KYC (Know Your Customer)

概要

Know Your Customer（KYC、顧客確認）は、金融機関が顧客の身元確認と取引目的を把握するための手続きです。マネーロンダリング防止、テロ資金供与対策、金融犯罪防止の観点から、世界的に義務化されています。顧客デューデリジェンスの中核を成す重要なプロセスです。

主な特徴

KYCは、本人確認、実質的支配者の確認、取引目的の確認、職業- 事業内容の確認などを含みます。リスクベースアプローチにより、顧客のリスクレベルに応じた確認措置を実施します。継続的な顧客管理により、取引パターンの変化を監視します。PEPsや制裁対象者のスクリーニングも重要な要素です。

実務での活用

口座開設時に、本人確認書類と補完書類により身元を確認します。法人顧客では、実質的支配者を25%基準で特定します。定期的な顧客情報の更新により、最新性を維持します。取引モニタリングシステムにより、異常な取引パターンを検知します。

メリット- 効果

金融犯罪の防止により、金融システムの健全性が保たれます。規制遵守により、当局からの処分リスクを回避できます。顧客理解の深化により、適切な金融サービスの提供が可能になります。レピュテーションリスクの軽減により、企業価値が保護されます。

注意点- リスク

過度なKYC要件により、金融包摂が阻害される可能性があります。顧客情報の管理不備により、個人情報漏洩リスクが生じます。国際的な規制の相違により、クロスボーダー取引が複雑化します。デジタル化への対応が遅れると、競争力が低下する恐れがあります。

関連用語との違い

「AML」はマネロン防止の総合的な枠組み、「KYC」は顧客確認に特化しています。「CDD」は顧客デューデリジェンス全般、「KYC」は身元確認が中心です。「KYB」は法人確認、「KYC」は個人- 法人両方を含みます。

実務ポイント- 事例

大手銀行では、KYC業務に数百人規模の専門部署を設置しています。eKYCの導入により、オンラインでの本人確認が可能になっています。規制当局からのKYC不備による制裁金は、年間数十億円に達する場合があります。