Letter of Indemnity (LOI)

基本概念

Letter of Indemnity（保証状、LOI）は、一方の当事者が他方に対して、特定の行為から生じる可能性のある損失や責任を補償することを約束する書類です。海運業界では、B/L原本の提示なしでの貨物引渡し、Clean B/Lの発行依頼、書類の不備や遅延の補完など、通常の手続きから逸脱する場合に使用されます。法的には、損害賠償の予約として機能します。

主な使用場面

B/L原本なしでの貨物引渡し：B/Lが未着でも貨物が到着した場合、LOIと銀行保証により貨物の引渡しを受けます。

Clean B/Lの発行要請：貨物に軽微な問題がある場合、荷主がLOIを差し入れてClean B/Lの発行を求めます。

書類の訂正：B/L発行後の訂正において、訂正により生じる損害を補償するLOIを提出します。

スイッチB/L：中継地で B/Lを差し替える際の、二重請求リスクに対する保証として使用されます。

法的効力と限界

LOIの法的効力は、準拠法と具体的な状況により大きく異なります。多くの法域では、違法行為を助長するLOI（例：故意の虚偽記載を求めるLOI）は無効とされます。また、第三者の善意取得者に対しては、LOIの効力が及ばない場合があります。このため、LOIは完全なリスク回避手段ではなく、限定的な保護しか提供しません。

銀行保証との組み合わせ

商業的なLOIだけでは信用力が不足する場合、銀行保証（Bank Guarantee）を併用します。銀行は、LOI発行者の信用力を審査し、一定の限度額と期間で保証を提供します。これにより、船会社やターミナルオペレーターは、より安心してリスクを取ることができます。ただし、銀行保証にも免責条項があり、完全な保護ではありません。

P&I保険との関係

船主責任相互保険（P&I保険）では、LOIに基づく貨物引渡しから生じた損害は、原則として保険対象外とされています。これは、適切な書類なしでの貨物引渡しが、運送契約の重大な違反と見なされるためです。ただし、一定の条件下では、P&Iクラブが承認したLOI様式を使用することで、限定的な保護を受けられる場合があります。

実務上のリスク

LOIの濫用は、国際貿易の信頼性を損なう深刻な問題です。詐欺的なLOIによる貨物の不正取得、二重売買、マネーロンダリングなどのリスクがあります。また、LOIに過度に依存すると、正規の書類手続きが軽視され、コンプライアンス上の問題が生じる可能性があります。

デジタル化による代替手段

電子B/Lの普及により、書類の遅延問題が解消されつつあり、LOIの必要性が減少しています。また、スマートコントラクトにより、条件付き貨物引渡しの自動化も実現されつつあります。

まとめ

Letter of Indemnityは、国際貿易の柔軟性を提供する実務的なツールですが、法的リスクと限界を十分に理解した上で使用する必要があります。正規の手続きの代替ではなく、やむを得ない場合の例外的措置として位置づけるべきです。