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褐炭と瀝青炭の中間的な品質を持つ石炭で、炭素含有量35-45%、発熱量4,500-5,500kcal/kgです。インドネシア、中国、米国で大量に産出され、低硫黄で環境負荷が比較的少ないため需要があります。アジア向け輸出炭の主力として、特に日本や韓国の電力会社が安定調達しています。
亜瀝青炭(Sub-bituminous Coal)は、褐炭より炭化度が進み、瀝青炭には至らない中間的な品質の石炭です。地質学的には、褐炭がさらに数千万年の地圧と地熱を受けて変質したもので、黒褐色から黒色の外観を持ちます。英語の「Sub」は「準」や「亜」を意味し、瀝青炭に準ずる品質という意味が込められています。
亜瀝青炭が重要な理由は、世界の石炭貿易において主要な位置を占めているからです。特にインドネシア産の亜瀝青炭は、アジア太平洋地域の火力発電所で広く使用されており、日本の一般炭輸入量の約30%を占めています。褐炭と違って国際取引が可能で、瀝青炭より安価なため、コストと品質のバランスが取れた燃料として評価されています。
瀝青炭との違いは、揮発分が多く、固定炭素が少ないことです。このため発熱量はやや劣りますが、着火性が良く、燃焼が安定するという利点があります。また、多くの亜瀝青炭は硫黄分が0.5%以下と低く、環境規制が厳しい国でも使いやすい特徴があります。
亜瀝青炭の物理的- 化学的特性は、その中間的な炭化度を反映しています。炭素含有量は35-45%、水分は10-30%で、褐炭より大幅に品質が向上しています。発熱量は4,500-5,500kcal/kg(総発熱量ベース)で、多くの発電所で効率的に燃焼させることができます。
経済的な特徴として、亜瀝青炭は「輸出可能な最低品質炭」としての地位を確立しています。インドネシアやコロンビアの亜瀝青炭は、FOB価格で瀝青炭より20-30%安く、電力会社にとってコスト削減の重要な選択肢となっています。ただし、発熱量が低い分、同じエネルギーを得るために多くの量が必要で、輸送コストや灰処理コストは増加します。
取り扱い上の特徴も重要です。亜瀝青炭は褐炭ほどではないものの、自然発火の危険性があります。特に微粉炭は酸化しやすく、貯炭場では定期的な温度監視が必要です。また、水分が多いため、冬季には凍結の問題も発生します。これらの特性を理解した上で、適切な管理が求められます。
現在、世界の亜瀝青炭生産量は年間約15億トンで、その約3分の1が国際取引されています。最大の生産- 輸出国はインドネシアで、2023年の輸出量は約4億トンに達しました。次いで、コロンビア、ロシア、南アフリカが主要輸出国となっています。
インドネシアの亜瀝青炭は、カリマンタン島とスマトラ島で生産されています。代表的な銘柄として、発熱量5,000kcal/kgのMelawan炭、4,200kcal/kgのEnvirocoal炭などがあります。これらは低硫黄(0.1-0.5%)が特徴で、日本、中国、インド、韓国などに輸出されています。インドネシア政府は国内供給義務(DMO)政策により、生産量の25%を国内向けに確保していますが、残りは輸出可能です。
日本では、亜瀝青炭は主に電力会社が使用しています。瀝青炭とブレンドすることで、コストを抑えながら安定した燃焼を実現しています。典型的なブレンド比率は、瀝青炭60-70%、亜瀝青炭30-40%です。九州電力の苓北発電所、東北電力の原町発電所などで、インドネシア炭が使用されています。
亜瀝青炭は、主に中生代から新生代(約2億5000万年前から2300万年前)の地層に見られます。褐炭がさらに深く埋没し、より高い圧力と温度(50-100度)を受けることで形成されました。この過程で水分が減少し、炭素含有量が増加して、より高品質な石炭へと変化しています。
主要な産出地域は、環太平洋火山帯周辺に集中しています。インドネシアのカリマンタン島には、世界最大級の亜瀝青炭層があり、層厚10-50メートルの炭層が広範囲に分布しています。コロンビアのセサール県、ラ- グアヒーラ県も重要な産地で、セレホン炭鉱は年間3,000万トン以上を生産する南米最大の炭鉱です。
米国西部のパウダーリバー盆地も、亜瀝青炭の一大産地です。ワイオミング州とモンタナ州にまたがるこの地域では、層厚30メートル以上の巨大な炭層が露天掘りで採掘されています。低硫黄のPRB(Powder River Basin)炭として知られ、米国内の火力発電所で広く使用されています。
亜瀝青炭の燃焼特性は、ボイラー設計に大きく影響します。揮発分が35-45%と高いため、燃焼室を大きく設計する必要があります。また、灰の軟化温度が低い(1,100-1,200度)ものが多く、スラッギング(灰の付着)やファウリング(伝熱面の汚れ)が発生しやすいという問題があります。
輸送と貯蔵でも注意が必要です。水分が15-30%あるため、船倉やサイロでの自然発火リスクがあります。国際海事機関(IMO)の規則により、水分が多い石炭は「液状化貨物」として扱われ、特別な積載方法が義務付けられています。また、長期貯蔵すると風化により発熱量が低下するため、3か月以内の消費が推奨されています。
ブレンド技術の重要性も高まっています。亜瀝青炭単独では、ボイラー効率が低下したり、環境装置に負荷がかかったりすることがあります。このため、高品質炭とのブレンドにより、最適な燃焼条件を作り出す技術が発展しています。日本の電力会社は、この分野で世界最高水準の技術を持っています。
亜瀝青炭は、瀝青炭に比べて単位エネルギーあたりのCO2排出量が5-10%多くなります。しかし、硫黄分が低いため、SOx排出は少なく、この点では環境面でのメリットがあります。また、灰中の重金属含有量も比較的少ないものが多く、灰の有効利用がしやすいという特徴もあります。
各国の環境規制への対応も進んでいます。日本では、高効率の超々臨界圧(USC)ボイラーで亜瀝青炭を燃焼させることで、CO2排出を最小限に抑えています。中国やインドでも、新設火力発電所には高効率技術の導入が義務付けられており、亜瀝青炭の効率的利用が進んでいます。
瀝青炭
最も広く利用される石炭で、炭素含有量45-86%、発熱量5,500-7,000kcal/kgの高品質炭です。発電用の一般炭と製鉄用の原料炭の両方に使用され、世界の石炭生産の約半分を占めます。米国アパラチア、中国山西省、オーストラリアのボウエン盆地などが主要産地です。
褐炭
最も炭化度が低い石炭で、炭素含有量は25-35%、水分が30-50%と高く、発熱量は4,000kcal/kg以下です。主にドイツ、中国、インドネシアで産出され、採掘地近くの発電所で使用されます。輸送コストに見合わないため国際取引は限定的ですが、安価な国内電源として重要な役割を果たしています。
ニューカッスル指標
オーストラリアのニューカッスル港から出荷される一般炭の価格指標で、アジア太平洋地域の石炭価格のベンチマークです。発熱量6,000kcal/kgの標準品質炭のFOB価格として、日本、韓国、中国、台湾向けの取引で広く参照されます。2008年には過去最高の192ドル/トンを記録しました。
一般炭
発電用に使用される石炭の総称で、世界の石炭消費の約70%を占める最大用途です。発熱量5,500-6,500kcal/kg、硫黄分1%以下が標準的な品質で、中国、インド、米国が主要消費国です。環境規制により先進国では削減が進む一方、アジア新興国では依然として重要な電源です。
API2(ARA石炭)
欧州のアムステルダム・ロッテルダム・アントワープ(ARA)地域向け一般炭のCIF価格指標です。発熱量6,000kcal/kgの南アフリカ炭を基準とし、欧州の石炭価格のベンチマークとなっています。ロシア産石炭の禁輸後は、南アフリカ、コロンビア、米国炭の重要性が増しています。
API4(リチャーズベイ)
南アフリカのリチャーズベイ港から出荷される一般炭のFOB価格指標です。発熱量6,000kcal/kgの標準品質炭価格として、欧州とアジア向けの重要な供給源の価格を示します。インド向け輸出の主要指標でもあり、年間約8,000万トンが取引されています。