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中央清算機関(CCP)は、取引の売り手と買い手の間に入り、それぞれの相手方となって決済を保証する機関です。厳格なリスク管理、証拠金制度、デフォルト管理により市場の安定性を維持します。商品取引では価格変動リスクの集中管理で重要な役割を担います。
中央清算機関(CCP: Central Counterparty)は、金融取引において売り手と買い手の間に立ち、すべての取引の相手方となることで、取引相手リスクを一元的に管理し、金融市場の安定性を支える最重要インフラです。取引約定後、CCPは売り手に対しては買い手となり、買い手に対しては売り手となる「ノベーション」により、市場参加者は個別の相手方リスクから解放され、CCPの信用力のみを考慮すれば良くなります。2008年の金融危機において、CCPを通じた取引が安定的に決済された一方、相対取引市場で大混乱が生じたことから、G20ピッツバーグサミットで標準化されたOTCデリバティブの清算集中が合意され、CCPの役割は飛躍的に拡大しました。
CCPの中核機能は多岐にわたります。リスク管理機能として、当初証拠金と変動証拠金の徴収、ポジション制限、リアルタイムリスクモニタリングを実施します。デフォルト管理では、参加者破綻時の迅速なポジション処理と損失分担メカニズムを運営します。決済保証により、参加者破綻時でも他の参加者への支払いを確実に実行します。ネッティングサービスにより、多角的相殺で決済額を大幅に削減します。これらの機能により、システミックリスクの抑制と市場効率の向上を実現しています。
商品市場におけるCCPの役割は特に重要です。商品価格の高いボラティリティに対応した動的な証拠金管理を実施します。現物受渡しの保証により、品質- 数量- 受渡場所の確実性を担保します。倉庫業者や検査機関との連携により、商品の物理的な流通を管理します。国際商品取引では、異なる時間帯- 通貨での清算を効率的に処理します。天候デリバティブなど特殊な商品にも対応したリスク管理を提供します。
財務資源とデフォルトウォーターフォールは、CCPの健全性の要です。多層的な財務資源により、極端な市場ストレスにも耐えられる構造を持ちます。参加者の証拠金、デフォルトファンド、CCPの自己資本が段階的に損失を吸収します。ストレステストにより、最悪シナリオでの充分性を定期的に検証します。国際基準(CPMI-IOSCO原則)に基づく厳格な管理が行われています。透明性の高い情報開示により、市場の信頼を維持しています。
主要なCCPとその特徴として、LCH(ロンドン)は金利スワップ清算で世界最大のシェアを持ち、SwapClearサービスで日次10兆ドル超を処理します。CME Clearing(シカゴ)は先物- オプションの老舗で、農産物からエネルギーまで幅広く対応します。ICE Clear(複数拠点)はエネルギーとクレジットデリバティブに強みを持ちます。日本のJSCCは、国債から商品まで幅広い商品を清算します。これらのCCPは相互に連携し、グローバルな清算ネットワークを形成しています。
規制と監督体制は極めて厳格です。各国当局による直接監督と、国際的な協調監督が実施されます。定期的なストレステストと、結果の当局報告が義務付けられます。リカバリー- 破綻処理計画の策定により、極限状況への備えがなされます。サイバーセキュリティ対策も重要な監督事項となっています。参加者デフォルト演習により、危機対応能力を定期的に検証します。
今後の課題と展望として、クロスボーダー監督の強化により、国際的な規制の整合性向上が図られています。気候変動リスクなど、新たなリスク要因への対応が求められています。暗号資産やトークン化証券など、新たな資産クラスへの対応も進められています。CCPの相互運用性向上により、グローバルな市場効率の改善が期待されており、金融市場の要として進化を続けています。
グロス決済
グロス決済は、取引を個別に一件ずつ総額で決済する方式で、ネッティングを行わない決済方法です。各取引の決済リスクを完全に排除できる利点がありますが、必要資金量が大きくなります。即時グロス決済(RTGS)として大口資金決済に広く採用されています。
クローズアウトネッティング
クローズアウトネッティングは、取引相手の破綻時に全ての未決済取引を一括して清算し、単一の債権債務に置き換える仕組みです。エクスポージャーを大幅に削減し、破綻処理を迅速化します。ISDAマスター契約等で標準化され、市場の安定性を支えています。
取引決済(受渡し)
取引決済は、約定した取引を最終的に完了させる重要なプロセスです。買い手が代金を支払い、売り手が有価証券や商品を引き渡すことで契約義務を履行します。決済の確実性とリスク管理は、金融市場の安定性を支える基盤となります。
ネット決済
ネット決済は、複数の取引から生じる債権債務を相殺し、その差額のみを決済する効率的な方式です。決済に必要な資金や証券の量を大幅に削減し、決済リスクも低減します。商品取引では、日中の取引を集約して一括決済することで、業務効率を向上させます。
DVP決済
DVP決済(Delivery Versus Payment)は、証券の引渡しと資金の支払いを同時に行う決済方式です。一方の履行なしに他方が実行されないため、決済リスクを完全に排除できます。商品取引では現物受渡しとその対価の同時履行により、取引の安全性を確保します。
多角的ネッティング
多角的ネッティングは、3者以上の参加者間で債権債務を相殺し、決済額を圧縮する仕組みです。中央清算機関が中心となって実施し、決済リスクとシステミックリスクを大幅に削減します。商品取引では、市場全体の効率性と安定性向上に重要な役割を果たします。
LCH.Clearnet
LCH.Clearnetは、欧州最大級の多市場対応清算機関で、金利スワップ、レポ、現物株式、商品デリバティブ等を扱います。ロンドンのLCHとパリのClearnet統合により誕生し、グローバルな清算サービスを提供。商品取引では特にエネルギー・金属市場で重要な役割を果たしています。
T+決済
T+決済は、約定日(T)から決済日までの標準的な期間を示す決済サイクルです。T+1は翌営業日、T+2は2営業日後の決済を意味します。商品取引では商品や市場により異なる決済期間が設定され、リスク管理と資金効率のバランスを考慮して決定されます。