Downside Risk

### 概要 下方リスク（Downside Risk）とは、投資、事業、プロジェクトなどの成果が、期待される水準（平均リターン、目標値など）を下回る、あるいは損失が発生する方向へ変動する可能性（リスク）のことを指します。「ダウンサイドリスク」とも呼ばれます。期待を上回る良い結果（アップサイドポテンシャル）とは逆の、ネガティブな結果が生じる可能性に焦点を当てたリスク概念です。 ### 標準偏差との違い 伝統的なリスク指標である標準偏差（ボラティリティ）は、リターンの上方・下方の両方の変動を「ばらつき」として測定します。しかし、多くの投資家や企業にとっては、期待を下回る（損失方向への）変動こそが真のリスクと考えられます。下方リスクは、このような損失方向への変動のみに着目します。 ### 測定指標 下方リスクを定量化するための指標としては、以下のようなものがあります。 - **下方偏差 (Downside Deviation / Semi-Deviation):** 目標リターン等を下回るリターンのばらつき（標準偏差）のみを計算。ソルティノレシオで利用。 - **VaR (Value at Risk):** 一定確率で発生しうる最大損失額。 - **Expected Shortfall (ES) / CVaR:** VaRを超える損失が発生した場合の平均損失額。 - **ドローダウン (Drawdown):** 過去最高値からの下落率（特に最大ドローダウン MDD）。 ### 利用場面 - **リスク管理:** ポートフォリオや事業が、どの程度の損失可能性に晒されているかを評価します。 - **投資判断:** 投資家のリスク許容度（特に損失許容度）に応じて、下方リスクが小さい投資対象を選択します。 - **パフォーマンス評価:** ソルティノレシオなどを用いて、下方リスクを考慮した運用効率を評価します。 下方リスクを適切に評価・管理することは、特に損失回避を重視する投資家や、事業継続性を確保したい企業にとって考慮すべき点です。