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産業用ボイラーや自家発電設備で蒸気生成に使用される石炭の総称です。電力会社向けの一般炭(Thermal Coal)より品質要求が緩く、4,500-5,500kcal/kgの低品位炭も含まれます。セメント、製紙、化学工業などで広く使用され、価格も一般炭より10-20%安い水準で取引されています。
Steam Coal(蒸気用炭)は、産業用ボイラーで蒸気を生成するために使用される石炭の総称です。電力会社が使用する一般炭(Thermal Coal)と似ていますが、より幅広い品質の石炭を含み、主に製造業の熱源として使用される点が異なります。英語の「Steam」は蒸気を意味し、産業革命期から使われている歴史ある用語です。
Steam Coalが必要な理由は、多くの製造業で蒸気が不可欠だからです。製紙工場では紙の乾燥に、化学工場では反応熱源として、食品工場では殺菌- 調理用に大量の蒸気を使用します。これらの用途では、発電所ほど高品質な石炭は必要なく、コストを重視した燃料選択が行われています。
Thermal Coalとの違いは、品質許容範囲の広さです。Steam Coalは発熱量4,500-5,500kcal/kg程度でも使用可能で、灰分や硫黄分の許容値も高めです。これは、産業用ボイラーが電力用ボイラーより小規模で、運転条件の調整が容易なためです。
Steam Coalの品質特性は用途により幅があります。セメント工場では、灰分が多くても問題ないため、発熱量4,000kcal/kg程度の低品位炭も使用されます。一方、食品工場では、臭気や有害物質の問題から、硫黄分の少ない高品質炭が求められます。このような需要の多様性が、Steam Coal市場の特徴となっています。
経済的には、Steam Coalは「産業用エネルギーの最安値オプション」として位置づけられています。天然ガスや重油と比較して、単位熱量あたりの価格が30-50%安く、エネルギーコストの削減に貢献しています。ただし、ボイラー設備や環境対策装置への初期投資が必要なため、一定規模以上の需要がないと採算が合いません。
取引の特徴として、地域性が強いことが挙げられます。産業用需要は電力用ほど大規模ではないため、輸送コストの影響を受けやすく、産炭地に近い工場での利用が中心です。中国、インド、東南アジアなど、石炭産出国の製造業で特に広く使用されています。
現在、世界のSteam Coal消費量は年間約10億トンと推定されています。最大の消費国は中国で、セメント、鉄鋼、化学工業などで大量に使用しています。インドも急速に消費が増えており、特に中小規模の製造業でSteam Coalへの依存度が高くなっています。
日本では、Steam Coalの使用は限定的ですが、セメント業界では重要な燃料となっています。太平洋セメント、住友大阪セメントなどは、年間数百万トンの石炭を消費しており、その多くがSteam Coal品質です。また、製紙業界でも、自家発電用ボイラーでSteam Coalを使用している工場があります。
価格は一般的にThermal Coalより10-20%安く、発熱量5,000kcal/kgのSteam Coalで60-80ドル/トン程度です。ただし、小口取引が多いため、価格の透明性は低く、相対交渉で決まることが一般的です。
瀝青炭
最も広く利用される石炭で、炭素含有量45-86%、発熱量5,500-7,000kcal/kgの高品質炭です。発電用の一般炭と製鉄用の原料炭の両方に使用され、世界の石炭生産の約半分を占めます。米国アパラチア、中国山西省、オーストラリアのボウエン盆地などが主要産地です。
褐炭
最も炭化度が低い石炭で、炭素含有量は25-35%、水分が30-50%と高く、発熱量は4,000kcal/kg以下です。主にドイツ、中国、インドネシアで産出され、採掘地近くの発電所で使用されます。輸送コストに見合わないため国際取引は限定的ですが、安価な国内電源として重要な役割を果たしています。
ニューカッスル指標
オーストラリアのニューカッスル港から出荷される一般炭の価格指標で、アジア太平洋地域の石炭価格のベンチマークです。発熱量6,000kcal/kgの標準品質炭のFOB価格として、日本、韓国、中国、台湾向けの取引で広く参照されます。2008年には過去最高の192ドル/トンを記録しました。
一般炭
発電用に使用される石炭の総称で、世界の石炭消費の約70%を占める最大用途です。発熱量5,500-6,500kcal/kg、硫黄分1%以下が標準的な品質で、中国、インド、米国が主要消費国です。環境規制により先進国では削減が進む一方、アジア新興国では依然として重要な電源です。
API2(ARA石炭)
欧州のアムステルダム・ロッテルダム・アントワープ(ARA)地域向け一般炭のCIF価格指標です。発熱量6,000kcal/kgの南アフリカ炭を基準とし、欧州の石炭価格のベンチマークとなっています。ロシア産石炭の禁輸後は、南アフリカ、コロンビア、米国炭の重要性が増しています。
亜瀝青炭
褐炭と瀝青炭の中間的な品質を持つ石炭で、炭素含有量35-45%、発熱量4,500-5,500kcal/kgです。インドネシア、中国、米国で大量に産出され、低硫黄で環境負荷が比較的少ないため需要があります。アジア向け輸出炭の主力として、特に日本や韓国の電力会社が安定調達しています。
API4(リチャーズベイ)
南アフリカのリチャーズベイ港から出荷される一般炭のFOB価格指標です。発熱量6,000kcal/kgの標準品質炭価格として、欧州とアジア向けの重要な供給源の価格を示します。インド向け輸出の主要指標でもあり、年間約8,000万トンが取引されています。