天然ガス
メタンを主成分とする気体の化石燃料。クリーンな燃焼特性を持ち、発電、暖房、工業用原料として幅広く利用される。
天然ガスの生産、輸送(パイプライン、LNG)、消費の全体像を解説。ヘンリーハブ、NBP、JKMなど主要価格指標の特徴と相互関係を分析。LNG取引の特殊性、長期契約とスポット取引、仕向地条項など、ガス市場特有の取引慣行を詳しく説明します。
天然ガス
メタンを主成分とする気体の化石燃料。クリーンな燃焼特性を持ち、発電、暖房、工業用原料として幅広く利用される。
乾性ガス
天然ガスの中でもメタンが90%以上を占め、液体になりやすい成分がほとんど含まれていないガスのことです。そのままパイプラインで輸送でき、都市ガスや発電の燃料として直接使えるため、最も扱いやすい天然ガスといえます。処理コストが低く経済性に優れていることから、世界中で広く利用されています。
湿性ガス
天然ガスの中でもプロパンやブタンなどの液化しやすい成分を豊富に含んでいるガスのことです。これらの成分は冷却や圧縮によって分離され、LPGや石油化学原料として高値で取引されるため、ガス田の収益性を大きく向上させます。近年のシェール革命により、ウェットガスの生産が急増し、世界のエネルギー市場に大きな影響を与えています。
随伴ガス
原油を採掘する際に一緒に出てくる天然ガスのことで、世界のガス生産量の約20%を占める重要な供給源です。以前は廃棄されることも多かったのですが、環境規制の強化と技術の進歩により、現在では貴重なエネルギー資源として回収・利用されています。中東やアフリカの産油国では、随伴ガスの有効活用が経済発展の鍵となっています。
パイプラインガス
パイプラインを通じて気体のまま輸送される天然ガスで、世界のガス貿易の約7割を占める最も基本的な輸送方法です。ロシアから欧州、カナダから米国など、陸続きの地域では直径1メートル以上の巨大パイプラインが何千キロも延びています。LNGと違って液化設備が不要なため、安定的で低コストな供給が可能です。
LNG(液化天然ガス)
天然ガスをマイナス162度まで冷却して液体にしたもので、体積が600分の1になるため船での大量輸送が可能になります。日本は世界最大のLNG輸入国として、中東やオーストラリアから年間約7000万トンを調達しています。パイプラインがない地域でも天然ガスを利用できる画期的な技術として、世界のエネルギー貿易を大きく変えました。
CNG(圧縮天然ガス)
天然ガスを200気圧程度まで圧縮して、専用容器に充填したものです。液化させずに気体のまま圧縮するため設備が簡単で、バスやトラックの燃料として世界中で使われています。ディーゼル車より排ガスがきれいで、都市部の大気汚染対策として多くの国が導入を進めています。
ヘンリーハブ
アメリカのルイジアナ州にある天然ガスパイプラインの集積地で、北米の天然ガス価格を決める最も重要な指標です。ここで形成される価格はNYMEX先物の基準となり、世界中のLNG取引でも参照されています。9本の州間パイプラインが交差し、日量20億立方フィートのガスが行き交う巨大なハブです。
NBP
英国の天然ガス取引の中心となる仮想取引拠点で、1996年に設立された欧州で最も歴史ある市場の一つです。北海ガス田からの供給とLNG輸入の両方を扱い、英国のガス価格を決定する重要な役割を果たしています。欧州大陸のTTFと並んで、国際的な天然ガス価格の重要な指標として世界中で参照されています。
TTF
オランダにある欧州最大の天然ガス取引拠点で、ヨーロッパ大陸のガス価格を決める重要な指標となっています。物理的な施設ではなく仮想的な取引ポイントですが、ここで決まる価格が欧州全体のガス料金に影響するため、世界のエネルギー市場で注目されています。日本のLNG輸入価格にも間接的な影響を与える重要な市場です。
JKM
日本と韓国向けのLNGスポット価格指標で、アジア太平洋地域の天然ガス価格を代表する重要な指標です。プラッツ社が2009年から公表を開始し、現在では中国やインドも含むアジア全体のLNG取引で広く参照されています。原油価格連動の長期契約が主流だったアジア市場に、需給を反映した価格形成をもたらしました。
シェールガス
シェール層と呼ばれる硬い頁岩層に閉じ込められた天然ガスで、水圧破砕技術により2000年代から商業生産が可能になりました。アメリカでは国内ガス生産の7割以上を占め、ガス価格を大幅に下げることに成功しました。従来は採掘不可能とされた資源が技術革新で利用可能になった代表例です。