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グロス決済は、取引を個別に一件ずつ総額で決済する方式で、ネッティングを行わない決済方法です。各取引の決済リスクを完全に排除できる利点がありますが、必要資金量が大きくなります。即時グロス決済(RTGS)として大口資金決済に広く採用されています。
グロス決済(Gross Settlement)は、個々の取引を相殺することなく、一つ一つ個別に決済する方式であり、決済の確実性と透明性を最大化する最も基本的な決済方法です。各取引の全額を独立して処理するため、他の取引の影響を受けることなく、確実な資金移動と権利移転が実現されます。特に、即時グロス決済(RTGS: Real-Time Gross Settlement)システムは、中央銀行が運営する大口資金決済の基盤として、金融システムの安定性を支える重要なインフラとなっています。商品取引市場においても、高額取引や緊急性の高い取引では、グロス決済により確実な決済を保証しています。
グロス決済の最大の特徴は、決済の即時性とファイナリティです。RTGSシステムでは、決済指図が処理された瞬間に、取消不能で無条件の最終的な決済が完了します。これにより、決済リスクが完全に排除され、受取側は即座に資金を利用できます。日中を通じて継続的に決済が行われるため、資金の滞留時間が最小化されます。一方で、各取引の全額を個別に決済するため、大量の流動性が必要となる課題があります。
商品取引における適用場面として、大口の現物取引では、数億円規模の決済を確実に行うためグロス決済が選択されます。緊急の商品調達や、市場価格の急変時の取引では、即時決済により価格変動リスクを回避します。国際商品取引では、時差を考慮してRTGSシステムの稼働時間内に確実に決済を完了させます。清算機関への証拠金支払いも、リスク管理の観点からグロス決済で行われることが多くあります。
流動性管理の課題と対策として、グロス決済には十分な決済用資金の確保が必要です。日中流動性ファシリティにより、中央銀行から日中信用の供与を受けることができます。流動性節約機能(LSM)により、対向する支払指図を同時処理して必要流動性を削減します。決済順序の最適化アルゴリズムにより、限られた流動性で最大限の決済を実現します。グリッドロック解消メカニズムにより、相互依存による決済の停滞を防止します。
ネット決済との比較において、グロス決済は決済リスクがゼロである一方、流動性負担が大きくなります。処理コストは取引件数に比例して増加しますが、決済の確実性は最高レベルです。システミックリスクの観点では、個別決済により連鎖破綻のリスクを遮断できます。規制上も、システム上重要な決済にはグロス決済が推奨されています。実務では、取引の性質に応じてグロス決済とネット決済を使い分けることが一般的です。
主要なRTGSシステムとして、日本銀行の日銀ネット、米国連邦準備のFedwire、欧州中央銀行のTARGET2、英国のCHAPSなどがあります。これらのシステムは相互に接続され、国際的な大口資金決済ネットワークを形成しています。各システムは高度なセキュリティと可用性を備え、金融市場の基盤インフラとして機能しています。
技術革新による進化として、分散台帳技術により24時間365日のRTGS決済が技術的に可能になりつつあります。ISO 20022などの国際標準により、異なるRTGSシステム間の相互運用性が向上しています。人工知能による決済予測と流動性最適化により、効率性が大幅に改善されています。量子暗号技術により、決済情報のセキュリティが更に強化される見込みです。今後は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入により、リテール取引でもグロス決済が一般化する可能性があります。
クローズアウトネッティング
クローズアウトネッティングは、取引相手の破綻時に全ての未決済取引を一括して清算し、単一の債権債務に置き換える仕組みです。エクスポージャーを大幅に削減し、破綻処理を迅速化します。ISDAマスター契約等で標準化され、市場の安定性を支えています。
取引決済(受渡し)
取引決済は、約定した取引を最終的に完了させる重要なプロセスです。買い手が代金を支払い、売り手が有価証券や商品を引き渡すことで契約義務を履行します。決済の確実性とリスク管理は、金融市場の安定性を支える基盤となります。
ネット決済
ネット決済は、複数の取引から生じる債権債務を相殺し、その差額のみを決済する効率的な方式です。決済に必要な資金や証券の量を大幅に削減し、決済リスクも低減します。商品取引では、日中の取引を集約して一括決済することで、業務効率を向上させます。
DVP決済
DVP決済(Delivery Versus Payment)は、証券の引渡しと資金の支払いを同時に行う決済方式です。一方の履行なしに他方が実行されないため、決済リスクを完全に排除できます。商品取引では現物受渡しとその対価の同時履行により、取引の安全性を確保します。
多角的ネッティング
多角的ネッティングは、3者以上の参加者間で債権債務を相殺し、決済額を圧縮する仕組みです。中央清算機関が中心となって実施し、決済リスクとシステミックリスクを大幅に削減します。商品取引では、市場全体の効率性と安定性向上に重要な役割を果たします。
LCH.Clearnet
LCH.Clearnetは、欧州最大級の多市場対応清算機関で、金利スワップ、レポ、現物株式、商品デリバティブ等を扱います。ロンドンのLCHとパリのClearnet統合により誕生し、グローバルな清算サービスを提供。商品取引では特にエネルギー・金属市場で重要な役割を果たしています。
T+決済
T+決済は、約定日(T)から決済日までの標準的な期間を示す決済サイクルです。T+1は翌営業日、T+2は2営業日後の決済を意味します。商品取引では商品や市場により異なる決済期間が設定され、リスク管理と資金効率のバランスを考慮して決定されます。