石炭
化石燃料の一つで、古代の植物が地中で炭化した固体燃料。炭素含有量により無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭に分類される。
一般炭と原料炭の違い、品質規格(発熱量、灰分、硫黄分)、主要産地と消費地を解説。アジア太平洋市場の価格指標、海上輸送市場との関連、環境規制の影響を分析。石炭火力発電の動向、製鉄用原料炭の需給など、用途別の市場動向も詳しく説明します。
石炭
化石燃料の一つで、古代の植物が地中で炭化した固体燃料。炭素含有量により無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭に分類される。
無煙炭
最も炭化度が高い最高級石炭で、炭素含有量86%以上、発熱量7,000kcal/kg以上の高品質炭です。燃焼時の煙が少なく、火力が強いため、製鉄の還元剤や高級燃料として使用されます。中国、ロシア、ベトナムが主要産地ですが、埋蔵量は全石炭の1%未満と希少です。
瀝青炭
最も広く利用される石炭で、炭素含有量45-86%、発熱量5,500-7,000kcal/kgの高品質炭です。発電用の一般炭と製鉄用の原料炭の両方に使用され、世界の石炭生産の約半分を占めます。米国アパラチア、中国山西省、オーストラリアのボウエン盆地などが主要産地です。
亜瀝青炭
褐炭と瀝青炭の中間的な品質を持つ石炭で、炭素含有量35-45%、発熱量4,500-5,500kcal/kgです。インドネシア、中国、米国で大量に産出され、低硫黄で環境負荷が比較的少ないため需要があります。アジア向け輸出炭の主力として、特に日本や韓国の電力会社が安定調達しています。
褐炭
最も炭化度が低い石炭で、炭素含有量は25-35%、水分が30-50%と高く、発熱量は4,000kcal/kg以下です。主にドイツ、中国、インドネシアで産出され、採掘地近くの発電所で使用されます。輸送コストに見合わないため国際取引は限定的ですが、安価な国内電源として重要な役割を果たしています。
一般炭
発電用に使用される石炭の総称で、世界の石炭消費の約70%を占める最大用途です。発熱量5,500-6,500kcal/kg、硫黄分1%以下が標準的な品質で、中国、インド、米国が主要消費国です。環境規制により先進国では削減が進む一方、アジア新興国では依然として重要な電源です。
蒸気用炭
産業用ボイラーや自家発電設備で蒸気生成に使用される石炭の総称です。電力会社向けの一般炭(Thermal Coal)より品質要求が緩く、4,500-5,500kcal/kgの低品位炭も含まれます。セメント、製紙、化学工業などで広く使用され、価格も一般炭より10-20%安い水準で取引されています。
原料炭
製鉄用高炉でコークス製造に使用される特殊な石炭で、粘結性(加熱時に溶融・再固化する性質)が必須です。鉄鋼1トンの生産に約0.7トンが必要で、現代製鉄に不可欠な資源です。オーストラリア、カナダ、米国が主要輸出国で、一般炭の2-3倍の価格で取引される高付加価値商品です。
ニューカッスル指標
オーストラリアのニューカッスル港から出荷される一般炭の価格指標で、アジア太平洋地域の石炭価格のベンチマークです。発熱量6,000kcal/kgの標準品質炭のFOB価格として、日本、韓国、中国、台湾向けの取引で広く参照されます。2008年には過去最高の192ドル/トンを記録しました。
API2(ARA石炭)
欧州のアムステルダム・ロッテルダム・アントワープ(ARA)地域向け一般炭のCIF価格指標です。発熱量6,000kcal/kgの南アフリカ炭を基準とし、欧州の石炭価格のベンチマークとなっています。ロシア産石炭の禁輸後は、南アフリカ、コロンビア、米国炭の重要性が増しています。
API4(リチャーズベイ)
南アフリカのリチャーズベイ港から出荷される一般炭のFOB価格指標です。発熱量6,000kcal/kgの標準品質炭価格として、欧州とアジア向けの重要な供給源の価格を示します。インド向け輸出の主要指標でもあり、年間約8,000万トンが取引されています。