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DVP決済(Delivery Versus Payment)は、証券の引渡しと資金の支払いを同時に行う決済方式です。一方の履行なしに他方が実行されないため、決済リスクを完全に排除できます。商品取引では現物受渡しとその対価の同時履行により、取引の安全性を確保します。
DVP決済(Delivery Versus Payment)は、証券の引渡しと代金の支払いを同時に行う決済方式であり、決済リスクを最小化する最も重要な仕組みの一つです。売り手が証券を引き渡すと同時に、買い手から代金を受け取ることで、片方だけが履行して損失を被る「元本リスク」を完全に排除します。国際的にはBIS(国際決済銀行)により推奨され、各国の証券決済システムの標準となっています。商品取引市場においても、現物商品の引渡しと代金決済の同時履行により、取引の安全性を確保する重要な仕組みとして機能しています。
DVP決済の実現方式には3つのモデルがあります。モデル1は証券- 資金ともにグロス決済で即時に決済する方式で、最もリスクが低いが流動性負担が大きくなります。モデル2は証券をグロス決済、資金をネット決済する方式で、資金効率が改善されます。モデル3は証券- 資金ともにネット決済する方式で、最も効率的ですが、ネッティング期間中のリスクが存在します。日本では、国債決済にモデル1、株式決済にモデル3が採用されています。
商品取引市場では、倉庫証券(ワラント)や船荷証券などの権利証券と代金の同時決済にDVP原則が適用されます。特に貴金属取引では、現物の所有権移転と代金決済の同時履行が重要です。電子化された倉庫証券システムにより、瞬時の権利移転が可能となり、DVP決済の実効性が高まっています。農産物や エネルギー商品でも、品質検査証明書と代金の同時交換により、取引の安全性を確保しています。
技術的な実装では、中央銀行の即時グロス決済システム(RTGS)と証券決済システムの連携が不可欠です。両システム間での情報交換とタイミング調整により、真の同時決済を実現します。分散台帳上で証券トークンと決済トークンを原子的に交換することで、仲介者なしでDVP決済を実現する可能性があります。
国際取引においては、時差や休日の違い、通貨の違いなどがDVP決済の実現を複雑にします。CLS(Continuous Linked Settlement)銀行のような専門機関により、多通貨間のPvP(Payment versus Payment)決済が提供されています。商品取引では、国際的な商品取引所間の連携により、クロスボーダーDVP決済の仕組みが構築されつつあります。
規制面では、証券決済の国際基準であるCPSS-IOSCOの勧告により、DVP決済の採用が強く推奨されています。システミックに重要な決済システムでは、DVP決済の実装が事実上の必須要件となっています。今後は、デジタル通貨の普及により、24時間365日のリアルタイムDVP決済が可能になると期待されています。
グロス決済
グロス決済は、取引を個別に一件ずつ総額で決済する方式で、ネッティングを行わない決済方法です。各取引の決済リスクを完全に排除できる利点がありますが、必要資金量が大きくなります。即時グロス決済(RTGS)として大口資金決済に広く採用されています。
クローズアウトネッティング
クローズアウトネッティングは、取引相手の破綻時に全ての未決済取引を一括して清算し、単一の債権債務に置き換える仕組みです。エクスポージャーを大幅に削減し、破綻処理を迅速化します。ISDAマスター契約等で標準化され、市場の安定性を支えています。
取引決済(受渡し)
取引決済は、約定した取引を最終的に完了させる重要なプロセスです。買い手が代金を支払い、売り手が有価証券や商品を引き渡すことで契約義務を履行します。決済の確実性とリスク管理は、金融市場の安定性を支える基盤となります。
ネット決済
ネット決済は、複数の取引から生じる債権債務を相殺し、その差額のみを決済する効率的な方式です。決済に必要な資金や証券の量を大幅に削減し、決済リスクも低減します。商品取引では、日中の取引を集約して一括決済することで、業務効率を向上させます。
多角的ネッティング
多角的ネッティングは、3者以上の参加者間で債権債務を相殺し、決済額を圧縮する仕組みです。中央清算機関が中心となって実施し、決済リスクとシステミックリスクを大幅に削減します。商品取引では、市場全体の効率性と安定性向上に重要な役割を果たします。
LCH.Clearnet
LCH.Clearnetは、欧州最大級の多市場対応清算機関で、金利スワップ、レポ、現物株式、商品デリバティブ等を扱います。ロンドンのLCHとパリのClearnet統合により誕生し、グローバルな清算サービスを提供。商品取引では特にエネルギー・金属市場で重要な役割を果たしています。
T+決済
T+決済は、約定日(T)から決済日までの標準的な期間を示す決済サイクルです。T+1は翌営業日、T+2は2営業日後の決済を意味します。商品取引では商品や市場により異なる決済期間が設定され、リスク管理と資金効率のバランスを考慮して決定されます。