D/R (Dock Receipt)

基本概念

Dock Receipt（ドック受取証、D/R）は、港湾ターミナルオペレーターやCFS（Container Freight Station）運営者が、輸出貨物の受領を証明する書類です。フォワーダーや輸出者から貨物を受け取った時点で発行され、船会社がB/L（船荷証券）を発行するまでの間の、貨物の受領証明として機能します。貨物の物理的な移動と書類上の責任移転を結びつける重要な書類です。

発行のタイミングと流れ

輸出者またはフォワーダーが貨物をコンテナヤード（CY）やCFSに搬入すると、ターミナルオペレーターは貨物の外観検査を行い、D/Rを発行します。このD/Rには、貨物の状態、数量、荷印などが記録されます。船会社は、D/Rを確認してからB/Lを発行するため、D/Rの記載内容がB/Lの基礎となります。

記載事項と重要性

貨物情報：品名、数量、重量、容積、荷印（Shipping Marks）を正確に記載します。

貨物の状態：外装の損傷、濡れ、へこみなどの異常があれば、詳細に記録されます（Remarked D/R）。

受取日時：CY/CFS搬入締切（Cut-off Time）の遵守を証明する重要な記録となります。

責任の所在：D/R発行により、貨物の保管責任がターミナルオペレーターに移転します。

クリーンD/Rの重要性

「Clean D/R」（無故障のD/R）は、貨物が良好な状態で受領されたことを示し、後にClean B/Lの発行につながります。L/C取引では、Clean B/Lが要求されるため、D/R段階での貨物状態の確認が極めて重要です。Remarked D/Rが発行されると、B/LもFoul B/Lとなり、L/C買取が拒否される可能性があります。

FCLとLCL貨物での違い

FCL（Full Container Load）：コンテナ単位でD/Rが発行され、シール番号とコンテナ番号が記録されます。

LCL（Less than Container Load）：個々の貨物ごとにD/Rが発行され、CFSでの混載作業の基礎資料となります。

複数のLCL貨物のD/Rを統合して、一つのコンテナとして船積みする際の管理書類としても機能します。

トラブルと対策

D/R発行後の貨物損傷や紛失は、ターミナルオペレーターの責任となりますが、責任限度額が設定されている場合が多いです。高価値貨物では、追加保険の手配が必要です。また、D/Rの記載ミスはB/Lの誤記につながるため、発行時の確認が重要です。特に、危険品や温度管理品では、特別な取扱い指示の記載漏れが事故につながる可能性があります。

電子化の進展

多くの主要港では、Electronic Dock Receipt（eDR）システムが導入されています。貨物情報の事前登録、バーコードやRFIDによる自動照合、リアルタイムの貨物追跡が可能となり、ペーパーレス化と処理時間の短縮を実現しています。また、

まとめ

Dock Receiptは、輸出貨物の港湾搬入から船積みまでの重要な中継点を記録する書類です。貨物の状態確認と責任移転の証拠として、貿易取引の信頼性を支えています。電子化により効率性は向上していますが、貨物の物理的な確認という基本的な機能の重要性は変わりません。適切なD/R管理は、円滑な輸出手続きの前提条件となります。