使用されます。

Electronic D/O：EDIやウェブシステムを通じて発行される電子D/Oです。ペーパーレス化により処理時間が大幅に短縮されています。

Bank D/O：L/C決済において、銀行がB/Lを保持したまま、貨物の引渡しを指示する特殊なD/Oです。

実務上の重要性

D/Oは貨物引取りの「鍵」として機能します。正当なD/O保持者のみが貨物を受け取れるため、盗難や不正引取りを防止する重要なセキュリティ機能を持ちます。また、複数の荷受人がいる混載貨物では、それぞれに対して個別のD/Oを発行することで、円滑な貨物の仕分けと引渡しが可能となります。

費用と期限

D/O発行時には、海上運賃の他に、THC（ターミナルハンドリングチャージ）、DOC（書類作成料）、CFSチャージなどの現地費用の支払いが必要です。また、Free Time（無料保管期間）を超過した場合は、デマレージ（超過保管料）やディテンション（コンテナ延滞料）が発生するため、迅速な処理が求められます。

トラブルと対策

D/Oの遅延や紛失は深刻な問題を引き起こします。特に生鮮品や緊急貨物では、数時間の遅れが大きな損失につながります。このため、多くの港湾では事前申請システムやファストトラック制度を導入し、D/O処理の迅速化を図っています。

デジタル化の現状

主要港湾では、D/Oの電子化が急速に進展しています。シンガポールのPORTNETやオランダのPORTBASEなど、国家レベルでの統合プラットフォームでは、D/Oの申請から発行、貨物引取りまでの全プロセスが電子化されています。日本でも、CyberPortやNACCSとの連携により、D/O処理の効率化が進められています。

まとめ

Delivery Orderは、国際物流の最終段階を円滑に進めるための重要な書類です。効率的なD/O管理は、サプライチェーン全体の最適化に直接貢献します。