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ライ麦は寒冷地で栽培される穀物で、黒パンやウイスキーの原料として使用されます。年間生産量は約1,200万トンで、EU、ロシア、ベラルーシが主要生産国です。耐寒性が高く、痩せた土地でも栽培可能です。
ライ麦(Rye)は、最も耐寒性の高い穀物で、年間生産量は約1,200万トンです。北欧、東欧、ロシアで伝統的に栽培され、黒パン(ライブレッド)の主原料として食文化に深く根付いています。また、ウイスキーやウォッカなどの蒸留酒の原料としても重要です。小麦が育たない寒冷地や痩せた土地でも栽培可能な、重要な食料安全保障作物です。
主要生産国はEU(約750万トン、特にドイツ200万トン、ポーランド350万トン)、ロシア(約200万トン)、ベラルーシ(約150万トン)、ウクライナ(約40万トン)です。生産は欧州に集中し、世界生産の80%以上を占めます。単収は2-4トン/haで、他の穀物より低いですが、限界地での栽培が可能です。
品種は、冬ライ麦(全体の90%)と春ライ麦に分類されます。冬ライ麦は秋に播種し、雪の下で越冬し、初夏に収穫されます。ハイブリッド品種の開発により、単収は過去30年で50%向上しました。エルゴット(麦角病)への感受性が高く、適切な防除が必要です。
パン製造では、ライ麦粉のグルテン形成能力が小麦より弱いため、サワードウ(酸種)発酵が必要です。これにより独特の酸味と香りが生まれ、日持ちも向上します。ドイツのプンパーニッケル、ロシアのボロディンスキー、北欧のクリスプブレッドなど、各地に伝統的なライ麦パンがあります。栄養価は高く、食物繊維、ビタミンB群、ミネラルが豊富です。
蒸留酒生産では、アメリカンライウイスキー(原料の51%以上がライ麦)、カナダウイスキー、一部のウォッカに使用されます。ライ麦特有のスパイシーな風味が特徴で、クラフト蒸留所での使用が増加しています。年間約50万トンが蒸留用に使用されています。
飼料用途もあり、特に豚と家禽の飼料に配合されます。タンパク質含有量は10-12%で、リジン含有量が比較的高いです。ただし、抗栄養因子(ペントサン)を含むため、配合率は制限されます。緑肥作物としても優れ、深根性で土壌改良効果があります。
国際取引は限定的で、年間約50万トンが貿易されます。主に欧州域内での取引が中心で、ドイツ、オランダが輸入国、ポーランド、デンマークが輸出国です。価格は小麦価格の70-80%で推移し、地域的な需給で決定されます。気候変動により小麦栽培が困難になる地域では、ライ麦への転換が検討されています。