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化石燃料の一つで、古代の植物が地中で炭化した固体燃料。炭素含有量により無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭に分類される。
石炭(Coal)は、数億年前の植物が地中で高温と高圧を受けて炭化した固体の化石燃料です。世界のエネルギー供給の約27%を占め、特に発電用燃料として重要な役割を果たしています。石炭は炭化度(炭素含有量)により分類され、それぞれ異なる特性と用途を持っています。
無煙炭(Anthracite): 炭素含有量86-98%で、発熱量が最も高い(7,000-8,000 kcal/kg)石炭です。主に製鉄、家庭用燃料として使用され、燃焼時の煙が少なく、高熱量を発します。
瀝青炭(Bituminous Coal): 炭素含有量45-86%で、発熱量は中程度(5,500-7,000 kcal/kg)です。発電用燃料として最も広く使用され、コークス製造にも適しています。
亜瀝青炭(Sub-bituminous Coal): 炭素含有量35-45%で、発熱量は比較的低く(4,500-5,500 kcal/kg)、水分含有量が高い特徴があります。主に発電用燃料として使用されます。
褐炭(Lignite): 炭素含有量25-35%で、最も低品位の石炭です。発熱量は低く(2,500-4,500 kcal/kg)、水分含有量が高いため、発電所の近くで使用されることが多いです。
発電用燃料: 世界の電力供給の約40%を石炭火力発電が担っており、最も重要な用途となっています。製鉄用: 高炉での鉄鉱石の還元に使用され、コークスとして重要な役割を果たしています。工業用: セメント製造、化学工業、製紙業などで熱源として使用されています。家庭用: 一部の地域では暖房や調理用燃料として使用されています。
石炭市場は地域によって大きく異なります。アジア太平洋地域が世界最大の消費地域で、中国とインドが主要な消費国です。価格は需給バランス、輸送コスト、環境規制、代替エネルギーの価格などにより変動します。主要な取引所として、ニューカッスル(オーストラリア)、リチャーズベイ(南アフリカ)、ロッテルダム(欧州)の価格が国際的な基準となっています。
石炭は化石燃料の中でも最もCO2排出量が多く、気候変動対策の観点から規制が強化されています。多くの国で石炭火力発電の段階的廃止が進められており、再生可能エネルギーへの移行が加速しています。一方で、石炭はエネルギー安全保障の観点から、一部の国では重要なエネルギー源として位置づけられています。
短期的には、エネルギー安全保障の観点から石炭需要が維持される見込みです。中長期的には、気候変動対策の強化により、石炭需要は減少傾向が続くと予想されています。特に発電部門では、再生可能エネルギーの導入拡大により、石炭火力発電の割合は低下していく見込みです。
瀝青炭
最も広く利用される石炭で、炭素含有量45-86%、発熱量5,500-7,000kcal/kgの高品質炭です。発電用の一般炭と製鉄用の原料炭の両方に使用され、世界の石炭生産の約半分を占めます。米国アパラチア、中国山西省、オーストラリアのボウエン盆地などが主要産地です。
褐炭
最も炭化度が低い石炭で、炭素含有量は25-35%、水分が30-50%と高く、発熱量は4,000kcal/kg以下です。主にドイツ、中国、インドネシアで産出され、採掘地近くの発電所で使用されます。輸送コストに見合わないため国際取引は限定的ですが、安価な国内電源として重要な役割を果たしています。
ニューカッスル指標
オーストラリアのニューカッスル港から出荷される一般炭の価格指標で、アジア太平洋地域の石炭価格のベンチマークです。発熱量6,000kcal/kgの標準品質炭のFOB価格として、日本、韓国、中国、台湾向けの取引で広く参照されます。2008年には過去最高の192ドル/トンを記録しました。
一般炭
発電用に使用される石炭の総称で、世界の石炭消費の約70%を占める最大用途です。発熱量5,500-6,500kcal/kg、硫黄分1%以下が標準的な品質で、中国、インド、米国が主要消費国です。環境規制により先進国では削減が進む一方、アジア新興国では依然として重要な電源です。
API2(ARA石炭)
欧州のアムステルダム・ロッテルダム・アントワープ(ARA)地域向け一般炭のCIF価格指標です。発熱量6,000kcal/kgの南アフリカ炭を基準とし、欧州の石炭価格のベンチマークとなっています。ロシア産石炭の禁輸後は、南アフリカ、コロンビア、米国炭の重要性が増しています。
亜瀝青炭
褐炭と瀝青炭の中間的な品質を持つ石炭で、炭素含有量35-45%、発熱量4,500-5,500kcal/kgです。インドネシア、中国、米国で大量に産出され、低硫黄で環境負荷が比較的少ないため需要があります。アジア向け輸出炭の主力として、特に日本や韓国の電力会社が安定調達しています。
API4(リチャーズベイ)
南アフリカのリチャーズベイ港から出荷される一般炭のFOB価格指標です。発熱量6,000kcal/kgの標準品質炭価格として、欧州とアジア向けの重要な供給源の価格を示します。インド向け輸出の主要指標でもあり、年間約8,000万トンが取引されています。